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第2章
第35話 私も同じ気持ちですから
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ソーニャを連れて無事に村まで辿り着いた。まだ腰が抜けた状態だったので僕らと同じ宿の彼女が借りている部屋へと直行してベッドに下ろした。
「わざわざ部屋まで運んでもらっちゃって。すみません」
「いいよ、気にしないで。流石に腰が抜けたのを魔法じゃ治せないからゆっくり休んでね。ギルドには僕らが報告しておくから」
「す、すみません・・・。お願いします」
僕らはソーニャの部屋から退室し冒険者ギルドへと向かおうとしたところ、宿屋のロビーでアルディンさんとバッタリ出会った。
「ん?お前らいつの間に戻ってたんだ?」
「ついさっきですね。今はソーニャを部屋に寝かせてきたところです」
「もう全員捜索終わったのか!?」
「あ、ということはアルフォンスたちは帰ってきました?」
「あぁ。治療を受け終わって、今はあいつらも部屋で休んでいるはずだ」
無事彼らも村に辿り付いて治療してもらったのか。
「それは良かったです。彼らに詳しい話を聞くのは起きてからにして、僕が彼らから聞いた話とか報告しても良いですか?」
「あぁ。頼むわ」
僕はアルフォンスたちに聞いたファンガスとウォーグの話と、僕自身が遭遇して思った点などを含めて報告した。そして思いの外魔物や魔獣がリリーフ村の森に生息しているのではないかと話をした。
「少なくともアルフォンスたちが最初に遭遇したファンガスが残っているはずです」
「なるほどな。これはアスピラシオに行って援軍を求めるか、俺たちだけでもリリーフ村周辺の森を調査と討伐するかしないと駄目そうだな」
リリーフ村の安全を考えるなら、この村に居る冒険者総出で森の調査と討伐をすることだけど、そうすると行商人の護衛が出来なくなる。逆に商人の護衛を優先すると、もしかしたらリリーフ村に被害が出るかもしれない。
冒険者を分けるならどちらも対処出来そうだけど人手が足らなくなる。だけど僕らがこの村に護衛として残って、アルディンさんたちがアスピラシオに着いてこちらに援軍を送ってくれるのならいけるかもしれない。
一番確実なのは僕が村の護衛、リナが森で魔物の殲滅戦をするというのが一番被害が出ないとは思う。だけど冷たい言い方かもしれないがリナの強さを露見させてまでこの村を守る義理もない。
殲滅戦を行ったらこの村の人たちは喜ぶだろうけど、いずれリナの強さに畏怖されたり要らない敵を作ることになるだろう。リナほどじゃなくても僕くらいの強さでもそうならないとは限らないのだ。
だけど折角知り合った人たちを見殺しにしたいわけでもない。
「まずジュニアスさんや冒険者ギルドと相談しないと駄目ですが、僕らがリリーフ村の護衛として残って、アルディンさんたちがアスピラシオへ付いたら役所へ報告してもらうというのが確実だと思います」
「やっぱりそれしかねーか・・・」
どうやらアルディンさんも同じ方法に至っていたみたいだ。自分の力を過信するわけじゃないけど、正直ファンガスやウォーグ程度なら何も問題はない。リナも居るなら百人力だ。
「ただ僕らの冒険者ギルドのランクでこの方法を取って良いのか分かりませんけどね」
「まぁそこは俺に任せろ。あとでイチャモン付けてきたらお前自らそいつの相手をしてやればいい」
「それってまた僕が恨まれるパターンじゃ無いですか」
「がっはっは! まぁギルドは実力主義だからな。力を見せつけなきゃ分からん馬鹿ばっかりだからそれは諦めろ」
アルディンさんはそう言って僕の肩をバンバンと叩いた。僕が見た目通りの耐久度しか無かったら脱臼くらいはしてる気がする。
「それじゃその辺りの話をエディスと話するか。それと報酬の話もあるしジュニアスも呼んで話を通さねぇとな」
まずジュニアスさんが借りている部屋に行き、アルディンさんが事情を説明した。
「なるほど。マサトさんたちが護衛を抜ける心配をするよりも、リリーフ村を優先した方が良さそうですね」
「そりゃ商人としての立場からかい?」
「それは勿論そうですよ。このまま彼らを連れて行って、もし何かあれば恨まれますからね」
アルディンさんがジュニアスさんをからかうように言ったが、ジュニアスさんはアッサリと認めた。
「それにもしも魔物がリリーフ村へ群れをなしてやって来て、村に大損害を与えたら行商を行う自分たちにとっても損失ですからね」
「まぁそりゃそうか」
商人は理より利を選ぶと言うけど、自分の生活があるんだから自分を優先するのは当然だと思う。
「それでよ、マサトたちを護衛として置いていくとして、こいつらの報酬とかをどうするか決めないといけねぇんだわ」
「あぁ、そちらの問題もありましたね。そうですね。本来は街まで護衛の依頼でしたが、ここまでの護衛の代金を渡すということでどうでしょう?」
「僕としては願っても無いです。ありがとうございます」
ちょっと待っていて下さいとジュニアスさんがそういうとナップザックから財布を取り出し僕とリナに銀貨25枚ずつ渡してくれた。
「あれ? 相場より高くありませんか?」
普通の護衛任務なら1日銀貨5枚程度だ。僕たちが護衛したのは今日を入れても3日だから15枚ずつも出れば十分なはずだった。
「何を言っているんですが。初日に我々の救援をして頂いたのを忘れたのですか?」
「いえ、あの時は契約前ですし色々と武器とか融通してくれたのでそれで帳消しだと思っていました」
「むしろ契約もしていないのに救援して下さったお礼ですよ。本来はもう少し高く見積もっているのですが、マサトさんとの約束通り天引きしましたのでその額になります」
「え? これ天引き後なんですか?」
天引きで宿泊費や携帯食料とか道具とか色々してもらったんだけど、良いのかな。
「良いから気にすんなって。貰える物は黙って貰っておけって」
「アルディン、それをあなたが言うのですか。まぁ、私も同じ気持ちですから受け取って下さい」
二人とも笑顔でそう言ってくれたのでありがたく受け取ることにした。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
僕がお辞儀してお礼を言うと、リナも同じようにお礼を言った。
「わざわざ部屋まで運んでもらっちゃって。すみません」
「いいよ、気にしないで。流石に腰が抜けたのを魔法じゃ治せないからゆっくり休んでね。ギルドには僕らが報告しておくから」
「す、すみません・・・。お願いします」
僕らはソーニャの部屋から退室し冒険者ギルドへと向かおうとしたところ、宿屋のロビーでアルディンさんとバッタリ出会った。
「ん?お前らいつの間に戻ってたんだ?」
「ついさっきですね。今はソーニャを部屋に寝かせてきたところです」
「もう全員捜索終わったのか!?」
「あ、ということはアルフォンスたちは帰ってきました?」
「あぁ。治療を受け終わって、今はあいつらも部屋で休んでいるはずだ」
無事彼らも村に辿り付いて治療してもらったのか。
「それは良かったです。彼らに詳しい話を聞くのは起きてからにして、僕が彼らから聞いた話とか報告しても良いですか?」
「あぁ。頼むわ」
僕はアルフォンスたちに聞いたファンガスとウォーグの話と、僕自身が遭遇して思った点などを含めて報告した。そして思いの外魔物や魔獣がリリーフ村の森に生息しているのではないかと話をした。
「少なくともアルフォンスたちが最初に遭遇したファンガスが残っているはずです」
「なるほどな。これはアスピラシオに行って援軍を求めるか、俺たちだけでもリリーフ村周辺の森を調査と討伐するかしないと駄目そうだな」
リリーフ村の安全を考えるなら、この村に居る冒険者総出で森の調査と討伐をすることだけど、そうすると行商人の護衛が出来なくなる。逆に商人の護衛を優先すると、もしかしたらリリーフ村に被害が出るかもしれない。
冒険者を分けるならどちらも対処出来そうだけど人手が足らなくなる。だけど僕らがこの村に護衛として残って、アルディンさんたちがアスピラシオに着いてこちらに援軍を送ってくれるのならいけるかもしれない。
一番確実なのは僕が村の護衛、リナが森で魔物の殲滅戦をするというのが一番被害が出ないとは思う。だけど冷たい言い方かもしれないがリナの強さを露見させてまでこの村を守る義理もない。
殲滅戦を行ったらこの村の人たちは喜ぶだろうけど、いずれリナの強さに畏怖されたり要らない敵を作ることになるだろう。リナほどじゃなくても僕くらいの強さでもそうならないとは限らないのだ。
だけど折角知り合った人たちを見殺しにしたいわけでもない。
「まずジュニアスさんや冒険者ギルドと相談しないと駄目ですが、僕らがリリーフ村の護衛として残って、アルディンさんたちがアスピラシオへ付いたら役所へ報告してもらうというのが確実だと思います」
「やっぱりそれしかねーか・・・」
どうやらアルディンさんも同じ方法に至っていたみたいだ。自分の力を過信するわけじゃないけど、正直ファンガスやウォーグ程度なら何も問題はない。リナも居るなら百人力だ。
「ただ僕らの冒険者ギルドのランクでこの方法を取って良いのか分かりませんけどね」
「まぁそこは俺に任せろ。あとでイチャモン付けてきたらお前自らそいつの相手をしてやればいい」
「それってまた僕が恨まれるパターンじゃ無いですか」
「がっはっは! まぁギルドは実力主義だからな。力を見せつけなきゃ分からん馬鹿ばっかりだからそれは諦めろ」
アルディンさんはそう言って僕の肩をバンバンと叩いた。僕が見た目通りの耐久度しか無かったら脱臼くらいはしてる気がする。
「それじゃその辺りの話をエディスと話するか。それと報酬の話もあるしジュニアスも呼んで話を通さねぇとな」
まずジュニアスさんが借りている部屋に行き、アルディンさんが事情を説明した。
「なるほど。マサトさんたちが護衛を抜ける心配をするよりも、リリーフ村を優先した方が良さそうですね」
「そりゃ商人としての立場からかい?」
「それは勿論そうですよ。このまま彼らを連れて行って、もし何かあれば恨まれますからね」
アルディンさんがジュニアスさんをからかうように言ったが、ジュニアスさんはアッサリと認めた。
「それにもしも魔物がリリーフ村へ群れをなしてやって来て、村に大損害を与えたら行商を行う自分たちにとっても損失ですからね」
「まぁそりゃそうか」
商人は理より利を選ぶと言うけど、自分の生活があるんだから自分を優先するのは当然だと思う。
「それでよ、マサトたちを護衛として置いていくとして、こいつらの報酬とかをどうするか決めないといけねぇんだわ」
「あぁ、そちらの問題もありましたね。そうですね。本来は街まで護衛の依頼でしたが、ここまでの護衛の代金を渡すということでどうでしょう?」
「僕としては願っても無いです。ありがとうございます」
ちょっと待っていて下さいとジュニアスさんがそういうとナップザックから財布を取り出し僕とリナに銀貨25枚ずつ渡してくれた。
「あれ? 相場より高くありませんか?」
普通の護衛任務なら1日銀貨5枚程度だ。僕たちが護衛したのは今日を入れても3日だから15枚ずつも出れば十分なはずだった。
「何を言っているんですが。初日に我々の救援をして頂いたのを忘れたのですか?」
「いえ、あの時は契約前ですし色々と武器とか融通してくれたのでそれで帳消しだと思っていました」
「むしろ契約もしていないのに救援して下さったお礼ですよ。本来はもう少し高く見積もっているのですが、マサトさんとの約束通り天引きしましたのでその額になります」
「え? これ天引き後なんですか?」
天引きで宿泊費や携帯食料とか道具とか色々してもらったんだけど、良いのかな。
「良いから気にすんなって。貰える物は黙って貰っておけって」
「アルディン、それをあなたが言うのですか。まぁ、私も同じ気持ちですから受け取って下さい」
二人とも笑顔でそう言ってくれたのでありがたく受け取ることにした。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
僕がお辞儀してお礼を言うと、リナも同じようにお礼を言った。
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