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第1章

第12話 どうしてもと言うのであれば

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「では、お兄様。私たちは特典のリストアップを行いますので、こちらでしばしの御休憩、どうぞおくつろぎのほどを。ある程度纏まりましたら、一度ご相談したく存じますが、既に欲しい特典はございますか?」
「うーん、そもそも特典で何が出来るか分からないから、一覧を見てからで良いよ」
「左様で御座いますか。畏まりました、では私たちはこれで失礼致します。リナ、お兄様の介添えをお願いしますね」
「畏まりました」

 ハナとロマーナさん、エメさんが僕にお辞儀をした後に退室し、部屋には僕とリナさんが残った。普段禊ぎの出迎えと見送りだけだから、顔なじみではあってもリナさんと深く話したことは無かったから、何の話をしたら良いのか思いつかない。

「この度は色々と申し訳御座いません」
「はい。謝罪は先程から受け取ってますから、謝るのはこれっきりにして下さいね」

 何となくまだ謝られるかなと思っていたので、これ以上謝罪は要らないと釘を刺しておく。これ以上謝られたりしたら段々リナさんとギスギスしてくる気がするし。

「それで、ハナたちに呼ばれるまでどうしたらいいですかね?」

 この天界で長時間過ごすことは初めてなので何をしたらいいのか分からないし、何をしていいのかも分からなかった。いつもなら天界に戻ったらフロアに行って、列に並んだ後スロットを回して召還もしくは転生だったからなぁ。
 僕があからさまに話を変えているのはリナさんも分かったんだろう、少し微笑んでから応えてくれた。

「そうですね、もしお疲れでしたらベッドで横になってはいかがですか?」

 ここでは僕は魂だけの存在だと以前リナさんに聞いたが、そもそも寝ることとか出来るんだろうか。でも天女さえ休息が必要なのだから、人間の魂だって休息という意味では寝ることは出来るかも知れない。

「いや、特に眠いわけでも疲れているわけでも無いので、何か暇つぶしでも出来ないかなと」

 先ほどロマーナさんとブラックジャックをして時間を潰したことを話した。トランプがあったのだ。他にもカジノに因んだ遊びがあるのかもしれない。

「なるほど、脱衣を賭けてギャンブルを為さっていたと。・・・これは念のために後でハナ様にご報告をせねばなりませんね」

 リナさんの目がスッと細くなる。どうやら僕は気づいたら余計なことまで言っていたようだ。慌てて僕から言い出したことではないこと、ロマーナさんが一度も脱ぐことは無く自分だけがトランクス姿になったことを説明した。

「なるほど、確かにロマーナの腕であれば完勝することも可能でしょうね」
「あ、やっぱりそうだったんだ。自分の見られ損かー」
「男性なのですから、問題はなかったのではないですか?」
「まぁ、自分も負けてもデメリットは無いなーと思ってたんですが、トランクスの隙間から、その、見えちゃったみたいで恥ずかしい目に遭いましたから」
「む?」

 僕が恥ずかしい目に遭ったことを伝えたら、リナさんは唸った後目を閉じ思案し始めた。何かあったんだろうか。

「わ、私はロマーナほど強くありませんが、マサト様がどうしてもと言うのであれば、私は脱衣勝負をするのもやぶさかではありません」

 リナさんは少し思案した後に顔を少し赤らめながらそう言い出した。そんなに見たい物なのかな。でもロマーナさんほど強くないということは・・・ゴクリ。少し想像してみる。お互い勝負が進む度に少しずつ脱衣し、そして・・・呼びに来たハナやロマーナさんが部屋に入ってくることを。
 あぁ、無理だ。怒られはしないかもしれないが、何故か後が怖い。しかもロマーナさんほど強くは無いということは、僕よりは強い可能性も高い。やはりここは勝負を避けるべきだろう。って、あれ?

「リナさんまで僕を様付けで呼ぶんですか?」
「はい、勿論です。マサト様は天界の被害者であり、ハナ様が兄と慕っている方ですので、今後はマサト様とお呼びします。これは他の天女にも徹底されるかと」

 確かに神様《ハナ》が様付けしておいて、その配下がさん付けじゃ示しがつかないか。急に偉くなった感じがするけど、あまり調子に乗らないように僕が気をつけることにしよう。

「そ、それで勝負はどうしますか?」
「大変魅力的な話ですが、勝負の途中でハナたちがやって来そうな気がするので止めておきます」
「そうですか。それもそうですね」

 リナさんが少しシュンと落ち込んだ。是非、今度時間のあるときにでもお願いしてみよう。

「では、他に何かされたいことはありますか?」
「うーん」

 ここのことを知らなすぎて何が出来るのかさっぱり分からない。知っていることと言えばリナさんと禊ぎのベッドルームとカジノフロアとスロットくらいだったからなぁ。他に何があるだろう。今日知ったことと言えば、ハナやロマーナさん、エメさん、死んだ魚の目をした方々と、あとは間取りか。そういえばパソコンとかを作っている開発室があるとか言ってたけど、一度行ってみたいな。丁度時間もあるし。

「リナさん、一度開発室ってところに行ってみたいですが、大丈夫ですかね?」
「開発室ですか?そうですね、恐らく大丈夫かと思いますが、一度ハナ様たちに確認してきます」
「あ、ハナだけじゃないんだ」
「ええ、ロマーナにも確認しないといけません」
「え?ロマーナさんもしかして偉い人?」
「はい、この事務室の責任者です」

 まさかあの人が責任者だったとは。確かにハナが居るときと居ないときのオンオフの切り替えとか凄いなとは思ったけど。あと大きかったし。

「では、確認してきます。直ぐに戻りますが、それまでおくつろぎ下さい」

 リナさんがそう言い残し退室していくと、いよいよすることが無くなったので、とりあえずベッドに腰を掛ける。そういえばこのベッドで他の神様たちが寝たりしたのか。落ち着かないけど、しょうがない。慣れるためにもちょっと横になってみよう。

「うわ、ふかふかだ。さすが神様たちが使うベッドだ。それに何だか良い匂いがする」

 ベッドに横たわっていると、良い匂いがフワッと漂ってきた。流石に誰かの残り香って事はないだろうから、ベッドメイクしたときに香水とかでも振りかけたのかな。目を閉じてうつ伏せになって暫くこの匂いに身を委ねてリラックスすることにした。

「失礼します」

 暫くすると、リナさんがノックをした後部屋に入ってきた。

「あぁ、お帰りなさい」
「おくつろぎ出来たようで何よりです。開発室へ訪問する許可は得てきましたが、どうされますか?」
「あぁ、行きます。行きます」

 ちょっと名残惜しいけど、僕は身体をベッドから起こして立ち上がった。リナさんにこのベッドに使っている香水がとても良い匂いでくつろげたことを伝えた。

「おかしいですね、香水などは使っていなかったはずですが。失礼します」

 そういうとリナさんは、ベッドに近寄り匂いを嗅いだ。何だか自分が寝た後の匂いを嗅がれているようで、興奮す・・・いや照れくさい。

「これはロマーナが使っている香水の匂いですね。どうやらベッドメイクをした後にこっそりここで休憩でもしたのでしょう」

 まさかのロマーナさんの残り香だった。

「そうですか。ロマーナの匂いでくつろげましたか」
「さぁ、開発室行きましょう!いやぁ楽しみだなぁ」

 段々恥ずかしくなったので、早速開発室に行くことにした。
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