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53話

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コイツをどうしてくれようかな、と思いながら歩みを進めていくと、
背後から殺気を感じ、反射的にサイドステップでかわした。

曖昧な反応が二つ・・・?
慌てて殺気の元を確認すると、“実体を伴っていない存在”がいるのが確認できた。
見るからに透けている。
ゴーストか?
人の姿をしている様だが、さっきまではこんな奴ら居なかったよな?
一体何処から・・・?
そんな一瞬の隙をつかれ、
一つの存在は鳥にもう一つの存在はプリムの身体に吸い込まれて消えた。

嫌な予感がしたので、鳥の方はそこ等辺に落ちている石を投げつけ即死させた。
暫く様子を見ていたが、実態を伴っていない何かが再び現れる事は無かった。

なんだったんだあれは・・・?

・・・そういえばプリムにも一匹いったんだよな。

「あああああぁぁぁあぁああぁぁあああああ!!」
プリムの絶叫で慌てて振り返る。

そこには尋常ならざる雰囲気を纏ったプリムがゆらりゆらりと身体を揺らしながら
小声で何か呟いている。

「・こ・し・・・て」

「ん?」

「わ、わたし・・・がしょう・・きを保って
・・イるウチ・・にコロして!」
悲痛な顔で俺に訴えかけてくる。

「そういわれても、な、っと」
プリムのステータスから考えると、
ありえないくらいのスピードと威力を持っているであろう大振りの一撃を軽々回避し、
背後を取った。
おそらく取り憑かれた事でステータスが上がったのだろう。
だがいくらステータスが上がった所でカンストしている俺には問題ない。

すれ違い様に「はヤくコロてクダサイ」なんて涙目で言われたけどさ、
最初から殺すつもりなんてないんだけどなぁ。
ある程度の打算もあるし。

俺はプリムを羽交い絞めにすると「ヒール」を唱えた。

「うぇtrつybんmひん!?」
もはや言葉として意味の無い叫び声を上げながら、滅茶苦茶に暴れ始めた。

やはり俺の読み通りか。
ブリギッドが突然聖古代龍エンシェントホーリードラゴンに覚醒したし、
やっぱりヒールは聖属性で確定だな。
幽霊には聖属性と相場が決まっているしな。
きっと死の淵から蘇生させる呪文でもあったのなら一瞬で治ったのか?
なんて思いながら、
俺は暴れるプリムを絞め殺さない程度に拘束し、ヒールを唱え続けた。

「はぁっ・・・」
妙に色っぽい声を出したかと思うと、
脱力し崩れ落ちそうになったので、
抱きとめ、ゆっくり地面に横たわらせた。

暫く観察していたが、暴れだす気配も、
実体を伴っていない何かが出現する事は無かった。
プリムには悪いが今後の対応に役に立つな、と思った。

「んっ・・・」
あのゴースト達をステータス鑑定でもしておけば、システム解析で
もっと色々捗ったんだろうなー・・・なんて難しい事を考えていたら、
プリムがいつの間にか目を覚ましており、
妙に赤い顔でぽーっと俺の事を見つめていた。

「もう大丈夫か?」

「ふぁ、ふぁい!」

「そうか、なら元気でな」

「えっ!?」

「ん?」

「せ・・わたし捨てられちゃうんですか?」

「捨てるも何も、お互い敵同士だったろう?」

「で、でも!それならなんでわざわざ助けたんですか!?」

「なんとなく?」
目の前で暴れられたらそりゃあ、対処するよなぁ・・・。

「・・・っ!」
なんだか凄くショックを受けているみたいだな。
涙目になっているみたいだし。

あー・・・面倒くさい事になりそうだな。
サクッと殺しちゃえば良かったかなぁ・・・。
でも約束しちまたしなぁ・・・。


「あの、主様に恋人や奥様はいらっしゃるのですか?」

「ああ、いるよ」

「ふふふ・・・そうなんですか」
不気味な笑顔でそう答えた。

「な、なんだ?」

「その人達に、気絶しているせ・・わたしにエッチな事をしたってバラしますね♪」
満面の笑みでサラッと凄い事を言い出すプリム。

「は!?なに言っているんだ!?」

「あ、奥さんがいますよ!」

「!?」
慌てて振り向くが、何処にも見当たらない。
プリムを非難しようと振り向いた瞬間に、
唇にやわらかいものを押し当てられた。
「んっ・・・」
ぎこちない動きで舌までいれてきた。

あまりにも突然の出来事に思考が追いつかない。
考えをまとめる前に、プリムを振り払った方がいいな。

そう思った瞬間にプリムはササッと距離をとった。

「キスしちゃいましたね。これで既成事実も出来ましたね♪」

「こ、こいつ・・・!」

「主殿は私の事は殺さないんですよね♪
わたしを主殿傍に置いて欲しいです!」
滅茶苦茶可愛い笑顔で訴えてきた。

「ぐっ・・・!」
なんて奴だ、俺がはめられた・・だと・・・。

「主殿がはいって言ってくれないと、思わず口が滑ってしまうかもしれません!
どうしましょう!?」
ニコニコしたまま俺に迫ってくるプリム。
ジリジリと後退する俺・・・。


苦虫を一度に100匹位噛み潰した様な顔をしているだろう俺に
取れる選択肢はほぼ無かった・・・。
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