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14話

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「何っ……だよアレは!」

「勇者様、映っているのは紛れもなくシェルアですわ!」


テイナーシュ王国王都にて、その様子を目撃したゼイス達。
そして語られた内容は、自身を地の底へと追いやるものだった。
英雄エルザームを、計画的に不敬罪にし、処刑したこと。
その全てをシェルアは公にしたのだ。


「なっ……。」

「くっ……。ラディナ、顔色が悪いぞ。」

「だって…ガネン……国王陛下が…エルザーム様を……。」

「くそっ、なんということをしてくれたんだ!」

「全くですわ、勇者様。ですが証拠はありませんから、問題ないと思いますわよ。」


ラディナとガネンは驚き、泣きそうになっている中、勇者ゼイスと聖女メーシアは自分の心配をしている。
キユハは驚き固まっている。
そんな3人を置き去りに、ゼイスとメーシアは国王への謁見に急ぎ足で向かう。
謁見の間ではなく、王室へと通される。


「陛下!」

「来たか、勇者ゼイスよ。それに聖女メーシアも。」

「お久しぶりです、陛下。」

「それよりも、シェルアが!」

「分かっている。余も全て聞いていた。不味いことになるぞ……。既に革命軍と名乗る平民達が集いはじめている。さらに、それを秘密裏に後押ししている貴族もいるようだ。」

「つい先程の事ですよ!?もう動き出しているというのですか!?」

「そうだ。エルザームを殺したという事実が、思いのほか影響力があったのだ……。昔から聡明だと言われていたシェルアは、おそらく分かっていて世界中に向け、語ったのだろう。」

「くっ……どうなさるのですか?このままでは、我々の立場は危ういかと……。」

「何を言うか。全く危うくなどならんぞ。余の近衛騎士団や国の兵がいるのだ。革命軍など、蹴散らしてくれよう。」

「ならば安心です。」

「ええ、流石は国王陛下ですわ!」

「そうだろうそうだろう。余に負けなど有り得んのだ。」


その時、王室へと騎士が入ってきた。
大慌てで、入室の許可すら取らずに。


「国王陛下、報告がございます!」

「騒々しいぞ。入室の際は余に告げんか。」

「も、申し訳ございません!」

「よい。今回は許す。」

「はっ。寛大な御心、感謝いたします!」

「それで、報告とやらを言え。」

「はっ!革命軍と名乗る集団が、王城へと向かってきております!その数……5万!」

「なっ……!戦争時の数ほどいるのか…。兵を王城の防壁に集めよ。誰一人として入れるな!」

「はっ!」


騎士は戻っていった。
国王、ゼイス、メーシアは頭を抱える。
しかしそこに、追い打ちをかけるようにある人物が現れた。


「こんにちは、国・王・陛・下?」

「貴様は……!!」

「お久しぶりですわね。あら、へっぽこ勇者ゼイスに、勇者に付きまとう聖女メーシアさんまでいるではありませんか。ごきげんよう?ふふっ。」

「貴っ様ぁぁ!」

「私を侮辱するなど…!」

「こんな場所で戦って大丈夫なのかしら?王城が崩れるわよ。」

「くっ!」

「背後を狙っても無駄ですよ、国王陛下。魔力感知で何をしているのか丸見えですし、私に攻撃は通じませんから。」

「ちっ……!」

「今の私は魔族領『総軍団長』シェルア。国王だからといって、敬意を払う必要も無いわね。さて、今こうなっているのも全て、自分の責任よ?」

「貴様のせいだろう!貴様が、あんな事をしなければ……!!」

「よく言うわね、テイナーシュの国王。私の義父であり師であった英雄エルザームを殺したのは、貴方達でしょうに。」

「殺してなどいない!余に不敬な事をしたからだ!」

「あら、しらばっくれる気?自ら裁判に口を出し、死刑になるよう仕向けたというのに?それも私の目の前で。」

「貴様……これは復讐のつもりか!?」


その問いに、私は首を振って答える。
あの時の事を、忘れるわけがない。
自らを死に追いやった者達でさえ、師匠は傷付けるなと言った。
殺すまでゆく『復讐』はしない。
だがせめて今の地位を降りて貰わなければ気が済まないのだ。


「復讐などしないわよ。師匠はそれを望んでいないのだから。」

「ならば何故…!」

「貴方達が英雄エルザームの死を隠した理由。それは自身の地位を守るためでしょう?でも師匠はおっしゃっていた。例え平民達に革命を手伝ってほしいと頼まれようとも、加担する気はないと。かといって、貴族側につくつもりもないのだと。」

「何を言う!あやつは平民からの成り上がりだぞ!?」

「善人と悪人の区別もつかないなんて、国王失格ね。それは勇者も同じかしら。」

「言わせておけば……!」

「勇者ゼイス。私に剣を向けてなんのつもりかしら?」

「その偉そうな口を塞いでやるよ!」

「無理だと分かっていて?」

「そんなこと、分からないさ!」

「二度も伸されたことを忘れているの?」

「くっ……。」

「つくづくお馬鹿さんね……まぁどうでも良いのだけれど。……テイナーシュ王国国王よ。騎士団や兵士達が全て、自分の味方だと思わない事ね。貴族もだけれど。」

「何だと……?」

「そのうち分かるわ。最後に一つだけ言っておく。国は民あってこそ成り立つもの。お前達王族や貴族は、平民の税で生きていると言っても過言ではない。それを然と覚えておくことね。ではまた、生きていたら会いましょう。」

「待てや!クソ魔法使い!」

「瞬間移動で消えてしまいましたわね。」

「好き勝手やってくれる……。余の国を乱しおって!」

「今は最善を尽くしましょう、陛下。」

「ゼイスの言う通りだな。」


シェルアの言葉に、不安が残った。
何と言っていたか思い出す……。


(『騎士団や兵士達が全て、自分の味方だとは思わない事ね。』……か。きっと大丈夫だ。奴の戯言だろう。……本当にそうだろうか…?)


結末は既に決まっている気がしたが、まだ変えられると信じている国王なのだった。
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