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13話

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勇者パーティーをテイナーシュ王国へと転移させてから、5日が経った。
私が魔族領の総軍団長をしているという事実は、噂となって人族の国中に広がっている。
テイナーシュ王国やその他の国々に……。
狙い通りだ。後は仕上げをするのみ。
あの国王、そして勇者諸共、国民からの信用をなくさせる。
エルザーム師匠は、知らぬ者がいないほど有名な英雄だ。
そんな師匠の弟子である私が、魔族に味方している。
その理由がかの国王にあると平民達が知ればどうなるか…。
分かりきっていることである。


《総軍団長のシェルアよ。魔王エギュアス殿、用があるのだけれど。》

《今度は念話かよ。》

《手っ取り早いもの。》

《まぁ良いが。それで、用件は?》

《以前話した通り、今から全てを公にするわ。舞台は整い、各国に私の姿を映し出す魔道具も秘密裏に配置しておいたの。後は私が話をするだけよ。》

《分かった。始めてくれて構わねぇぜ。あと人族の王達に伝言してくれ。『人族の王達と対話をする場を望む。』とな。》

《了解したわ。》


そして、各国に配置した魔道具とリンクさせてある指輪から、発動する為の魔力を送り出す。
それぞれの王都上空に、巨大なモニターが出現した。
そこに映っているのは、私ただ一人。
この魔道具の利点は、こちらからも王都の様子が見えること。
反応が分かるので便利だ。
映し出された私を見て、人々の驚きと混乱が伝わってくる。


(さて、始めましょう。)


大きく深呼吸をして、私は魔道具をしっかりと見つめる。
映っているものを見ている側からすれば、真っ直ぐ自分達を見ているような感じだろう。
私はゆっくりと話を始める。


【突然の事で驚いているかと思いますが、聞いてほしい話があります。その前にまずは自己紹介を。私は魔族領『総軍団長』のシェルアと申します。英雄エルザームの養子であり弟子です。】


顔を見合わせる人々の姿が私にも見えた。
本当に今映っているの者が英雄の養子なのか。
私のことを知っている者、知らないが本人だと信じる者、全く信じていない者。
大体この3つだった。
だが、気にせず続ける。


【今からお話する内容は、全て事実です。……認めたくはありませんでしたが…エルザーム師匠は亡くなられました。理由はテイナーシュ王国国王への不敬罪により、死刑となったことです。しかし全ては国王の計画でした。
自分の地位が脅かされることを恐れた国王は、勇者と組み、エルザーム師匠が不敬罪になるように動きました。そして、私の目の前で師匠は殺されたのです……。隣にいた国王は笑っていました。思い出すと……今でも殺したくなるのです…。】


その後も話を続けた。
国王と勇者はどのような計画で、師匠を死に追いやったのか。
何故私が魔族側についたのか。
全てを語った。


【魔王エギュアス殿は人族との戦争を望んでいません。それは人族側も同じではないでしょうか。守りたいものがあるから戦う。そうでしょう?
魔族にも情はあるのです。人族と同じく、生まれ、育ち、家庭を築く。何も変わりません。違うのは種族だけなのです。魔族と人族で手を取り合えれば、より文明は発達することが出来るでしょう。】


そして、最後に魔王エギュアス殿からの伝言を伝える。
私の言葉をより確かだというものにする証拠になる。
実際、伝えてくれと頼まれているのだが、利用する形になるだろう。


【最後に。ここからは魔族領『総軍団長』シェルアとして話させてもらうわ。これは魔族領『魔王』エギュアス殿からの伝言。魔王殿は『人族の王達と対話をする場を望む。』とのこと。応じる気があるのならば、使者を魔族領へと送りなさい。日程や場所について話し合いを出来るようにしたい。魔族領の防壁を守護する魔族に、使者だと言えば私が魔王城へと迎え入れる。では。】


魔道具への魔力供給を切り、各国で出現していたモニターが消える。
それぞれがどう動くのか、これからが少し楽しみである…。
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