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番外編
宮廷魔法師団長の選択①
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これは、《近衛騎士団、特別強化》の後日談--
エフェンは書斎を出た後、エルーファセ宮廷魔法師団長を監視していた。
近衛騎士団の強化を終えて、ディルジアに報告に行ったその日は何事も無かったと聞いてる。
しかし問題はその翌日に起こった。
エルーファセに付けていた魔法による印が、魔法省へと向かっていたのだ。
そのことに私とエフェンは気付き、密かに様子を伺っていた。
魔法師団長であるエルーファセが魔法省に出向くことは、普通ならばおかしくはないこと。
しかし今日は彼を魔法省になど呼んでいないそうだ。
昨日の出来事があった以上、警戒しておかなければならない。
何かあってからでは遅いからである。
「クソっ…クソッ!身分が高いからと、この私を脅してきよって!昨日はあの場だったから我慢したが、今日はその必要はないだろう。元々あの2人は気に食わんかったのだ…。この私を差し置いて、魔法の頂点に立っているなどと言われていることが!全くもって不愉快極まりない。」
ブツブツ言いながら魔法省へと近付いてきている。
そこで、エフェンが話しかけに行くことになった。
私は隠れたままだ。
「……魔法省にて、奴に嫌がらせをしてやろう…。あそこならば、私がしたという可能性は低くなるはず。私はあまり魔法省に来ないのだからな!」
「へぇ…。この私に喧嘩を売る気かい?」
「なっ…!?」
「どうも、エルーファセ魔法師団長。昨日ぶりだね。」
「こ、これはこれはエフェン大臣…。」
「魔法省に何用だ?」
エフェンは少し睨みつつ、低い声で問う。
するとエルーファセは後ろに大きく飛び、距離をとった
構えるようなその姿勢に、エフェンは察した。
「ほう?私とやり合う気か。」
「今は貴方1人でしょう。ヴァリフィア陛下が居られるなら勝ち目はありませんが、エフェン大臣だけならば私にも勝機はあるのですよ。」
「そうか。ならば相手をしてやろう。万一にもこの私に勝てることなどないと、理解させてやる。」
エフェンは密かに魔法で『隔離障壁』を張り、周囲から見えず、影響も与えないようにした。
つまりこの障壁が張られたことに気付きもしていないエルーファセは、始まる前から負けているも同然なのだ。
なのに自信ありげなエルーファセ。
その様子にエフェンは呆れるしかなかった。
「はぁ……何故勝てると思っているんだろうな…。」
「何を言っているのですか?さっさと始めます…よ!」
そう言うと、エルーファセは風魔法の魔法弾を撃ってきた。
直撃すれば人を殺せる威力があるものだ。
エフェンはそれを難なく躱すと、お返しとばかりに炎魔法を放つ。
それを結界で防ぎ、次は氷魔法と炎魔法を撃ってきた。
「二重詠唱か…。まぁ宮廷魔法師団長なら、それくらい出来て当然か。【落ちろ】。」
【落ちろ】と言った瞬間に、2つの魔法は地面に叩きつけられた。
何が起きたのか分からないエルーファセは、驚きで固まっている。
エフェンが発動した魔法は『呪言』という呪系魔法だ。
ただし、強力な魔法には弱点がある。
自分より強い者に呪系魔法を放つ、或いはかけた際、自分にそのまま返ってくるのだ。
自身とその者に圧倒的な差がある場合は、何倍にも膨れ上がってしまう。
しかしエフェンとエルーファセの力量は雲泥の差である。
「な、何をした…?」
「呪系魔法『呪言』。普通は人にかけたりする魔法だが、こういう使い方もあるのさ。まぁ、君が私やヴァリフィア陛下に適うわけがないがな。」
「くっ…。」
しばらく戦闘は続いた。
実を言えば、エフェンが実力を知るために適当に受け流していただけなのだが。
その様子を見て、私は1つ思ったことがある。
「……あのハゲって、思っていたより弱いのね…。」
なるべく全力を出してもらえるようエフェンがエルーファセを挑発しているが、見ている限りの実力では、今の近衛騎士団・団長より弱いだろう。
「その程度か?」
「黙れ!ここで私はお前に勝たなければならないのだ!」
「負ければ人生終わったも同然だから?」
「うるさい……うるさい うるさい うるさい!」
「はぁ…この程度で感情的になるとは。」
「散々好き勝手なことを言ってくれた礼だ。私の最強の魔法を受けるが良い!」
「それは楽しみだ。」
エフェンが笑顔で言ったのに対し、エルーファセはより怒りに満ちている。
その勢いで、エルーファセは強力な魔法の詠唱の言葉を紡いでいった。
そんなことをしている間に倒すことは用意だが、あえてエフェンは待っていた。
心を折るつもりだろうか。
「これが……私の本気だ…!」
確かに強力な魔法だ。
しかしその程度では……
「なぁっ!?」
バシュ!
という音と共に、魔法が直撃したエフェンが普通に立っていた。
結界で防いだのだ。
逆に防げない方がおかしい。
そして今度はエルーファセに近づいて行く。
「弱すぎる。その程度で私に勝てると思っているとは……心底見損なった。」
「くっ……まだだ!」
「もう諦めなよ。」
「お前さえいなければ…私は…!お前さえ………っ…!?」
(あらあら、本気で怒ってる。気持ちは分からなくもないけれどね…。)
エフェンは殺気を纏い、エルーファセを見下ろす。
元々身長差があるが故に、より恐怖に震えることになっているだろう。
全て自業自得だ。
これまでの自らの行いに対する報いである。
「…黙れ。お前は俺を侮り、1人なら勝てると考えた。だが現実はどうだ?」
「……っ…!」
「全く歯が立たないと、その馬鹿な頭脳で理解したか?悪いが、俺はヴァリフィアほど優しくはないんでな。死にたいと思える地獄を、これから味わえばいい。」
(怒っていると思っていたけど、冷静で良かったわ。)
エルーファセはガクガクと震え、そのまま気を失った。
私は隠れていた場所からエフェンの元まで移動した。
「怒りに飲まれていないか心配したけれど、『俺』と言っているくらいには冷静だったのね。」
「当たり前だ。怒りは敗北の元でもある。何事も冷静に対処するのが私だと、知っているだろう?」
エフェンは相手を脅す時、一人称を変える。
普段は『私』だが、怒るような姿を見せ、『俺』と言ったのならばかなり恐ろしく感じるだろう。
言葉だけで、それほどの力があるのだ。
「ええ。無論、しっているわよ。さて、このハゲは任せるわ。私はディアに報告してくるから。」
「分かった。私も片付いた後に詳細を報告しに行くとするよ。」
「了解よ。ではまた。」
そうして、私は国王・ディルジアの書斎へと転移したのだった。
エフェンは書斎を出た後、エルーファセ宮廷魔法師団長を監視していた。
近衛騎士団の強化を終えて、ディルジアに報告に行ったその日は何事も無かったと聞いてる。
しかし問題はその翌日に起こった。
エルーファセに付けていた魔法による印が、魔法省へと向かっていたのだ。
そのことに私とエフェンは気付き、密かに様子を伺っていた。
魔法師団長であるエルーファセが魔法省に出向くことは、普通ならばおかしくはないこと。
しかし今日は彼を魔法省になど呼んでいないそうだ。
昨日の出来事があった以上、警戒しておかなければならない。
何かあってからでは遅いからである。
「クソっ…クソッ!身分が高いからと、この私を脅してきよって!昨日はあの場だったから我慢したが、今日はその必要はないだろう。元々あの2人は気に食わんかったのだ…。この私を差し置いて、魔法の頂点に立っているなどと言われていることが!全くもって不愉快極まりない。」
ブツブツ言いながら魔法省へと近付いてきている。
そこで、エフェンが話しかけに行くことになった。
私は隠れたままだ。
「……魔法省にて、奴に嫌がらせをしてやろう…。あそこならば、私がしたという可能性は低くなるはず。私はあまり魔法省に来ないのだからな!」
「へぇ…。この私に喧嘩を売る気かい?」
「なっ…!?」
「どうも、エルーファセ魔法師団長。昨日ぶりだね。」
「こ、これはこれはエフェン大臣…。」
「魔法省に何用だ?」
エフェンは少し睨みつつ、低い声で問う。
するとエルーファセは後ろに大きく飛び、距離をとった
構えるようなその姿勢に、エフェンは察した。
「ほう?私とやり合う気か。」
「今は貴方1人でしょう。ヴァリフィア陛下が居られるなら勝ち目はありませんが、エフェン大臣だけならば私にも勝機はあるのですよ。」
「そうか。ならば相手をしてやろう。万一にもこの私に勝てることなどないと、理解させてやる。」
エフェンは密かに魔法で『隔離障壁』を張り、周囲から見えず、影響も与えないようにした。
つまりこの障壁が張られたことに気付きもしていないエルーファセは、始まる前から負けているも同然なのだ。
なのに自信ありげなエルーファセ。
その様子にエフェンは呆れるしかなかった。
「はぁ……何故勝てると思っているんだろうな…。」
「何を言っているのですか?さっさと始めます…よ!」
そう言うと、エルーファセは風魔法の魔法弾を撃ってきた。
直撃すれば人を殺せる威力があるものだ。
エフェンはそれを難なく躱すと、お返しとばかりに炎魔法を放つ。
それを結界で防ぎ、次は氷魔法と炎魔法を撃ってきた。
「二重詠唱か…。まぁ宮廷魔法師団長なら、それくらい出来て当然か。【落ちろ】。」
【落ちろ】と言った瞬間に、2つの魔法は地面に叩きつけられた。
何が起きたのか分からないエルーファセは、驚きで固まっている。
エフェンが発動した魔法は『呪言』という呪系魔法だ。
ただし、強力な魔法には弱点がある。
自分より強い者に呪系魔法を放つ、或いはかけた際、自分にそのまま返ってくるのだ。
自身とその者に圧倒的な差がある場合は、何倍にも膨れ上がってしまう。
しかしエフェンとエルーファセの力量は雲泥の差である。
「な、何をした…?」
「呪系魔法『呪言』。普通は人にかけたりする魔法だが、こういう使い方もあるのさ。まぁ、君が私やヴァリフィア陛下に適うわけがないがな。」
「くっ…。」
しばらく戦闘は続いた。
実を言えば、エフェンが実力を知るために適当に受け流していただけなのだが。
その様子を見て、私は1つ思ったことがある。
「……あのハゲって、思っていたより弱いのね…。」
なるべく全力を出してもらえるようエフェンがエルーファセを挑発しているが、見ている限りの実力では、今の近衛騎士団・団長より弱いだろう。
「その程度か?」
「黙れ!ここで私はお前に勝たなければならないのだ!」
「負ければ人生終わったも同然だから?」
「うるさい……うるさい うるさい うるさい!」
「はぁ…この程度で感情的になるとは。」
「散々好き勝手なことを言ってくれた礼だ。私の最強の魔法を受けるが良い!」
「それは楽しみだ。」
エフェンが笑顔で言ったのに対し、エルーファセはより怒りに満ちている。
その勢いで、エルーファセは強力な魔法の詠唱の言葉を紡いでいった。
そんなことをしている間に倒すことは用意だが、あえてエフェンは待っていた。
心を折るつもりだろうか。
「これが……私の本気だ…!」
確かに強力な魔法だ。
しかしその程度では……
「なぁっ!?」
バシュ!
という音と共に、魔法が直撃したエフェンが普通に立っていた。
結界で防いだのだ。
逆に防げない方がおかしい。
そして今度はエルーファセに近づいて行く。
「弱すぎる。その程度で私に勝てると思っているとは……心底見損なった。」
「くっ……まだだ!」
「もう諦めなよ。」
「お前さえいなければ…私は…!お前さえ………っ…!?」
(あらあら、本気で怒ってる。気持ちは分からなくもないけれどね…。)
エフェンは殺気を纏い、エルーファセを見下ろす。
元々身長差があるが故に、より恐怖に震えることになっているだろう。
全て自業自得だ。
これまでの自らの行いに対する報いである。
「…黙れ。お前は俺を侮り、1人なら勝てると考えた。だが現実はどうだ?」
「……っ…!」
「全く歯が立たないと、その馬鹿な頭脳で理解したか?悪いが、俺はヴァリフィアほど優しくはないんでな。死にたいと思える地獄を、これから味わえばいい。」
(怒っていると思っていたけど、冷静で良かったわ。)
エルーファセはガクガクと震え、そのまま気を失った。
私は隠れていた場所からエフェンの元まで移動した。
「怒りに飲まれていないか心配したけれど、『俺』と言っているくらいには冷静だったのね。」
「当たり前だ。怒りは敗北の元でもある。何事も冷静に対処するのが私だと、知っているだろう?」
エフェンは相手を脅す時、一人称を変える。
普段は『私』だが、怒るような姿を見せ、『俺』と言ったのならばかなり恐ろしく感じるだろう。
言葉だけで、それほどの力があるのだ。
「ええ。無論、しっているわよ。さて、このハゲは任せるわ。私はディアに報告してくるから。」
「分かった。私も片付いた後に詳細を報告しに行くとするよ。」
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そうして、私は国王・ディルジアの書斎へと転移したのだった。
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