上 下
243 / 255
番外編

ヒロイン誘拐事件④

しおりを挟む
「わっ!ここは……」

「静かに!気付かれてはいけないのよ。」

「も、申し訳ありません…。」

「エフェン、周囲の様子は?」

「前方のアジトらしき建物からの見張りは、目視で5人、実際は8人といったところだな。」

「外に8人……なら、問題なく突破出来るわね。あとは、中に何人いるかということだけれど…。少し集中するから、警戒をよろしく頼むわ。」

「了解。」


そう言って、私は生命探知と魔力感知を建物内に集中させて行う。
勿論、魔法を使っていることが相手に感づかれないよう、魔法の隠蔽もしている。
--魔力反応を見る限り、目立った者はいなかった。
人数は23人。見張りとの合計で31人だ。


「終わったわ。中にいるのは全員で23人。特に魔力が強いのは2人ね。恐らく盗賊団の頭と側近といったところでしょう。」

「了解だ。」

「承知しました。それで、どう突破するのですか?」

「正面突破以外に有り得ないわね。」

「……え?」

「ん?」

「いやいや!正面突破せずとも、ヴァリフィア陛下の転移魔法があれば、盗賊団の頭の場所へ直接行けますよね!?」

「確かに、私が直接転移魔法で移動し、その他の盗賊達はエフェンやエールズに任せてもいいでしょう。」

「では!」

「だけど!」

「っ!?」

「それでは面白くないわ。」

「面白く…ない……?」

「ええ。どうせなら、少し楽しみたいでしょう?相手の驚く顔も見てみたいわ。」

「……王妃陛下は、相変わらず性格が悪いですね…。あっ!失礼致しました…。」

「ふふっ、気にしてないわ。否定はできないもの。さて、エフェン。」

「ああ。」


私とエフェンは変身魔法を使い、髪の色や長さを変える。
すでに全くの別人だ。
エールズは私達を驚いた顔で見ている。


「そんなことをする必要があるのか、という顔をしているな。」

「当然です、エフェン様。わざわざこのようなことをせずとも…。」

「演出、というものも大事なのさ。」

「まさか…エフェン様も……。」

「ヴァリフィアと同じさ。」


そう言ってエフェンはエールズに向けてウィンクをする。
エールズは呆れている様子。
たまには息抜きも必要なのだ。
とはいえ、これは友人の命もかかっているので、あまりふざけ過ぎてはいけないのだが。


「こんなに気を抜いていて大丈夫でしょうか……。」

「問題はないさ。」

「私は変身魔法を使用しなくても良いのですか?」

「そのままで良いわよ。--逃げられては困るから、転移は不可能な状態にしておくわ。『転移阻害結界』……さあ、始めましょう!」

「ああ!」「……はい。」


そうして、私達は盗賊団のアジトに向けて走り出した。
まずは見張りの者達を相手にしていく。


「『強制解除』!」

「なっ!?透明化が…!」

「『睡眠香』。」


エフェンが魔法を発動させると同時に、見張りをしていた盗賊達が次々と倒れていく。
眠ったのだ。
さらに私は、まとめて『魔光縛』にて抵抗を出来なくしておく。
そしてスムーズに盗賊団のアジト内へと、3人で入っていくのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

木山楽斗
恋愛
私は、恋愛シミュレーションゲーム『Magical stories』の悪役令嬢アルフィアに生まれ変わった。 彼女は、派手好きで高慢な公爵令嬢である。その性格故に、ゲームの主人公を虐めて、最終的には罪を暴かれ罰を受けるのが、彼女という人間だ。 当然のことながら、私はそんな悲惨な末路を迎えたくはない。 私は、ゲームの中でアルフィアが取った行動を取らなければ、そういう末路を迎えないのではないかと考えた。 だが、それを実行するには一つ問題がある。それは、私が『Magical stories』の一つのルートしかプレイしていないということだ。 そのため、アルフィアがどういう行動を取って、罰を受けることになるのか、完全に理解している訳ではなかった。プレイしていたルートはわかるが、それ以外はよくわからない。それが、私の今の状態だったのだ。 だが、ただ一つわかっていることはあった。それは、アルフィアの性格だ。 彼女は、派手好きで高慢な公爵令嬢である。それならば、彼女のような性格にならなければいいのではないだろうか。 そう考えた私は、地味に謙虚に生きていくことにした。そうすることで、悲惨な末路が避けられると思ったからだ。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~

Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。 そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。 「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」 ※ご都合主義、ふんわり設定です ※小説家になろう様にも掲載しています

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。

曽根原ツタ
恋愛
 ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。  ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。  その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。  ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?  

処理中です...