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解決策はあるのですが……
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「私はどうすればよろしいのでしょう…。」
シェシュアは絶望に満ちた顔で、私達に問うてきた。
「ご両親は、この一件をお知りなの?」
「はい…。お父様は『伯爵からは何も来ていない。だから気にするな。』と仰って下さいましたが……。」
「そうなのね。」
(シアの家は子爵家。ご両親がブュージェ伯爵家の事を知っているか怪しいけれど、立場が上の貴族相手に婚約の申し出を断るなんて出来るわけが無い。)
私は、ギェヌムが遊び相手を欲しいだけなのだと推測する。
本気で婚約するつもりなら、既にブュージェ伯爵から申し出が来ているはずだからだ。
あれは婚約者として伯爵家へと招き、遊ぶだけ遊んだ後、婚約を解消するつもりだろう。
無論、『遊ぶ』とはそういう事だ。
理由なしに貴族の邸へと関係者以外が立ち入る事はない。
お茶といえど性別が違う者同士が会うのなら、一度や二度程度なら問題は無いが、何回もとなれば異様な目で見られる。
(つまりは会う口実を作るための、形だけの『婚約』という事。本当は相手を何も想っていない。最っっ低ね、ギェヌムの奴!)
私は再度、怒りが込み上げてくる。
そして、シェシュアをギェヌムから護ろうと決心した。
「婚約を避ける方法は……あると言えばあるわね。簡単な事ではないけれど。」
「っ!あるのですか!?」
今度は希望に満ちた顔を向けてくる。
しかし方法があったとしても、当然簡単ではないのだ。
「ブュージェ伯爵家の悪事の証拠を掴み、然るべき対応をしてもらう事よ。」
「悪事の証拠を…ですか。それはとても難しい事ですわね。」
ユリエルの言うことはもっともだ。
これまで、証拠を一切残さずに動いてきたブュージェ伯爵家。
証拠を掴むのは大変な事だろう。
「その通りね。さらに言えば、多くの時間と人手が必要になるでしょう。」
「っ!関係の無い方々にまで、ご迷惑をおかけする訳にはっ!」
「落ち着きなさい。考えはあるのよ。」
「……ヴァリフィア様、まさかあれをお使いになられるのですか?」
「仕方ないでしょう?それに、友人が困っているのであれば、助けになるのは当然よ。」
「『あれ』が何かは分かりませんが、貴族の方々の協力はあまり期待しない方がよろしいかと。」
「そうね。」
証拠が掴めないのは、それだけの『事』をしているということだ。
貴族達が関わりたくないのも無理はない。
『あれ』が何を示すのかは、ミエラのみが理解していた---
シェシュアは絶望に満ちた顔で、私達に問うてきた。
「ご両親は、この一件をお知りなの?」
「はい…。お父様は『伯爵からは何も来ていない。だから気にするな。』と仰って下さいましたが……。」
「そうなのね。」
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本気で婚約するつもりなら、既にブュージェ伯爵から申し出が来ているはずだからだ。
あれは婚約者として伯爵家へと招き、遊ぶだけ遊んだ後、婚約を解消するつもりだろう。
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理由なしに貴族の邸へと関係者以外が立ち入る事はない。
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そして、シェシュアをギェヌムから護ろうと決心した。
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「っ!あるのですか!?」
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「ブュージェ伯爵家の悪事の証拠を掴み、然るべき対応をしてもらう事よ。」
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