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第31話

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「牢に入れられた気持ちはどうですか、殿下?」


私が向かったのは地下牢だ。それもヴィアルスが投獄されている場所…。
近くにはミフェラも投獄されているが、私とヴィアルスの会話は聞こえない程度に離れている。


「…無能が何の用だ。」
「様子を見に来ただけですよ。」


ヴィアルスは大層機嫌が悪いと見て分かる表情をしていた。
それにまだ無能呼ばわり。余程、私のことを認めたくないのだろう。


「何故逃げたのですか?」
「……ミフェラに逃げた方が良いと言われた。私もそれに賛同したまでのこと。」
「つまり罪に問われ、牢に入れられるくらいならば逃げた方が良いと考えたのでしょうね。」
「……。」


やはりミフェラからだったようだ。想定外の事をされたので少し警戒していたが、私の言葉を否定しないということは推測が当たっている証拠だ。
罪を犯しておいて逃げようなどという狂言を発するとは…。しかしその程度の頭しか無いのだろう。
そして今度はヴィアルスが、話の流れを変えるかのように私に聞いてきた。


「ここに入れられる前にルーズフィルト公爵から聞いたが、彼の養子になったそうだな。」
「公爵様が話したのですね…。殿下の仰る通りです。今の私は、公爵家長女レイシア・ルーズフィルトとなっています。」
「……私は平民ではなく、貴族…、それも公爵の養女を誘拐したということになるのか。」
「ええ。公爵家を敵に回す行いですね。」
「チッ…。」


舌打ちをし、より不機嫌になるヴィアルス。
彼は既にエリーユア公爵家も敵に回している。公爵家は王国に3つしかなく、それぞれが王家に次ぐ力を有しているのだ。そんな公爵家の2つから敵視されては、もはや味方となる貴族はいないも同然だった。


「……貴様、まさか私をこのような目に遭わせる為に、あの時あまり抵抗しなかったというのか…?」


ヴィアルスが言っているのは、私を誘拐した時のことだろう。少しは頭が回るようだ。
だが今更気付いても遅い。それにまだ刑が確定していない時点で、答えを言うつもりもない。


「…何のことでしょう?ヴィアルス殿下が無理矢理私を連れ去ったのではありませんか。」
「……。」
「では私はもう行きますね。」


何か言いたげな顔をしていたが、言葉を発してくる前に私はその場を立ち去った。
ミフェラとヴィアルスの2人は、明日にも刑が確定するだろう。国王陛下が下すので、厳格な結果になるはずだ…。
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