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第20話

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「ああ、それはこっちで良いよ。」
「分かったわ。」
「レーアが居ると仕事が捗るし、丁寧だからやりやすいなぁ。」
「ヘクト義兄さんこそ、書類の間違いがほとんどないのは凄いわ。私も仕事が楽よ。」
「それは良かったよ。」


『公爵令嬢レイシア・ルーズフィルト』となってから早くも1週間が過ぎた。
公爵家での暮らしにも慣れ、お義父様やヘクト義兄さんのような家族だけではなく使用人達とも良い関係を築けていた。メアも侯爵家の時より働きやすいと言っている。
仕事は大体昼過ぎには片付くので、空いた時間はヘクト義兄さんやリランとお茶をしたり、彼らと公爵家を見て回ったりするようにしているのだが、侯爵家より何倍も広いと再確認させられる。
最近気になっているのは、お義父様の機嫌が何故かとても良いことだ。ずっと笑顔で、不気味でしかない…。
だがその理由は今日知ることになった。


「レイシア様。」
「メア。どうかしたの?」


私が自室にて読書をしていると、メアが入って来た。


「公爵様がお呼びです。今すぐ書斎に来て欲しいとの事です。」
「分かったわ。」


夕暮れ時、丁度お義父様は王城から帰ってきたばかりだろう。公爵家へと入ってすぐに私を呼んだのだと考えられる。
書斎に向かう途中、お義母様に会った。何やら忙しなく行動している。


「お義母様。」
「わわっ!誰かと思えばレーアじゃない。」
「何をしているのですか……?」
「もう、また敬語よ?公の場や仕事中以外では不要だと、ゼムにも言われたしょう?ここは公爵家。つまりは私達の家なのだから、もっと気楽に行かないとっ。」
「はい…。お義母様とお義父様はどうしても慣れなくて……。」


養子となって3日経った頃に、敬語不要だと2人から言われた。ヘクト義兄さんの言っていた通りだ…。だが慣れないものは慣れない。
仕事や周囲の目がある場所と、家などの私的な場との態度の切り替えという意味では、良い勉強になる。これを義兄さんやリランは難なく行っているのだから、お義父様達の教育方法は素晴らしいものだ。


「それで、何をしていたの…?」
「今帰ってきたばかりなのだけれど、ゼムが今後についてレーアと話をするから、私にも書斎に来て欲しいって言われてね。使用人達に、今日会った貴族から頂いた物の扱いについて指示をして、急いで書斎の方に来たの。」
「なるほど…。」
「丁度良いから、一緒に行きましょうか。」
「ええ。」


そうして、私はお義母様と共にお義父様の書斎へと向かった。
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