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7.自業自得(最終話)

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--1年後--



「……ふぅ…。今日も疲れた…。」

「お疲れ様でした、エリスお嬢様。」

「ありがとう。でも良い疲れだわ。領民達のためだと思うと、まだまだ頑張れる。」

「お嬢様は領民想いの、本当に優しいお方ですっ。」

「ふふっ、嬉しいことを言ってくれるのね。」

「事実ですから!」


あれから、私は幸せな日々を送っていた。
お父様の言葉と、私の脅しが効いたのか、婚約話をゼルディア殿下がしてくることが無くなったのである。
今の私に婚約者はいないが、ゆっくり探せば良いだけのこと。

一方、ゼルディア殿下はまだ国王陛下にレーアとの婚約を認められずにいる。
お父様に聞いたのだが、助手となる人が決まっていないそうだ。
決まらない限りは婚約を認めないと言われているらしい。
しかし助手が見つからないわけではなく、長続きしないのである。

……当然だろう。
殿下はその人に仕事を全て押し付けるのだから…。
とてもではないが、やってられるものではないのだ。

そして貴族令嬢達は、ゼルディア殿下をよく思わないようになっていた。
理由はレーア・ルネイアルト伯爵令嬢にある。
彼女は上級貴族に対し、私の時と同様、勝手に親しい名で呼ぶなどの行動を取っていたからだ。
次第にレーアは貴族社会から浮いた存在となり、ゼルディア殿下に対する貴族達の見る目・評価も変わってしまった。

…自業自得だ。
何もかもゼルディア殿下自身のせいである。


「お嬢様。お茶会の招待状が届いています。開かれるのは明後日だそうですよ。」

「あら、今日もなのね。見せて頂戴。--ルア、参加すると返しておいて。」

「分かりましたっ!」


私にとってこの1年で変わったことは、お茶会への招待が増えたこと。
話す内容はゼルディア殿下のことではなく、公爵領についてだ。
つまりは、仕事のやり方などを聞かれている。
ヘーレイシア公爵領が、それほど良い評判を受けているという証拠である。

私は小さなお茶会だろうと、下級貴族のお茶会だろうと、招待状の書き方が貴族として正しいものならば参加するようにしている。
逆に言えば、書き方がなっていない場合は参加しない。
そうしていると、いつの間にか私がお茶会に参加しているだけで、主催者側の評価が上がるようになっていた。
私としては、特に問題もないので気にしていないが…。


婚約破棄をしてから、本当に充実した生活を送れている。
ゼルディア殿下とレーアの婚約は難しいだろうが、私には関係のないことだ。
評価が下がろうとどうなろうと、好きにしてくれればいい。
全て殿下が望んだことなのだから--
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