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第5話

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「…私との婚約を破棄するというのか……?」

「はい。お話をして殿下が変わるとおっしゃられたのであれば、もう少し様子を見ようかと考えていましたが……。殿下には好きな方がおられるのでしょう?私という存在は邪魔だと思うのですが。」

「そ、そんなことはないぞ…!」

「そのお言葉を信じることなど、最早出来ません。」

「そもそも、そう簡単に婚約破棄など出来ないはずだ。これは親同士が決めた、言わば政略結婚なのだからな!」

「問題ありません。私が公爵様お父様に話をします。殿下の名誉のためにも理由は言いませんが、婚約破棄していただけるよう進言します。」

「なっ…。」

「お話は以上です。では失礼致します。」


ザーディヌ殿下を置き去りにし、私は退室しました。
何故婚約破棄を拒否したのかは分かりませんが、良いように使われるのは嫌です。

その後、公爵家へと帰りました。
メイド達がお風呂の準備や夕食の支度をしていましたが、私は公爵家当主のお父様にお会いしたいと、帰ってすぐに伝えました。
お父様は忙しいお方です。
今日急に話をしたいと言っても、後日にしてくれと返される、そう思っていました。
ですが……


「シュレアお嬢様。公爵様がお会いになるとおっしゃっています。」

「え……わ、分かったわ。すぐに向かうわね。」


そうして、第1話あの話に繋がるのです。


「お父様。お忙しいところ申し訳ありません。」

「構わないよ。娘が話したいと言っているんだ。断る親など居ないだろうさ。」

「ありがとうございます…。」

「それで、何の話だ?」

「……ふぅ…。」

「ん?」

「もう我慢なりません。お父様、ザーディヌ殿下との婚約を破棄させてくださいっ!」

「え、えぇ……?」


当然、困惑されますよね…。
仲が良いと噂されているはずなのに、突然婚約破棄させてほしいなどと言い出せば誰だって驚くでしょう。
私だって、(かなり)昔は婚約破棄など考えてもいませんでした。
幸せになれるのだと、そう信じて疑わなかったのです。
しかし成長するにつれて、この方と結婚するのは無理だと思い始めました。
その思いはここ3年で膨れ上がり、今に至るのです。


「何故…婚約破棄したいんだ……?」

「我慢の限界だからです。」

「何を我慢していたんだ?」

「お父様を含め、関わっている人以外は誰も知りはしないでしょう。ザーディヌ殿下の最低さときたら……。」

「ちょ、待て待て。言葉が過ぎるぞ。王族たる殿下のことを最低だなんて…!」

「お父様は何も知らないから、そのようなことが言えるのです!私はどうなろうと構いませんから、婚約破棄させてください!決して公爵家には迷惑をかけませんから!」

「はぁ……。首を縦に振ることは出来ん話だ。シア、もう一度考え直せ。」

「しかし…!」

「今日のところはもう寝ろ。この話は聞かなかったことにする。良いな?」

「……分かりました…。」


とのことなので、自力で婚約破棄できるように動こうと思います。
というより、お父様に納得・理解していただけるようにした方が良いでしょう。
殿下の行いに関する揺るぎない証拠を見せることが、1番の近道だと思うのです。
婚約破棄したい理由をお父様には言わないと私が言っていた……ですか?
そんなことは忘れてしまいましたね…。
それに、お父様だけならば問題は無いでしょう。
国王陛下も信頼なされているのですから。


さて……
自分の能力を最大限に生かし、婚約破棄していただけるよう頑張るとしますか--
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