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5章 王都上空決戦
第82話 吸収結界
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「──っ!」
眠りについていた私は、王都上空に突然現れた巨大な魔力反応を感知し、飛び起きるように目を覚ました。
常時発動させている《魔力感知》は、ある一定以上の魔力を自身を中心とする半径1km以内に感知した場合、自動で知らせてくるようにしているのだ。
「リアラ!」
どうやらミアスも気付いていた様子。
流石は私の側近だ。
…と、感心している場合ではなかった。
魔法で着替えを一瞬の内に終わらせ、私とミアスは直ぐさま王城の外へと出た。
「なっ……。」
空を見上げ、言葉を失った。
上空を飛行していたもの、それは倒したはずのドラゴンだったのだ。
しかし倒したドラゴンが復活しているはずはない。
さらには魔力量が強化され、身体も巨大になっているのだ。
ジルディガーにかけた魔法が解けた反応や、ドラゴンから発せられている魔力が彼の魔力と酷似しているということもない。
ならば何故…。
「でかい反応が急に現れたかと思えば…。」
誰かが転移してきた反応を感知したかと思えば、宙に浮く私の隣にレイが現れた。
国家存亡の危機だというのに、涼しい顔をしている。
だがそれは私も同じだった。
なので彼女に何も言えやしない。
「レイさ……ファルさん。」
「呼び捨てで良いって。まぁ基本的にはファルと呼んでくれ。ついでに敬語禁止だ。」
「……なら遠慮なく…っと。」
会話中にこちらに向けて放たれたブレスを、難なく結界にて防ぐ。
防ぐと言うよりは、魔力に変換して吸収したと言った方が正しいだろう。
ブレスはドラゴンが扱う特殊な魔法。
魔法であるならば、元を辿れば魔力だ。
ジルディガーとの戦いの後、ブレスのような広範囲の魔法に対処する方法を、何をしている時も考えていた。
そうして出した結論が、『当たる前に魔力に戻してしまえばいい』ということだった。
変還され魔法が魔力に戻った後、それらは私の生み出した異空間に自動的に転送する。
自分の魔力が尽きたことは無いが、もしもの為の保険として貯めておくのだ。
魔力に戻す為にも魔法を用いているので、魔力を消費する。
しかし結界で防ぐよりも効率的かつ弾かれた魔法による周囲への被害も無い。
極めつきは魔力を吸収できる。
まさに一石三鳥な魔法を生み出したのだ。
名は《吸収結界》といい、そのままだ。
レイやミアスは隣にいたが為に、私の吸収結界で無事だった。
「ほう、やはり流石だな。手を貸した方が良いかと思ったんだが…。」
「私が防げると分かっていて隣に近寄って来たでしょう…。」
「それは『気のせい』というやつだ。」
にやつきながら私にそう言ったレイ。
彼女は中々良い性格をしているようだ……。
「にしても、魔法を魔力に変還して吸収か…。凄い魔法を生み出したものだ。」
流石は賢者だと思った。
一度見ただけで魔法の効果を正確に読み解いている。
ミアスには軽く話していたが、何も知らない者がこの魔法を見て理解できるのは、賞賛に値するのだ。
「使ったのは今が初めてだけれどね。」
「そうか……って、え、え?…はぁ!?」
爆弾発言をした私に対し、全力で驚くレイの姿が面白かったのは内緒である。
事実、魔法陣を完成させてはいたが、その魔法が本当に思い通りの効果を発揮するのかどうかは分からなかった。
もし失敗していたとしても結界を張っていたので、死ぬことはなかったが。
「ちょ、おま……ま、本気で言ってるのか…?!」
「マジよ。元々ブレスのような広範囲魔法に対抗する結界魔法として生み出したから、実験も出来て丁度良かったのよ。」
「……。」
口を開けて固まっているレイ。
思わず笑ってしまった。
「…全く、命知らずのガキだな…。」
「ガキとは心外ね。私はもう15歳、この国では大人よ。」
「アタシからすれば誰だってガキさ。15歳なんてまだまだだろう。」
「まぁファルは見た目とは違ってご老体……。」
「んー?」
「一応気にしてるのね…。あ、それはそうと、何故ジルディガーが召喚したドラゴンが攻めてきた時、対応しなかったの?」
率直な疑問をぶつけてみた。
私は死魔の森に居たので、王都の状況に気付くのが遅れてしまった。
だがレイが居たのならば、被害など微塵も出なかったはずだ。
因みにこうして会話をしている今も、ドラゴンはブレスを放ち続けている。
それらは全て常時展開させた吸収結界で防いでいるので、意味を成していないが…。
「あの時、アタシは隣国に居たからな。各ギルド支部を、年に1回ずつ直に見に行っているのさ。現在はリアラが張った結界があるから、アタシは王都や王城に結界を張っていなかった。だから気付かなかったんだ。ガイジスから《連絡蝶》を受け取った時は、そりゃ驚いたさ。」
「なるほどね…。」
これもジルディガーの策だったのだろう。
Sランク冒険者すらいない状況を狙った、つまりはそういうことだ。
『ガアァァァアァ!』
「おっ…と、そろそろ倒さないといけないようだな。」
「せっかくだからミアス、倒して良いわよ。」
「そう言ってくれるのはありがたいが、リアラも魔法を試したいんじゃないのか?」
「試したい魔法はもう試したわ。次はミアスがファルに実力を証明する番なのよ。」
「了解。」
そう言うと、ミアスはドラゴンを引き付けて私とレイから離れた。
ミアスに任せたのは、決して倒すのが面倒だったからという理由ではない。
…決して。
王都上空の広範囲に吸収結界を平たく発動させておいたので、ドラゴンがブレスを放ったとしても王都に被害はない。
これでミアスも心置きなく戦えるだろう。
そう思っていると、レイが少し心配そうな声で聞いてきた。
「…正直言って、ミアスには荷が重くないか?」
「そうかしら?」
「彼の魔力総量、リアラの10分の3程度か?」
「…まぁそのくらいね。」
「なら手こずりそうだな。寧ろ1人では厳しい可能性もある。」
現在、本当は10分の1にも満たないほどの差がある。
だが賢者ですら気付けないように、完璧に魔力制御をして偽っていた。
とはいえ……
「ファル、ミアスを舐めすぎよ。」
私がそう言った瞬間、ミアスは剣でドラゴンの急所である首を斬った──
眠りについていた私は、王都上空に突然現れた巨大な魔力反応を感知し、飛び起きるように目を覚ました。
常時発動させている《魔力感知》は、ある一定以上の魔力を自身を中心とする半径1km以内に感知した場合、自動で知らせてくるようにしているのだ。
「リアラ!」
どうやらミアスも気付いていた様子。
流石は私の側近だ。
…と、感心している場合ではなかった。
魔法で着替えを一瞬の内に終わらせ、私とミアスは直ぐさま王城の外へと出た。
「なっ……。」
空を見上げ、言葉を失った。
上空を飛行していたもの、それは倒したはずのドラゴンだったのだ。
しかし倒したドラゴンが復活しているはずはない。
さらには魔力量が強化され、身体も巨大になっているのだ。
ジルディガーにかけた魔法が解けた反応や、ドラゴンから発せられている魔力が彼の魔力と酷似しているということもない。
ならば何故…。
「でかい反応が急に現れたかと思えば…。」
誰かが転移してきた反応を感知したかと思えば、宙に浮く私の隣にレイが現れた。
国家存亡の危機だというのに、涼しい顔をしている。
だがそれは私も同じだった。
なので彼女に何も言えやしない。
「レイさ……ファルさん。」
「呼び捨てで良いって。まぁ基本的にはファルと呼んでくれ。ついでに敬語禁止だ。」
「……なら遠慮なく…っと。」
会話中にこちらに向けて放たれたブレスを、難なく結界にて防ぐ。
防ぐと言うよりは、魔力に変換して吸収したと言った方が正しいだろう。
ブレスはドラゴンが扱う特殊な魔法。
魔法であるならば、元を辿れば魔力だ。
ジルディガーとの戦いの後、ブレスのような広範囲の魔法に対処する方法を、何をしている時も考えていた。
そうして出した結論が、『当たる前に魔力に戻してしまえばいい』ということだった。
変還され魔法が魔力に戻った後、それらは私の生み出した異空間に自動的に転送する。
自分の魔力が尽きたことは無いが、もしもの為の保険として貯めておくのだ。
魔力に戻す為にも魔法を用いているので、魔力を消費する。
しかし結界で防ぐよりも効率的かつ弾かれた魔法による周囲への被害も無い。
極めつきは魔力を吸収できる。
まさに一石三鳥な魔法を生み出したのだ。
名は《吸収結界》といい、そのままだ。
レイやミアスは隣にいたが為に、私の吸収結界で無事だった。
「ほう、やはり流石だな。手を貸した方が良いかと思ったんだが…。」
「私が防げると分かっていて隣に近寄って来たでしょう…。」
「それは『気のせい』というやつだ。」
にやつきながら私にそう言ったレイ。
彼女は中々良い性格をしているようだ……。
「にしても、魔法を魔力に変還して吸収か…。凄い魔法を生み出したものだ。」
流石は賢者だと思った。
一度見ただけで魔法の効果を正確に読み解いている。
ミアスには軽く話していたが、何も知らない者がこの魔法を見て理解できるのは、賞賛に値するのだ。
「使ったのは今が初めてだけれどね。」
「そうか……って、え、え?…はぁ!?」
爆弾発言をした私に対し、全力で驚くレイの姿が面白かったのは内緒である。
事実、魔法陣を完成させてはいたが、その魔法が本当に思い通りの効果を発揮するのかどうかは分からなかった。
もし失敗していたとしても結界を張っていたので、死ぬことはなかったが。
「ちょ、おま……ま、本気で言ってるのか…?!」
「マジよ。元々ブレスのような広範囲魔法に対抗する結界魔法として生み出したから、実験も出来て丁度良かったのよ。」
「……。」
口を開けて固まっているレイ。
思わず笑ってしまった。
「…全く、命知らずのガキだな…。」
「ガキとは心外ね。私はもう15歳、この国では大人よ。」
「アタシからすれば誰だってガキさ。15歳なんてまだまだだろう。」
「まぁファルは見た目とは違ってご老体……。」
「んー?」
「一応気にしてるのね…。あ、それはそうと、何故ジルディガーが召喚したドラゴンが攻めてきた時、対応しなかったの?」
率直な疑問をぶつけてみた。
私は死魔の森に居たので、王都の状況に気付くのが遅れてしまった。
だがレイが居たのならば、被害など微塵も出なかったはずだ。
因みにこうして会話をしている今も、ドラゴンはブレスを放ち続けている。
それらは全て常時展開させた吸収結界で防いでいるので、意味を成していないが…。
「あの時、アタシは隣国に居たからな。各ギルド支部を、年に1回ずつ直に見に行っているのさ。現在はリアラが張った結界があるから、アタシは王都や王城に結界を張っていなかった。だから気付かなかったんだ。ガイジスから《連絡蝶》を受け取った時は、そりゃ驚いたさ。」
「なるほどね…。」
これもジルディガーの策だったのだろう。
Sランク冒険者すらいない状況を狙った、つまりはそういうことだ。
『ガアァァァアァ!』
「おっ…と、そろそろ倒さないといけないようだな。」
「せっかくだからミアス、倒して良いわよ。」
「そう言ってくれるのはありがたいが、リアラも魔法を試したいんじゃないのか?」
「試したい魔法はもう試したわ。次はミアスがファルに実力を証明する番なのよ。」
「了解。」
そう言うと、ミアスはドラゴンを引き付けて私とレイから離れた。
ミアスに任せたのは、決して倒すのが面倒だったからという理由ではない。
…決して。
王都上空の広範囲に吸収結界を平たく発動させておいたので、ドラゴンがブレスを放ったとしても王都に被害はない。
これでミアスも心置きなく戦えるだろう。
そう思っていると、レイが少し心配そうな声で聞いてきた。
「…正直言って、ミアスには荷が重くないか?」
「そうかしら?」
「彼の魔力総量、リアラの10分の3程度か?」
「…まぁそのくらいね。」
「なら手こずりそうだな。寧ろ1人では厳しい可能性もある。」
現在、本当は10分の1にも満たないほどの差がある。
だが賢者ですら気付けないように、完璧に魔力制御をして偽っていた。
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