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5章 王都上空決戦
第76話 夢想の檻
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「っ…?!」
大規模魔法の魔法陣を、私は《魔刃眼》にて切った。
ジルディガーは何が起こったのか分からない様子。
私にとってはその方がありがたいので、教える義理もないが。
「大規模魔法の威力、効果、見た目…。一体どれほどのものなのか見たかったのだけれど、こればかりは仕方ないわよね。」
一点集中とはいえ、結界で受ければ魔法は軌道が逸れ、王都へと落ちる。
そうなれば被害は拡大するだろう。
それどころか、逸れた魔法がどこに落ちるか分からないが故に、リーゼの居る教会に直撃でもすれば大事だ。
なのでこれが最善であったことに違いは無い。
反射の結界でジルディガーにそっくりそのまま返すことも出来たが、彼の倒し方は既に決めている……。
「……何をした…?」
「敵であるあなたに、教える訳ないでしょう?」
「ははっ……それもそうか…。」
「…そろそろ終わりにしましょう。」
私の雰囲気が変わったことに驚き、ジルディガーは咄嗟に距離を取った。
魔力が渦巻き、強風が吹き荒れ始める。
私は彼が驚いている隙に、強力な結界を張り直す。
《魔法結界──対ジルディガー》という結界を…。
これにより、彼からの攻撃は全て防ぐことが出来るだろう。
先程のような大規模魔法はもう発動する気配がないので、他の場所への攻撃も気にせず行える。
先ずはドラゴンへの対処。
魔法を瞬間移動で飛ばし、ドラゴンの首元にて発動させる。
相手からすれば、急に魔法陣が現れて防御する暇もなく受けなければならない状況に陥る、私の奥の手とも言える技だ。
集中力がいるとはいえ、魔法は必中。
ジルディガーがこちらに向かって魔法を放つが、《対ジルディガー》の結界が容易に防ぐ。
「《瞬間移動》──《空絶風刃》。」
そう唱えると、ドラゴンは首から上と胴体が真っ二つに分かれた。
空間ごと切る魔法である《空絶風刃》が発動したのだ。
ドラゴンは為す術なく、張っていた結界すら容易に破壊され直撃。
「…!?ドラゴンだぞ!?」
「ドラゴンだろうと関係ないわ。私が発動した魔法は、対応可能な結界でない限り防ぐことが出来ない。魔法陣を見て何の魔法かを予測するなんて、ドラゴンであっても難しいことよ。」
「っ……!」
ジルディガーは後退る。
ドラゴンが一撃でやられるとは思ってもいなかったのだろう。
だが目の前で起きていることが事実であり、受け入れたくないであろう現実をすぐさま受け入れた彼は、賞賛に値しよう。
私は彼に向き直り、しっかりと目を合わせた。
「デルフィー大戦にて、王国が犯した罪……。そのことについて、私から謝罪することは出来ない。」
「それはそうだろうね。……たとえ謝罪されたとしても、私は受け入れない。今更謝られても、村の人々の命は返って来ない…!」
大戦にて、王国は彼の村にて起こった一件の真実を歪めた。
王国にとっても、下級兵士が犯した想定外の事態だった可能性もあるが、真実を知った上で歪めたのは事実。
つまり現国王である私の父ヴィライユが、無かったことにするという判断をしたということだ。
ならば王族たる私が謝罪する訳にはいかない。
その行為は、罪を認めるということに他ならないのだから…。
「……あなたには、その怒りを背負っていて欲しい。だからといって野放しにするのは危険すぎる…。」
「……なら殺せばいい。君には私を殺せるだけの力があるだろう。私に怒りを背負ったまま生きて欲しい?それは勝手な君の願いだ。民を守るのが王族の務めと言うのなら、今すぐ私を殺すべきだ……。」
「……。」
この男は分かっている。
復讐をしても意味が無いことを…。
妹の命も、村人の命も、何をしたって返ってこない。
だが彼は復讐を生きる理由にしてしまった。
後戻りなど出来ず、少しでも同郷の者達の無念を晴らすことが出来ればと願っている、そういう男の顔だ。
だが同時に、罪なき人々から命を奪う行為、そんな嫌っている人と同じ事をしているのだということにも気付いている。
故に、誰かに自分を止めて欲しいとも願っているのだ。
彼の心が読めずとも、複雑な感情が入り乱れていると分かる…。
「そうね…。私は王族として、民を守る行動しなければならない。たとえそれが、人殺しであったとしても…。」
私も覚悟を決めよう。
かつては子供だからと暗部の者に任せた。
だが今回は、王族の私が決着をつけるべきだと感じた。
「……これは、私からあなたへのせめてもの手向けよ…。──《夢想の檻》。」
精神系魔法《夢想の檻》。
私の創作魔法であり、あえて魔法の名は付けなかった。
だからこそ、そのままの夢想の檻という名の魔法となっている。
《夢想の檻》に囚われた者は、自分が最も見たいと願っている夢を見る。
こんな自分になりたいという夢や、今は亡き大切な人と共に暮らしている理想の夢など、効果は人によって変わる。
そして魔法から抜け出せなかった者は緩やかに死んでいく。
徐々に身体が衰弱していき、最終的に命尽きるのだ…。
つまり抜け出す方法はある。
それは、自分にとって『大切なもの』を壊すこと。
彼の場合、妹を自身の手で殺さなければならないだろう…。
以前ミアスにこの魔法の全てを話してからかけてみたが、かなり疲れきった表情で起きてきた。
どうやら私の言った通りの効果だったらしく、『二度と俺にはかけないでくれよ…。』と言われてしまった。
ミアスがどのような夢を見たのかは教えてくれなかったが、大切なものを壊すということはかなり辛かったようだ。
そんな魔法をジルディガーにかけた。
彼はその場で一瞬固まると、力が抜けたように目を閉じ、逆さまに地へと落ちて行く。
私は浮遊魔法を彼にかけ、途中で止めた。
魔法にかかった時点で、彼が檻から抜け出せなかった場合は死を意味する。
私が人を殺したということだ…。
けれど後悔はない。
私はすべきことをした、それだけだ。
私は彼に向かって最後になるであろう言葉をかける。
「もしあなたが、自身の命尽きるまでに目覚めることが出来たその時は、もう一度相手をしましょう……。」
大規模魔法の魔法陣を、私は《魔刃眼》にて切った。
ジルディガーは何が起こったのか分からない様子。
私にとってはその方がありがたいので、教える義理もないが。
「大規模魔法の威力、効果、見た目…。一体どれほどのものなのか見たかったのだけれど、こればかりは仕方ないわよね。」
一点集中とはいえ、結界で受ければ魔法は軌道が逸れ、王都へと落ちる。
そうなれば被害は拡大するだろう。
それどころか、逸れた魔法がどこに落ちるか分からないが故に、リーゼの居る教会に直撃でもすれば大事だ。
なのでこれが最善であったことに違いは無い。
反射の結界でジルディガーにそっくりそのまま返すことも出来たが、彼の倒し方は既に決めている……。
「……何をした…?」
「敵であるあなたに、教える訳ないでしょう?」
「ははっ……それもそうか…。」
「…そろそろ終わりにしましょう。」
私の雰囲気が変わったことに驚き、ジルディガーは咄嗟に距離を取った。
魔力が渦巻き、強風が吹き荒れ始める。
私は彼が驚いている隙に、強力な結界を張り直す。
《魔法結界──対ジルディガー》という結界を…。
これにより、彼からの攻撃は全て防ぐことが出来るだろう。
先程のような大規模魔法はもう発動する気配がないので、他の場所への攻撃も気にせず行える。
先ずはドラゴンへの対処。
魔法を瞬間移動で飛ばし、ドラゴンの首元にて発動させる。
相手からすれば、急に魔法陣が現れて防御する暇もなく受けなければならない状況に陥る、私の奥の手とも言える技だ。
集中力がいるとはいえ、魔法は必中。
ジルディガーがこちらに向かって魔法を放つが、《対ジルディガー》の結界が容易に防ぐ。
「《瞬間移動》──《空絶風刃》。」
そう唱えると、ドラゴンは首から上と胴体が真っ二つに分かれた。
空間ごと切る魔法である《空絶風刃》が発動したのだ。
ドラゴンは為す術なく、張っていた結界すら容易に破壊され直撃。
「…!?ドラゴンだぞ!?」
「ドラゴンだろうと関係ないわ。私が発動した魔法は、対応可能な結界でない限り防ぐことが出来ない。魔法陣を見て何の魔法かを予測するなんて、ドラゴンであっても難しいことよ。」
「っ……!」
ジルディガーは後退る。
ドラゴンが一撃でやられるとは思ってもいなかったのだろう。
だが目の前で起きていることが事実であり、受け入れたくないであろう現実をすぐさま受け入れた彼は、賞賛に値しよう。
私は彼に向き直り、しっかりと目を合わせた。
「デルフィー大戦にて、王国が犯した罪……。そのことについて、私から謝罪することは出来ない。」
「それはそうだろうね。……たとえ謝罪されたとしても、私は受け入れない。今更謝られても、村の人々の命は返って来ない…!」
大戦にて、王国は彼の村にて起こった一件の真実を歪めた。
王国にとっても、下級兵士が犯した想定外の事態だった可能性もあるが、真実を知った上で歪めたのは事実。
つまり現国王である私の父ヴィライユが、無かったことにするという判断をしたということだ。
ならば王族たる私が謝罪する訳にはいかない。
その行為は、罪を認めるということに他ならないのだから…。
「……あなたには、その怒りを背負っていて欲しい。だからといって野放しにするのは危険すぎる…。」
「……なら殺せばいい。君には私を殺せるだけの力があるだろう。私に怒りを背負ったまま生きて欲しい?それは勝手な君の願いだ。民を守るのが王族の務めと言うのなら、今すぐ私を殺すべきだ……。」
「……。」
この男は分かっている。
復讐をしても意味が無いことを…。
妹の命も、村人の命も、何をしたって返ってこない。
だが彼は復讐を生きる理由にしてしまった。
後戻りなど出来ず、少しでも同郷の者達の無念を晴らすことが出来ればと願っている、そういう男の顔だ。
だが同時に、罪なき人々から命を奪う行為、そんな嫌っている人と同じ事をしているのだということにも気付いている。
故に、誰かに自分を止めて欲しいとも願っているのだ。
彼の心が読めずとも、複雑な感情が入り乱れていると分かる…。
「そうね…。私は王族として、民を守る行動しなければならない。たとえそれが、人殺しであったとしても…。」
私も覚悟を決めよう。
かつては子供だからと暗部の者に任せた。
だが今回は、王族の私が決着をつけるべきだと感じた。
「……これは、私からあなたへのせめてもの手向けよ…。──《夢想の檻》。」
精神系魔法《夢想の檻》。
私の創作魔法であり、あえて魔法の名は付けなかった。
だからこそ、そのままの夢想の檻という名の魔法となっている。
《夢想の檻》に囚われた者は、自分が最も見たいと願っている夢を見る。
こんな自分になりたいという夢や、今は亡き大切な人と共に暮らしている理想の夢など、効果は人によって変わる。
そして魔法から抜け出せなかった者は緩やかに死んでいく。
徐々に身体が衰弱していき、最終的に命尽きるのだ…。
つまり抜け出す方法はある。
それは、自分にとって『大切なもの』を壊すこと。
彼の場合、妹を自身の手で殺さなければならないだろう…。
以前ミアスにこの魔法の全てを話してからかけてみたが、かなり疲れきった表情で起きてきた。
どうやら私の言った通りの効果だったらしく、『二度と俺にはかけないでくれよ…。』と言われてしまった。
ミアスがどのような夢を見たのかは教えてくれなかったが、大切なものを壊すということはかなり辛かったようだ。
そんな魔法をジルディガーにかけた。
彼はその場で一瞬固まると、力が抜けたように目を閉じ、逆さまに地へと落ちて行く。
私は浮遊魔法を彼にかけ、途中で止めた。
魔法にかかった時点で、彼が檻から抜け出せなかった場合は死を意味する。
私が人を殺したということだ…。
けれど後悔はない。
私はすべきことをした、それだけだ。
私は彼に向かって最後になるであろう言葉をかける。
「もしあなたが、自身の命尽きるまでに目覚めることが出来たその時は、もう一度相手をしましょう……。」
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