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3章 異魔眼と瞬滅

第36話 異変

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──翌日──



普段とは少し違う夜になっていた。
いつも来ているドレスではなく、容姿をさらに引きたてるものとなっている。
朝は普通に過ごしていたが、誕生祭に向けての着替えだった。
無論、「普通に」ではなく朝からも色々と動いていたのだが。



「終わりましたよ。レイアネス第二王女殿下の御披露目の間、堂々としていて下さいね、リアラ殿下。」

「ええ。だけど今日はレーネス姉様が主役よ。あまり目立ってしまうのは良くないわ。」

「そうですね。」



この世界では15歳で成人となる。
王族は6歳から15歳まで、3年毎に御披露目がされる。
今日は第二王女レイアネスの15歳の誕生祭。
つまり成人式も兼ねている。



「あら、リアラじゃない。元気にしていたかしら?」

「ユラ姉様、お久しぶりです。」

「ふふっ。昨年以来かしら?」

「はい。昨年の私の誕生祭の時以来です。」

「時が経つのも早いものね。」



誕生祭が行われるホール前で、第一王女であるユラニに会った。
そして第二王子であるヴィルガも歩いてきた。



「お久しぶりですね、ユラニ姉さん。それにリアラも。」

「お久しぶりです、ヴィルガ兄様。」

「久しぶりね。」



そうして3人で談笑をしていると、ホール内から声が掛かった。



「ヴィルガ第二王子殿下、ユラニ第一王女殿下、リアラ第三王女殿下が御到着なされました!」



扉が開いていき、拍手の音が聞こえてくる。
それぞれの護衛と共に、3人はホールの中央を歩いていく。



「人が多いわね。」

「国中の貴族が集まりますからね。」

「そうなのだけれど。人が多いのはあまり好まないのよね…。」

「我慢するしかありませんよ、姉様。」

「そうね……。でも慣れないわぁ。」



そう話しながらも歩みを進め、国王であり父であるヴィライユと王妃である母のレーファルに一礼をし、用意された座席へと座る。
それぞれの椅子は間隔をあけて置かれていた。
私の席は一番端だ。



「はぁ……。」

「どうしましたか?早々に溜息などついて。」



隣に座るユラニには聞こえない声で、ミアスが話しかけてくる。
公の場なので、敬語を使うようにしていた。



「どんな場面でも、貴族は貴族なのね。自分の事しか考えていないわ。」

「それはどういうことでしょうか。」

「そのままの意味よ。皆、レーネス姉様のお気に入りになりたいみたい。」

「成程。レイアネス様はまだ婚約をされておられませんから。その座を狙いたいのですね。」

「そういう事よ。……?」

「どうかなさいましたか?」 

「いいえ……何でもないわ。」



ふと、《魔力感知ディテクション》に反応があった気がしたのだが、直ぐに消えてしまった。



(探っておくべきかしら?いいえ…今は待ちましょうか。)
 


そう思い、少し気にしつつ何も無かった事にしておいた。



「レイアネス第二王女殿下の御成り!」



その声と共に、扉が開きレイアネスが入ってきた。
「わああぁ!」と歓声が上がる。
レイアネスはその歓声の中を歩いていき、両陛下に一礼をした後、国王の左隣の席へとついた。



「レイアネス、今日は一段と綺麗ね。」

「ありがとうございます、ユラ姉様。」



隣から姉様達の会話が聞こえてきたが、気にしないで座っていた。
そして国王ヴィライユが、集まった者達に向けて話を始める。



「今宵は、我が娘であるレイアネスの成人式を兼ねた誕生祭に集まってくれた事を、心より感謝する。そして──」



そうして、第二王女レイアネスの誕生祭が幕を開けた。
言うまでもなく、貴族達からの挨拶祭りだった。
国王・王妃→レイアネス→・・・
こんな風に、順番に貴族達が挨拶をしていく。
退屈で面倒だと思いながらも、リアラは相手をしていた。

大体の貴族達からの挨拶が終わり、私はヴィライユに一声掛けてから、ミアスと共に外へ出た。



「はぁ~。やっと終わったわ。対応していたら、せっかく用意された食事の食べる時間が減ってしまったわ。」

「まぁ仕方ないさ。これも王族の務めだからな。」

「それはそうだけど……。」

「そう言えば…。さっき…と言ってもだいぶ時間は経っているが、魔力感知にでも異変があったのか?」

「まぁね。ミアスにはお見通しだったのね。」

「当たり前だ。何年隣に居ると思ってる。」

「そうだったわね。……魔力感知に、一瞬だけど反応があったの。直ぐに消えたから、正直何があったのか分からなくて。」

「そうだったのか。バジュスの事もある。気を付けるに越したことはない。」

「ええ。その通りだわ。」



途端に、暗くなっていた空が明るく感じた。
二人は上を見上げ、言葉を失った。

そこには──



王都を包み込む程の、巨大な魔法陣が浮かび上がっていたのだった。
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