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3章 異魔眼と瞬滅
第32話 必然的な協力
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現れた男にバジュスは連れて行かれ、部屋には私とミアスの2人のみとなった。
「逃げられたわね。」
「ああ、逃げられたな。」
「たけどもう彼は何も出来ない。王族暗殺未遂……これだけ派手にすれば、暗殺ではなく殺人未遂ね。」
「そうだな。だが公にするのは得策とは言えない。」
「ええ。侯爵の者に手配がかかっていると国民が知れば、混乱が起きるでしょうね。」
民の混乱は避けたい……そう考えた私達は、とある人に報告へと向かった。
「ヴィライユ陛下、いらっしゃいますか?」
私達が向かった場所……
無論、それは国王の執務室だった。
《瞬間移動》で部屋の前まで移動し、戸をノックしてから声をかける。
「リアラか。入りなさい。」
「「はい。失礼します。」」
国王ヴィライユは、真剣な面持ちだった。
つい先程起きた事を、既に理解しているのだろうかと、そんな事を考えてしまう。
先に口を開いたのはヴィライユだった。
「ミアスも居たのか。まぁ側近だから当たり前か。今は私とリルク、そしてお前達しか居ない。故に普通でいいぞ。」
「承知いたし……分かりました、お父様。」
「うむ。それで、……聞こうか、リアラ。」
「はい。」
そうして、先程起きたバジュスについての報告をした。
ヴィライユの顔はますます深刻になっていくように見えた。
「取り逃してしまい、申し訳ございません。」
ヴィライユにミアスが謝罪した。
「気にするな。一つ聞きたいのだが、バジュス候を攫った者は、お前達でも手が余るような相手なのか?」
「そうですね……私とミアスの2人で互角、或いは負けるでしょう。」
「それ程なのか…。」
「はい。魔力量が桁違いでした。それと…」
「どうかしたか?」
「その……今回の魔法使いについて、調査してもいいでしょうか?」
「それは構わないが、バジュス候の件を含め大変ではないか?」
ヴィライユが言っている事は当然の心配だ。
だが、先の魔法使いにバジュスを監視するために発動していた魔法が、解除されてしまっていた。
故に、余裕が出来ていた。
「問題ありません。バジュス候は王族殺人未遂を犯しましたし、証拠も残してあります。レアル殿の調査の方も順調に進んでいるようですから、監視は不要になる…という事です。」
「そうか。ふむ……その魔法使いについてなのだが。」
「はい。」
「暗部も使って調査させようと思う。手に入れた情報はリアラにまわそう。」
「ありがとうございます。」
「うむ。これからも頼りにしているぞ。一先ず無事で良かった。くれぐれも、彼等には注意するのだぞ。」
「勿論、警戒を緩めないように注意します。では、私達はこれで。」
「おやすみ、リアラ。」
「おやすみなさい、お父様。」
《瞬間移動》を発動させる前に私は振り返り、ヴィライユに告げた。
「お父様。協力ありがとうございます。暗部の人に、『潜入調査と監視系統魔法は使わないように。』と伝えておいて下さい。」
その後に小声で「調査中に死にたくなければ……。」と言ったのを、3人は聞き逃さなかった。
何故と聞き返さず、リアラの言葉に従う事にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
リアラが戻った後、王室ではヴィライユとマーリルクが話し合っていた。
「あの言葉……リアラはかの魔法使いに何を感じたのだろうな。」
「さあな。だがただならぬ感じがする。」
「それには同意するぞ。」
「なぁ、ヴィライユ。」
「どうした?」
「暗部を使い協力すると言った時、リアラが薄ら笑いを浮かべたような気がするんだが…。」
「まさか……」
「ああ。リアラは始めから暗部の協力を得る為に、報告へ来たのかも知れないな。」
「一体何処まで考えているんだろうな……。」
「私でもあの2人だけは読めない…。不気味な程にな。」
リアラの思い通りに動いていたと気付いた2人は、肩を少し震わせたのだった──
「逃げられたわね。」
「ああ、逃げられたな。」
「たけどもう彼は何も出来ない。王族暗殺未遂……これだけ派手にすれば、暗殺ではなく殺人未遂ね。」
「そうだな。だが公にするのは得策とは言えない。」
「ええ。侯爵の者に手配がかかっていると国民が知れば、混乱が起きるでしょうね。」
民の混乱は避けたい……そう考えた私達は、とある人に報告へと向かった。
「ヴィライユ陛下、いらっしゃいますか?」
私達が向かった場所……
無論、それは国王の執務室だった。
《瞬間移動》で部屋の前まで移動し、戸をノックしてから声をかける。
「リアラか。入りなさい。」
「「はい。失礼します。」」
国王ヴィライユは、真剣な面持ちだった。
つい先程起きた事を、既に理解しているのだろうかと、そんな事を考えてしまう。
先に口を開いたのはヴィライユだった。
「ミアスも居たのか。まぁ側近だから当たり前か。今は私とリルク、そしてお前達しか居ない。故に普通でいいぞ。」
「承知いたし……分かりました、お父様。」
「うむ。それで、……聞こうか、リアラ。」
「はい。」
そうして、先程起きたバジュスについての報告をした。
ヴィライユの顔はますます深刻になっていくように見えた。
「取り逃してしまい、申し訳ございません。」
ヴィライユにミアスが謝罪した。
「気にするな。一つ聞きたいのだが、バジュス候を攫った者は、お前達でも手が余るような相手なのか?」
「そうですね……私とミアスの2人で互角、或いは負けるでしょう。」
「それ程なのか…。」
「はい。魔力量が桁違いでした。それと…」
「どうかしたか?」
「その……今回の魔法使いについて、調査してもいいでしょうか?」
「それは構わないが、バジュス候の件を含め大変ではないか?」
ヴィライユが言っている事は当然の心配だ。
だが、先の魔法使いにバジュスを監視するために発動していた魔法が、解除されてしまっていた。
故に、余裕が出来ていた。
「問題ありません。バジュス候は王族殺人未遂を犯しましたし、証拠も残してあります。レアル殿の調査の方も順調に進んでいるようですから、監視は不要になる…という事です。」
「そうか。ふむ……その魔法使いについてなのだが。」
「はい。」
「暗部も使って調査させようと思う。手に入れた情報はリアラにまわそう。」
「ありがとうございます。」
「うむ。これからも頼りにしているぞ。一先ず無事で良かった。くれぐれも、彼等には注意するのだぞ。」
「勿論、警戒を緩めないように注意します。では、私達はこれで。」
「おやすみ、リアラ。」
「おやすみなさい、お父様。」
《瞬間移動》を発動させる前に私は振り返り、ヴィライユに告げた。
「お父様。協力ありがとうございます。暗部の人に、『潜入調査と監視系統魔法は使わないように。』と伝えておいて下さい。」
その後に小声で「調査中に死にたくなければ……。」と言ったのを、3人は聞き逃さなかった。
何故と聞き返さず、リアラの言葉に従う事にした。
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リアラが戻った後、王室ではヴィライユとマーリルクが話し合っていた。
「あの言葉……リアラはかの魔法使いに何を感じたのだろうな。」
「さあな。だがただならぬ感じがする。」
「それには同意するぞ。」
「なぁ、ヴィライユ。」
「どうした?」
「暗部を使い協力すると言った時、リアラが薄ら笑いを浮かべたような気がするんだが…。」
「まさか……」
「ああ。リアラは始めから暗部の協力を得る為に、報告へ来たのかも知れないな。」
「一体何処まで考えているんだろうな……。」
「私でもあの2人だけは読めない…。不気味な程にな。」
リアラの思い通りに動いていたと気付いた2人は、肩を少し震わせたのだった──
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