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シーズン5 アーム戦役
第5ー7話 優しき乙女の花言葉
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友とは必要なものだ。
自身の誤りを指摘してくれる存在や、苦しい時に支えてくれる存在は頼りになる。
泣き叫んでも終わる事のない苦痛でも、友がいればいくらかは楽に感じるものだ。
エヴァの苦痛を解放したジェイクという友は天上界に来ても友であり続けた。
虎白から尋ねられた右目への疑問に、たまらず逃げ出したエヴァはジェイクとホーマーの元へと戻っていた。
青ざめた表情で黙り込むエヴァは、関わり慣れていない日本人に対して恐怖を覚えていた。
また過去の様な惨劇が始まるのではないかと。
しばらく黙り込んでいると、虎白が心配して追いかけてきたのだ。
ジェイクはホーマーと顔を見合わせて、エヴァを守ろうと一歩前に出た。
「どうしたんだ?」
「下がってろフォックス。 エブにそれを聞くな」
ジェイクはつり上がった目つきを更に強張らせている。
何があったのかわからずに困惑している虎白は怯えているエヴァを見ながら、大きく息を吸い込んだ。
落ち着いた表情を取り戻すと、エヴァに向かって手を差し出した。
「その右目がお前にとって呪縛となっているのなら、俺はそれを包み込める存在になりたい。 お前はもう仲間だ。 受け入れさせてくれ」
そう優しい言葉をかけてもエヴァにとっては怖くてたまらなかった。
静かに震えているエヴァを哀れんだ目で見ている虎白の着物の胸ぐらを勢い良く掴んだジェイクは、顔を接近させて睨みつけている。
すると、虎白は小さく何度かうなずくとため息をついた。
ジェイクの手を力強く掴み返すと、振り払った。
「わかった。 エヴァがまだ俺達を信用できないなら構わない。 だが俺は頼りにしている。 白陸のためによろしくな」
虎白はそれだけ述べると、立ち去った。
その後もエヴァは元気を取り戻す事なく静かに住居の建設を手伝ったのだった。
一方で城へと戻った虎白は中庭で弓術の鍛錬をしているロキータを見ながら、隣に座っている竹子とお茶を飲みながら話していた。
内容はエヴァの事だ。
彼女にはどうしても話したくない過去があると、説明している虎白の話しを悲しげに聞いている竹子は上品に両手で湯呑を持ちながらお茶をすすった。
「お気の毒に・・・でも私達は気にしないけれど、本人次第だものね」
「ああ、俺達に話す気になるまで待ってやろう」
いつもの様に縁側に腰掛けている虎白は中庭から見える空を見上げていた。
どんな人間にも様々な過去があり、それを背負って生きているのだと実感した虎白は夢への想いをさらに強めている。
だからこそ天上界では平和に過ごしてほしいのだと。
一度ならず二度も苦痛に耐える必要はないのだと考える虎白は、戦争のない天上界を作り、平和な世の中を守ろうと心の中で再び誓った。
すると、縁側で仲睦まじく話している虎白と竹子の隣にレミテリシアが現れると、隣に座ってお茶を飲み始めた。
「何か手伝える事はないかな? 竹子、私を使ってはくれないか?」
姉の討ち死にで誘拐の様に天上界へ連れてこられたレミテリシアも、辛い過去を乗り越えようと生きていた。
そんな彼女の顔を見て優しく微笑んだ虎白は竹子に何か仕事はないのかと尋ねた。
すると細い綺麗な顎に手を当てて、少し考えながら笑みを浮かべた。
「でしたら、私とお話をしていただけませんか? あなたの事をもっと良く知りたいです」
「私もみんなをもっと知りたい。 姉さんが認めた男に付き従うみんなを」
そう話したレミテリシアは竹子と共に、白陸に加わった仲間達に会いに向かった。
縁側に残っている虎白はロキータと尚香を見ながら微笑んでいた。
ロキータの心は未だに傷ついているが、尚香の近くにいる時は灰色の尻尾を左右に振りながら楽しそうにしている。
虎白はそれだけでも安心できたのだ。
やがて縁側で横になった虎白はあくびをして、体を丸めると昼寝を始めた。
その光景を見て笑う尚香はロキータの頭をなでている。
今日も平和な白陸というわけだ。
一方で竹子の案内で白陸の面々に会いに向かっているレミテリシアが最初に訪れたのは、夜叉子と海賊娘の琴が楽しげに漫談している広間だ。
メテオ海戦で父が戦死した事で中間地点の危険な海に片道切符で向かった琴だったが、運命的な出会いをきっかけに白陸入りを果たした。
竹子がレミテリシアを改めて紹介すると、琴は複雑な胸の内を明かした。
「お父が殺されて、あんたのお姉さんには恨みしかないんや・・・でもあんただって大切な姉さんやったんよな」
「その通りだ・・・いつだって頼りになったんだ」
悲しげな表情でうなずいている琴は隣にいる夜叉子の顔を見た。
下唇を噛み締めて、溢れそうな涙をなんとか堪えている姿はあまりにも切ない。
すると夜叉子は静かに二人に花を手渡した。
「旅立ちって意味の花言葉があるんだよ」
手渡した花はイカリソウという花だ。
船のいかりに似ている形をしている薄紫の花を手渡すと、旅立った者達を忘れるなと話し始めた。
自身も過去に元夫をこの手で殺したという壮絶な体験をしている。
「旅立った者達のために生きないとね、私は虎白を信じてもう一度生きようと思っているよ」
生きる事にも天上界にも絶望していた夜叉子の前に突如として現れた神族の狐は、まるで子供の様に瞳を輝かせて夢を語る。
戦争のねえ天上界を作るんだという誰が聞いても鼻で笑う様な事を平気で話す虎白に対して、夜叉子は自身の醜い過去を清算したいと思った。
夜叉子自身もまだ完全に過去を清算できたわけではないが、虎白の影響か少しずつ前を向けていた。
目の前にいる琴という海賊娘に同情してやれるぐらいに。
そして夜叉子が手渡したイカリソウにはもう一つの花言葉がある。
それは「君を離さない」という意味だ。
夜叉子が何を思ってこの花を手渡しのか、真意は彼女の胸の中にあるが、琴とレミテリシアは旅立った者を忘れずに歩みを進めようと決心できたのだった。
自身の誤りを指摘してくれる存在や、苦しい時に支えてくれる存在は頼りになる。
泣き叫んでも終わる事のない苦痛でも、友がいればいくらかは楽に感じるものだ。
エヴァの苦痛を解放したジェイクという友は天上界に来ても友であり続けた。
虎白から尋ねられた右目への疑問に、たまらず逃げ出したエヴァはジェイクとホーマーの元へと戻っていた。
青ざめた表情で黙り込むエヴァは、関わり慣れていない日本人に対して恐怖を覚えていた。
また過去の様な惨劇が始まるのではないかと。
しばらく黙り込んでいると、虎白が心配して追いかけてきたのだ。
ジェイクはホーマーと顔を見合わせて、エヴァを守ろうと一歩前に出た。
「どうしたんだ?」
「下がってろフォックス。 エブにそれを聞くな」
ジェイクはつり上がった目つきを更に強張らせている。
何があったのかわからずに困惑している虎白は怯えているエヴァを見ながら、大きく息を吸い込んだ。
落ち着いた表情を取り戻すと、エヴァに向かって手を差し出した。
「その右目がお前にとって呪縛となっているのなら、俺はそれを包み込める存在になりたい。 お前はもう仲間だ。 受け入れさせてくれ」
そう優しい言葉をかけてもエヴァにとっては怖くてたまらなかった。
静かに震えているエヴァを哀れんだ目で見ている虎白の着物の胸ぐらを勢い良く掴んだジェイクは、顔を接近させて睨みつけている。
すると、虎白は小さく何度かうなずくとため息をついた。
ジェイクの手を力強く掴み返すと、振り払った。
「わかった。 エヴァがまだ俺達を信用できないなら構わない。 だが俺は頼りにしている。 白陸のためによろしくな」
虎白はそれだけ述べると、立ち去った。
その後もエヴァは元気を取り戻す事なく静かに住居の建設を手伝ったのだった。
一方で城へと戻った虎白は中庭で弓術の鍛錬をしているロキータを見ながら、隣に座っている竹子とお茶を飲みながら話していた。
内容はエヴァの事だ。
彼女にはどうしても話したくない過去があると、説明している虎白の話しを悲しげに聞いている竹子は上品に両手で湯呑を持ちながらお茶をすすった。
「お気の毒に・・・でも私達は気にしないけれど、本人次第だものね」
「ああ、俺達に話す気になるまで待ってやろう」
いつもの様に縁側に腰掛けている虎白は中庭から見える空を見上げていた。
どんな人間にも様々な過去があり、それを背負って生きているのだと実感した虎白は夢への想いをさらに強めている。
だからこそ天上界では平和に過ごしてほしいのだと。
一度ならず二度も苦痛に耐える必要はないのだと考える虎白は、戦争のない天上界を作り、平和な世の中を守ろうと心の中で再び誓った。
すると、縁側で仲睦まじく話している虎白と竹子の隣にレミテリシアが現れると、隣に座ってお茶を飲み始めた。
「何か手伝える事はないかな? 竹子、私を使ってはくれないか?」
姉の討ち死にで誘拐の様に天上界へ連れてこられたレミテリシアも、辛い過去を乗り越えようと生きていた。
そんな彼女の顔を見て優しく微笑んだ虎白は竹子に何か仕事はないのかと尋ねた。
すると細い綺麗な顎に手を当てて、少し考えながら笑みを浮かべた。
「でしたら、私とお話をしていただけませんか? あなたの事をもっと良く知りたいです」
「私もみんなをもっと知りたい。 姉さんが認めた男に付き従うみんなを」
そう話したレミテリシアは竹子と共に、白陸に加わった仲間達に会いに向かった。
縁側に残っている虎白はロキータと尚香を見ながら微笑んでいた。
ロキータの心は未だに傷ついているが、尚香の近くにいる時は灰色の尻尾を左右に振りながら楽しそうにしている。
虎白はそれだけでも安心できたのだ。
やがて縁側で横になった虎白はあくびをして、体を丸めると昼寝を始めた。
その光景を見て笑う尚香はロキータの頭をなでている。
今日も平和な白陸というわけだ。
一方で竹子の案内で白陸の面々に会いに向かっているレミテリシアが最初に訪れたのは、夜叉子と海賊娘の琴が楽しげに漫談している広間だ。
メテオ海戦で父が戦死した事で中間地点の危険な海に片道切符で向かった琴だったが、運命的な出会いをきっかけに白陸入りを果たした。
竹子がレミテリシアを改めて紹介すると、琴は複雑な胸の内を明かした。
「お父が殺されて、あんたのお姉さんには恨みしかないんや・・・でもあんただって大切な姉さんやったんよな」
「その通りだ・・・いつだって頼りになったんだ」
悲しげな表情でうなずいている琴は隣にいる夜叉子の顔を見た。
下唇を噛み締めて、溢れそうな涙をなんとか堪えている姿はあまりにも切ない。
すると夜叉子は静かに二人に花を手渡した。
「旅立ちって意味の花言葉があるんだよ」
手渡した花はイカリソウという花だ。
船のいかりに似ている形をしている薄紫の花を手渡すと、旅立った者達を忘れるなと話し始めた。
自身も過去に元夫をこの手で殺したという壮絶な体験をしている。
「旅立った者達のために生きないとね、私は虎白を信じてもう一度生きようと思っているよ」
生きる事にも天上界にも絶望していた夜叉子の前に突如として現れた神族の狐は、まるで子供の様に瞳を輝かせて夢を語る。
戦争のねえ天上界を作るんだという誰が聞いても鼻で笑う様な事を平気で話す虎白に対して、夜叉子は自身の醜い過去を清算したいと思った。
夜叉子自身もまだ完全に過去を清算できたわけではないが、虎白の影響か少しずつ前を向けていた。
目の前にいる琴という海賊娘に同情してやれるぐらいに。
そして夜叉子が手渡したイカリソウにはもう一つの花言葉がある。
それは「君を離さない」という意味だ。
夜叉子が何を思ってこの花を手渡しのか、真意は彼女の胸の中にあるが、琴とレミテリシアは旅立った者を忘れずに歩みを進めようと決心できたのだった。
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