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シーズン4 メテオ海戦

第4−10話 誉れ高き大王の意地

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友奈とメルキータが白陸本国で苛烈な攻防戦を行っている一方で虎白達はアレクサンドロス大王の指揮下で冥府軍への反撃を開始しようとしていた。


集結地点へ辿り着いた虎白はその戦力の少なさに言葉を失っている。


隣で口元に滑らかな手を運んで同じく言葉を失う竹子は冥府軍の侵攻を受けて天上議会で話し合っていた援軍召集に参加できていない諸国を不憫に思いつつも心のどこかで葛藤すらしていた。


綺麗な唇をそっと開けて発した言葉を聞いた虎白も低い声で唸っている。



「み、皆さんは本国の防衛で忙しいのね。 私達も・・・」



竹子の言葉に唸っている虎白は危険を背負ってまでこの場に来た意味を考えていた。


今頃、友奈とメルキータが必死に戦っているというのに彼女らの援護をする事なく他国の援護とは。


黙り込んでいる虎白は周辺諸国の様に召集に応じる必要がなかったのではと自問自答している。


するとそこに黄金の鎧に身を包んで兜の上から風に優雅になびかせている赤い鶏冠を見せびらかすかの様に威風堂々と馬にまたがって歩いてくる征服王の姿があった。



「なんだこれは・・・たったのこれだけか? 一万にも満たないぞ。」
「おいアレクサンドロスよお。 ここはゼウス様に援軍を頼んだ方がいいんじゃねえか?」



現時点で攻撃を受けているのは南側領土だけだ。


本部都市であるオリュンポスに敵は達していないこの状況でゼウスの援軍を求めるのは当然の事。


そう話している虎白を馬上から嫌悪した目で睨みつけている偉大なる征服王は唾でも吐き捨てるほどの剣幕で罵倒し始めた。



「貴様も神族だったのではないか? 何を甘えた事を言っているんだ。 天王様に出ていただく必要がどこにある? 我が生きている以上は我に従え。」



甘えるなと強い口調で話しているアレクサンドロス大王は僅かに集まった周辺国の援軍を束ねると自身のマケドニア軍を先頭に冥府軍との戦いに向かおうとしている。


一方でゼウスの援軍を求めない事に不満な虎白は天空を見上げていた。


神々の王にして天上界の王であるゼウスは民が蹂躙されているこの状況をどう思っているのだろうか。


すると雷鳴と共に青い閃光の稲妻が虎白の目の前に落ちてきた。


現れたゼウスは気まずそうな表情をして頭をかいている。



「すまんな鞍馬よ。 アレクサンドロスのやつがまるで言う事を聞かなくてな・・・」
「て、天王様!? 何故こんな場所に? 危ないのでオリュンポスへお帰りください!!」



アレクサンドロス大王はゼウスに対して狂信的なまでの忠誠心があり、自身が任された南側領土の防衛にギリシア神族を出したくなかったのだ。


征服王ことアレクサンドロス大王はギリシア人である事からゼウス達への崇拝は周辺国の国主とは比べ物にならない。


しかし未曾有の危機であるこの現状でつまらない事を言うなと凄まじい剣幕で征服王を睨んでいる日本神族はゼウスの参戦を求めた。


するとアレクサンドロス大王は虎白の胸ぐらを掴むと激しい口調で怒鳴り始めたではないか。



「貴様とて守りたい存在のために戦っているのだろう!? 我も同じだ!!」
「か弱い民を守る俺と強力な神族を援軍に呼びたがらねえお前とは意味がまるで違う。 てめえは自分が有能って事を天王に見せたいんだろ?」




その言葉は図星だったのか、大王は拳を振り上げると虎白の女の様にか細い顔へ振り抜こうとしていた。


すると竹子が征服王の腕を掴むと、鬼の形相で睨みつけているではないか。


日頃は温厚で優しい竹子が見せない表情をしているのだ。


屈強な肉体を誇るアレクサンドロス大王の腕を白くて小さい手に掴まれてぴくりとも動かなくなっていた。



「お止めください。 無礼でありましょう。」
「くっ!? 小生意気な娘が・・・いいか、民を守りたい気持ちは変わらん。 だがゼウス様の力をお借りするほどではないと言っているのだ!!」
「戦いを前にご自身の誇りを我々に押し付けないでください。 我らの皇帝を殴る様なら白陸へ帰還致します。」



鬼の形相で睨む竹子と胸ぐらを掴まれたまま、睨みつける虎白の威圧感に負けたアレクサンドロス大王は一度手を放したが意見は変わらない様子だ。


どうしてもゼウスの援軍を求めたがらない征服王は馬にまたがると「来たくなければ来なくていい」とだけ話すと、マケドニア軍を引き連れて先へ進んだ。


一方で気まずそうなゼウスは白い髭をわしわしと触りながら虎白の顔を見ている。



「すまんな鞍馬・・・あんなやつだがわしを大切に思っているのだ。 わしはあいつを死なせたくない・・・力を貸してやってくれ。」
「うーん・・・白陸だって攻撃されているからなあ・・・でもあいつだけに戦わせて死なせるのも気分悪いなあ。」



考えている虎白は馬にまたがると、アレクサンドロス大王が進んでいった方角を見ていた。


白陸本国も気になるがアレクサンドロス大王を見殺しにするという事も後味が悪いというもの。


馬上で静かに目をつぶった虎白は傲慢な物言いをする征服王を思い浮かべている。


そして目を開けると竹子や仲間の顔を見た。



「白陸にはメルキータの宮衛党が大勢残っている。 それにいつまでも防衛戦をしていても勝機はない。 ここは腹立つ大王様と共に敵の主力を粉砕する。 みんなついてきてくれるか?」



まるで子供を見守る父親の様な優しい笑みを浮かべているゼウスは安心したのか、姿を雷に変えて飛び立った。


自身の誇りにかけて戦っているアレクサンドロス大王のゼウスを呼びたくないという気持ちに困惑しながらも孤独に冥府軍へ挑む姿勢は見上げたものだ。


虎白は大切な仲間を引き連れて偉大なる勇者の後を追いかけた。
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