69 / 205
シーズン4 メテオ海戦
第4−9話 今となっては味方で国防軍
しおりを挟む
天上門付近の領土で起きた大虐殺は虎白の耳にも直ぐに入った。
突然の急報に食べていた白米の箸が止まると竹子達と顔を見合わせている。
和やかな食卓が凍りつき一同の箸が止まる中で虎白は慌てて立ち上がると刀を着物の帯に差した。
「こ、虎白様!? 既に国主と兵達は討ち死に致しました・・・」
「援軍は間に合わなかったのか・・・」
天上議会で話していた内容は後方の領地の軍隊が援軍に行くという話しであった。
それに従い虎白も直ぐに援軍として出陣しようとしたが、既に国主と兵は壊滅して冥府軍は次の国へと攻撃を始めていると伝令は話した。
血を吐くかの様な剣幕で話している伝令に竹子が水を飲ませると一同は深刻な表情のまま、食事をかき込んで足早に部屋を出ていった。
鎧兜を着始める虎白は傍らで同じ様に準備を行う竹子と話している。
「どうなってんだ・・・」
「白陸は出せても二千五百名かな・・・」
「全員連れて行く。 国の守りは友奈とメルキータの宮衛党に任せるしかねえ。」
そう話すと刀を鎧の帯に差して部屋を蹴破る勢いで出ていった。
白陸軍二千五百名を召集した虎白が馬にまたがって出陣しようとした時だ。
城の城門の前に立っているのはアレクサンドロス大王のマケドニア兵ではないか。
何事かと眉間にしわを寄せた虎白が近づいていくと大王からの言付けを話し始めた。
「白陸は小国だから我が大王の軍に加われと。」
「わかった直ぐに向かうと伝えてくれ。」
南側領土の最高権力者であるアレクサンドロス大王は未だに冥府軍からの襲撃を受けていない小国の戦力を呼び出して配下に加えようとしている。
それに従った虎白は竹子達と共にマケドニア王国へ向かった。
白陸の守りを担当する友奈とメルキータの不安げな表情が彼らを見送った。
突然の冥府軍の襲来によって次々に小さな国が潰されていく中で虎白の白陸は比較的天上門から遠方にあった事から守りを固める時間が与えられた。
友奈とメルキータは死に物狂いとなって防御態勢を整えさせた。
元ツンドラ帝国の民達を率いて冥府軍を待ち構える二人は城壁へと登ると、硝煙渦巻く天上界の変わり果てた姿を見て絶句している。
「この世の終わりだ・・・まるでテッド戦役だ・・・」
「私達の元へも来るだろうね・・・怖いなあ・・・」
友奈がそうつぶやくとメルキータもうなずいている。
慌ただしく守りを固める白陸帝国の命運はメルキータが共に連れてきたツンドラの民に託されたも同然だ。
アレクサンドロス大王に召集されて戦力を連れて行った虎白の行動はある意味で仕方のない事であった。
命令に従った虎白も状況が飲み込めないまま、出陣してしまった。
城壁から見える惨劇の全貌をまだ見ていない皇帝と仲間達の助力は期待できない以上は宮衛党の戦力だけで守る他なかった。
怯えた様子で遠くで行われている惨劇を見ている友奈の肩に手を置くとメルキータは力強い眼差しでうなずいた。
「かつてツンドラは防御力があると諸国から恐れられて攻め込まれずにいた。 本来城を攻め込むには十倍の戦力が必要とされる。 ここにいる元ツンドラ兵の数を考えれば守れるさ。」
城壁から見下ろすと、虎白の北側領土の遠征時に投降した元ツンドラ兵達が武器を手にしている。
狂気のノバ皇帝亡き今では彼らが忠誠を誓うべき相手はメルキータのみであった。
そしてノバが飼い慣らしていたノバガードの生き残りも存在して今では「メルガード」と呼ばれている。
十分なほどに戦力が残っていると力強くうなずいたメルキータがふと城壁の向こうにある景色に目をやると砂煙を上げて接近する黒い旗が見えた。
「友奈!! 来たよ!!」
「ど、どうしよ・・・戦うしかないよね。 刀とか触った事ないけど。」
普通そうで普通ではない友奈だが、戦闘に参加した経験はない。
乱戦の中を走り抜けた経験はあっても白くて綺麗な手で誰かを殺した事はないというわけだ。
するとメルキータが友奈に軍配を手渡した。
「既に兵士達には防御設備の準備をさせた。 敵が接近した場所に友奈が城壁から攻撃の合図を出してほしい。」
「メルキータはどうするの!?」
「私はニキータと共に前線で戦う。」
不幸中の幸いというものか、建国間もない白陸は城の僅かな城下町があるがその全てを城壁で囲んでいた。
そして入り口の門は一つだけという砦の様な作りとなっている。
メルキータ指揮下の宮衛党こと元ツンドラ兵達の戦力は三十万も存在しているのだ。
城壁の全てに兵士を配備しても余裕のある大戦力を武器にメルキータは城門で剣を抜いた。
「我らの居場所はここだ!! 負ければ皆の家族は虐殺される!! 私と共に命を捨てて戦うのだ我が親愛なる民よ!! 常に私は皆と共にある!!」
漆黒の旗を風に吹かせ、髑髏の仮面が不気味に城門を見つめている。
しかし城門の奥や城壁から聞こえてくる甲高い遠吠えは攻め寄せた冥府軍の規模を上回るほど響いているのだった。
突然の急報に食べていた白米の箸が止まると竹子達と顔を見合わせている。
和やかな食卓が凍りつき一同の箸が止まる中で虎白は慌てて立ち上がると刀を着物の帯に差した。
「こ、虎白様!? 既に国主と兵達は討ち死に致しました・・・」
「援軍は間に合わなかったのか・・・」
天上議会で話していた内容は後方の領地の軍隊が援軍に行くという話しであった。
それに従い虎白も直ぐに援軍として出陣しようとしたが、既に国主と兵は壊滅して冥府軍は次の国へと攻撃を始めていると伝令は話した。
血を吐くかの様な剣幕で話している伝令に竹子が水を飲ませると一同は深刻な表情のまま、食事をかき込んで足早に部屋を出ていった。
鎧兜を着始める虎白は傍らで同じ様に準備を行う竹子と話している。
「どうなってんだ・・・」
「白陸は出せても二千五百名かな・・・」
「全員連れて行く。 国の守りは友奈とメルキータの宮衛党に任せるしかねえ。」
そう話すと刀を鎧の帯に差して部屋を蹴破る勢いで出ていった。
白陸軍二千五百名を召集した虎白が馬にまたがって出陣しようとした時だ。
城の城門の前に立っているのはアレクサンドロス大王のマケドニア兵ではないか。
何事かと眉間にしわを寄せた虎白が近づいていくと大王からの言付けを話し始めた。
「白陸は小国だから我が大王の軍に加われと。」
「わかった直ぐに向かうと伝えてくれ。」
南側領土の最高権力者であるアレクサンドロス大王は未だに冥府軍からの襲撃を受けていない小国の戦力を呼び出して配下に加えようとしている。
それに従った虎白は竹子達と共にマケドニア王国へ向かった。
白陸の守りを担当する友奈とメルキータの不安げな表情が彼らを見送った。
突然の冥府軍の襲来によって次々に小さな国が潰されていく中で虎白の白陸は比較的天上門から遠方にあった事から守りを固める時間が与えられた。
友奈とメルキータは死に物狂いとなって防御態勢を整えさせた。
元ツンドラ帝国の民達を率いて冥府軍を待ち構える二人は城壁へと登ると、硝煙渦巻く天上界の変わり果てた姿を見て絶句している。
「この世の終わりだ・・・まるでテッド戦役だ・・・」
「私達の元へも来るだろうね・・・怖いなあ・・・」
友奈がそうつぶやくとメルキータもうなずいている。
慌ただしく守りを固める白陸帝国の命運はメルキータが共に連れてきたツンドラの民に託されたも同然だ。
アレクサンドロス大王に召集されて戦力を連れて行った虎白の行動はある意味で仕方のない事であった。
命令に従った虎白も状況が飲み込めないまま、出陣してしまった。
城壁から見える惨劇の全貌をまだ見ていない皇帝と仲間達の助力は期待できない以上は宮衛党の戦力だけで守る他なかった。
怯えた様子で遠くで行われている惨劇を見ている友奈の肩に手を置くとメルキータは力強い眼差しでうなずいた。
「かつてツンドラは防御力があると諸国から恐れられて攻め込まれずにいた。 本来城を攻め込むには十倍の戦力が必要とされる。 ここにいる元ツンドラ兵の数を考えれば守れるさ。」
城壁から見下ろすと、虎白の北側領土の遠征時に投降した元ツンドラ兵達が武器を手にしている。
狂気のノバ皇帝亡き今では彼らが忠誠を誓うべき相手はメルキータのみであった。
そしてノバが飼い慣らしていたノバガードの生き残りも存在して今では「メルガード」と呼ばれている。
十分なほどに戦力が残っていると力強くうなずいたメルキータがふと城壁の向こうにある景色に目をやると砂煙を上げて接近する黒い旗が見えた。
「友奈!! 来たよ!!」
「ど、どうしよ・・・戦うしかないよね。 刀とか触った事ないけど。」
普通そうで普通ではない友奈だが、戦闘に参加した経験はない。
乱戦の中を走り抜けた経験はあっても白くて綺麗な手で誰かを殺した事はないというわけだ。
するとメルキータが友奈に軍配を手渡した。
「既に兵士達には防御設備の準備をさせた。 敵が接近した場所に友奈が城壁から攻撃の合図を出してほしい。」
「メルキータはどうするの!?」
「私はニキータと共に前線で戦う。」
不幸中の幸いというものか、建国間もない白陸は城の僅かな城下町があるがその全てを城壁で囲んでいた。
そして入り口の門は一つだけという砦の様な作りとなっている。
メルキータ指揮下の宮衛党こと元ツンドラ兵達の戦力は三十万も存在しているのだ。
城壁の全てに兵士を配備しても余裕のある大戦力を武器にメルキータは城門で剣を抜いた。
「我らの居場所はここだ!! 負ければ皆の家族は虐殺される!! 私と共に命を捨てて戦うのだ我が親愛なる民よ!! 常に私は皆と共にある!!」
漆黒の旗を風に吹かせ、髑髏の仮面が不気味に城門を見つめている。
しかし城門の奥や城壁から聞こえてくる甲高い遠吠えは攻め寄せた冥府軍の規模を上回るほど響いているのだった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました
ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。
大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。
ー---
全5章、最終話まで執筆済み。
第1章 6歳の聖女
第2章 8歳の大聖女
第3章 12歳の公爵令嬢
第4章 15歳の辺境聖女
第5章 17歳の愛し子
権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。
おまけの後日談投稿します(6/26)。
番外編投稿します(12/30-1/1)。
作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる