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シーズン3 親友と唱える覇道
第3−13話 騎士道という名誉にかけて
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この日の事は未来にまで語られるであろう。
人間が屈強な半獣族に挑んだ戦いとして詩人が風に乗せて語り、人々は困難に立ち向かった事を称賛する。
互いに譲れないものを守るために命をかけて戦ったこの戦いのまさに当事者とも言えるスタシアのアルデンと八百名あまりの王国軍は前方で他人のために戦っている秦軍を見ていた。
未だに参戦すらしていない当事者の軍隊は何をしているのか。
王国軍が落ち着きのない表情でちらちらと赤き王を見ていると、心地良い風が赤い髪の毛を優雅になでている。
するとアルデンは腰に差す聖剣を抜くと傍らの貴族に何か耳打ちをしているではないか。
話しを終えると将兵に向き合うと聖剣を高々と掲げている赤き王の眼差しは勇ましかった。
「親愛なる将兵諸君。 我らスタシアは今から死地へと向かいます。 ツンドラ軍の側面を攻撃して秦軍から帰を逸します。」
大乱戦を行っている秦軍とツンドラ軍の側面からスタシアが攻撃をすれば、横腹を突かれたハスキー達は苦しむだろう。
だがたったの八百名で側面攻撃を仕掛ければ反撃に出たツンドラ軍に飲まれる事は明白である。
しかし赤き王アルデン・フォン・ヒステリカに迷う様子はなかった。
秦軍とツンドラ軍の戦闘が激化してスタシア軍の存在を忘れ始めている今だからこそ側面攻撃に効果があるというもの。
白馬にまたがったアルデンは誰よりも前に出て走り始めた。
「遠方からお越しいただいた秦軍や鞍馬殿達が捨て身で戦っているのだから我らが一番危険な事を背負わなくてどうする? 騎士道に反するではないか!!」
そう言い放つと一目散に白馬を駆けさせた。
赤き王に続くスタシア王国軍も一切の躊躇なく側面攻撃のために軍馬を走らせたのだ。
このスタシア王国には代々重んじられている騎士道精神がある。
王国を守る騎士であるからには自ら危険な場所へ飛び込み、名誉にかけて己が武技を敵兵の脳裏に刻め。
自身だけが安寧を求める卑怯な考えを捨て、隣にいる同胞のために剣を振るえ。
国王たる赤き一族は付き従う民と将兵を導き、常に自らが先頭に立って正道である事を証明せよ。
という騎士道を幼少期から叩き込まれているスタシア王国軍の将兵達に迷いはなかった。
白馬を駆けさせて赤髪をなびかせている王こそが正道であり、ヒステリカ家こそスタシア王国の誇りであるのだ。
アルデンが引き連れている騎士が大乱戦の側面へ移動するとツンドラ軍は迅速に部隊を横へ動かして迎撃の構えを見せた。
「さすが強国ツンドラ。 簡単には斬り込ませてもらえないですね。 親愛なる将兵諸君!! 名誉を胸に赤き王に続けー!! スタシアに栄光あれー!!!!」
スタシアの騎士道の教えどおりアルデンが最初に馬蹄を響かせると、将兵達もそれに続いた。
馬上で剣先を前に向けて疾走する名誉ある騎士達は勇猛果敢にも三倍以上ものツンドラ軍の迎撃隊に突撃を敢行したのだ。
槍を向けて騎馬を串刺しにせんと鋭い眼光を向けるハスキーの大軍は武力も身体能力も並外れている。
やがてアルデンが槍へと斬り込もうとすると、ツンドラ兵が槍兵の背後から飛びかかってきたではないか。
卓越した跳躍力を武器に飛びかかったツンドラ兵を見た赤き王の表情に動じる様子はなかった。
「第六感っ!!」
そう言い放つと、空中で大口を開いて美しいアルデンの顔を食いちぎろうとしている獰猛なツンドラ兵を一刀で斬り捨てたのだ。
聡明な赤き王にして剣聖でもあるこの美男子は自身がスタシア王国の正当な王の血筋である事を桁外れの剣技で証明した。
疾走する騎馬は槍隊を蹴散らしてツンドラ軍の隊列奥深くまで突き進んでいる。
このまま、魔呂と鵜乱が降り立った本陣にまで突き進むのではないかという勢いで突撃を行っているスタシア王国軍であったが、相手は北側領土の覇者である。
「スタシアの騎手を狙うな!! 馬の足を狙え!! 先頭が転べば突撃は止まるぞ!!」
ツンドラの指揮官がそう叫ぶと、騎手を槍で突き刺そうとしていた兵士達は一斉に馬の足を目がけて槍先を向けたのだ。
それでもアルデンは巧みな手綱さばきと圧倒的剣技で槍を斬り捨てて進んでいたが、追従する騎士の愛馬が突き刺されると甲高い馬の悲鳴が響いた。
一頭が転ぶと背後から迫る仲間達が次々と転倒していった。
アルデンも馬を止めて周囲を見渡すと既に血眼となっているツンドラ兵が殺到していた。
「このまま秦軍の元まで切り抜けようと思いましたが・・・どうやらここが限界ですね。 全員下馬して応戦するのです!! 恐怖心など持ち合わせるな!!」
赤き王の鶴の一声で騎士達は馬から降りると名誉にかけて己が剣を振るった。
アルデンの言葉どおり彼らに一切の恐怖心はなかった。
騎士だけにすぎず、愛馬達までもが前足を振り上げてはツンドラ兵を蹴散らしているではないか。
完全包囲しているというのにツンドラ軍は彼ら八百名を簡単には討ち取れずにいた。
何故なら彼らは皆が幼少期から剣技を磨き続けた精鋭部隊であるからだ。
大軍を動員するために徴兵されているツンドラ兵は身体能力を頼りに戦っているにすぎない。
洗練された剣技を振るうスタシアの誇り高き騎士達は全方向から迫るハスキーの群れを次々に倒しているのだ。
そして誰よりも果敢に聖剣を振るっている者こそが赤き王アルデン・フォン・ヒステリカなのである。
人間が屈強な半獣族に挑んだ戦いとして詩人が風に乗せて語り、人々は困難に立ち向かった事を称賛する。
互いに譲れないものを守るために命をかけて戦ったこの戦いのまさに当事者とも言えるスタシアのアルデンと八百名あまりの王国軍は前方で他人のために戦っている秦軍を見ていた。
未だに参戦すらしていない当事者の軍隊は何をしているのか。
王国軍が落ち着きのない表情でちらちらと赤き王を見ていると、心地良い風が赤い髪の毛を優雅になでている。
するとアルデンは腰に差す聖剣を抜くと傍らの貴族に何か耳打ちをしているではないか。
話しを終えると将兵に向き合うと聖剣を高々と掲げている赤き王の眼差しは勇ましかった。
「親愛なる将兵諸君。 我らスタシアは今から死地へと向かいます。 ツンドラ軍の側面を攻撃して秦軍から帰を逸します。」
大乱戦を行っている秦軍とツンドラ軍の側面からスタシアが攻撃をすれば、横腹を突かれたハスキー達は苦しむだろう。
だがたったの八百名で側面攻撃を仕掛ければ反撃に出たツンドラ軍に飲まれる事は明白である。
しかし赤き王アルデン・フォン・ヒステリカに迷う様子はなかった。
秦軍とツンドラ軍の戦闘が激化してスタシア軍の存在を忘れ始めている今だからこそ側面攻撃に効果があるというもの。
白馬にまたがったアルデンは誰よりも前に出て走り始めた。
「遠方からお越しいただいた秦軍や鞍馬殿達が捨て身で戦っているのだから我らが一番危険な事を背負わなくてどうする? 騎士道に反するではないか!!」
そう言い放つと一目散に白馬を駆けさせた。
赤き王に続くスタシア王国軍も一切の躊躇なく側面攻撃のために軍馬を走らせたのだ。
このスタシア王国には代々重んじられている騎士道精神がある。
王国を守る騎士であるからには自ら危険な場所へ飛び込み、名誉にかけて己が武技を敵兵の脳裏に刻め。
自身だけが安寧を求める卑怯な考えを捨て、隣にいる同胞のために剣を振るえ。
国王たる赤き一族は付き従う民と将兵を導き、常に自らが先頭に立って正道である事を証明せよ。
という騎士道を幼少期から叩き込まれているスタシア王国軍の将兵達に迷いはなかった。
白馬を駆けさせて赤髪をなびかせている王こそが正道であり、ヒステリカ家こそスタシア王国の誇りであるのだ。
アルデンが引き連れている騎士が大乱戦の側面へ移動するとツンドラ軍は迅速に部隊を横へ動かして迎撃の構えを見せた。
「さすが強国ツンドラ。 簡単には斬り込ませてもらえないですね。 親愛なる将兵諸君!! 名誉を胸に赤き王に続けー!! スタシアに栄光あれー!!!!」
スタシアの騎士道の教えどおりアルデンが最初に馬蹄を響かせると、将兵達もそれに続いた。
馬上で剣先を前に向けて疾走する名誉ある騎士達は勇猛果敢にも三倍以上ものツンドラ軍の迎撃隊に突撃を敢行したのだ。
槍を向けて騎馬を串刺しにせんと鋭い眼光を向けるハスキーの大軍は武力も身体能力も並外れている。
やがてアルデンが槍へと斬り込もうとすると、ツンドラ兵が槍兵の背後から飛びかかってきたではないか。
卓越した跳躍力を武器に飛びかかったツンドラ兵を見た赤き王の表情に動じる様子はなかった。
「第六感っ!!」
そう言い放つと、空中で大口を開いて美しいアルデンの顔を食いちぎろうとしている獰猛なツンドラ兵を一刀で斬り捨てたのだ。
聡明な赤き王にして剣聖でもあるこの美男子は自身がスタシア王国の正当な王の血筋である事を桁外れの剣技で証明した。
疾走する騎馬は槍隊を蹴散らしてツンドラ軍の隊列奥深くまで突き進んでいる。
このまま、魔呂と鵜乱が降り立った本陣にまで突き進むのではないかという勢いで突撃を行っているスタシア王国軍であったが、相手は北側領土の覇者である。
「スタシアの騎手を狙うな!! 馬の足を狙え!! 先頭が転べば突撃は止まるぞ!!」
ツンドラの指揮官がそう叫ぶと、騎手を槍で突き刺そうとしていた兵士達は一斉に馬の足を目がけて槍先を向けたのだ。
それでもアルデンは巧みな手綱さばきと圧倒的剣技で槍を斬り捨てて進んでいたが、追従する騎士の愛馬が突き刺されると甲高い馬の悲鳴が響いた。
一頭が転ぶと背後から迫る仲間達が次々と転倒していった。
アルデンも馬を止めて周囲を見渡すと既に血眼となっているツンドラ兵が殺到していた。
「このまま秦軍の元まで切り抜けようと思いましたが・・・どうやらここが限界ですね。 全員下馬して応戦するのです!! 恐怖心など持ち合わせるな!!」
赤き王の鶴の一声で騎士達は馬から降りると名誉にかけて己が剣を振るった。
アルデンの言葉どおり彼らに一切の恐怖心はなかった。
騎士だけにすぎず、愛馬達までもが前足を振り上げてはツンドラ兵を蹴散らしているではないか。
完全包囲しているというのにツンドラ軍は彼ら八百名を簡単には討ち取れずにいた。
何故なら彼らは皆が幼少期から剣技を磨き続けた精鋭部隊であるからだ。
大軍を動員するために徴兵されているツンドラ兵は身体能力を頼りに戦っているにすぎない。
洗練された剣技を振るうスタシアの誇り高き騎士達は全方向から迫るハスキーの群れを次々に倒しているのだ。
そして誰よりも果敢に聖剣を振るっている者こそが赤き王アルデン・フォン・ヒステリカなのである。
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