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シーズン2 犠牲の果ての天上界
第2ー2話 蘇りし天上界の思い出
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死闘からの衝撃が抜けない一同はミカエル兵団に案内された宿営で魂が抜けた様に熟睡している。
美人姉妹が寄り添って眠っている美しい寝顔を見て微笑んだ虎白は一足先に起き上がると、天上界の朝焼けを拝んでいた。
鳥のさえずりと優しく温かいそよ風を肌で感じながら目を擦って宿営を出ると、一人の女が監視塔の上で黄昏れている。
気がついた虎白は梯子(はしご)を登って女の元へ行った。
「お前は確か友奈だったか?」
「ああ、狐さんね。」
さほど愛想も良くない返答をすると、大きなため息をついている。
彼女の心境は考えずともわかる。
虎白は「連中には感謝している」と勇敢なる赤備えの話を始めた。
彼らなくしてはこの天上界に来る事は叶わなかった。
しかし二十四年も共にしてきた皆を霊界に残して、自身だけ良く知らない虎白達の元に預けられた事への困惑は凄まじい様子だ。
よそよそしい態度で「初めまして」と話す友奈に虎白は一礼すると梯子から降りていこうとした。
「ねえ狐さん。」
「鞍馬だ。 鞍馬虎白だ。」
「私はこれからどうすればいいの?」
そう話す友奈の声は震えていた。
背中を向けて朝焼けを眺めているが、表情は見ずともわかる。
泣いているに違いない。
虎白はそう感じると「俺らも大勢失った」と声を低くして話した。
霊界で突然起きた大戦闘は新納を含む新政府軍や幕府軍の兵士も大勢消えている。
下を向いている友奈の肩をぽんっと叩くと「俺らといろよ」と語りかけた。
「見ず知らずの私がここにいていいの?」
「ああ。 少なくともお前の家族は俺に託しただろ。」
土屋と厳三郎が託した友奈はどうしようもない孤独感に苦しんでいた。
朝焼けが彼女の頬をつたっていく雫を儚くも照らしている。
任された虎白も彼女を迎え入れるつもりだった。
すると梯子を登るかつかつとした音が聞こえてきた。
見下ろすと竹子が眠そうな顔で微笑んでいる。
「おはよお。」
「ああ竹子。 彼女は友奈だ。 土屋達の仲間だ。」
竹子がおしとやかに一礼すると、ぎこちない会釈で返した。
すると竹子は虎白の頭の上に生えている白い耳に綺麗な口を近づけて口を開いた。
「どんな方だったの?」と友奈が持つ不思議な力の話を始めた。
思い出したかの様に虎白も目を見開いて「ああ」と声を発すると友奈に問いかけた。
「私は第一の人生の時から霊界が見えて、そこの住人と話せたの。」
「なんだと? それって祐輝と同じ力か。」
驚きのあまり着物の袖で口元を隠してこくこくとうなずく竹子は「そうでしたか」と小さい声を発する。
だが友奈自身もその力になんの意味があったのかはわからずにいた。
続け様に虎白は「他には?」と尋ねた。
「怨霊を触った時に彼らと話せたかなあ。」
「襲って来なかったのか?」
「え、う、うん。」
その時友奈は自身の記憶を掘り起こして、あの凄まじい戦闘を思い出していた。
確かに厳三郎が二人三脚の様にぺったりと側にいたが、怨霊の一人として襲いかかってこなかった事を思い出した。
すると友奈はさらに複雑な表情をして「マジでわかんない」と髪の毛をぐしゃっと触って下を向いた。
「なあ、頭の中で声が聞こえたりはしないのか?」
「え、いやそれはないかな。 でもたまに夢を見るかな。 めっちゃリアルな夢。」
そのめっちゃリアルな夢については日によって情景が異なると話すが、決まっていつも同じ情景があるという。
すると虎白の顔を見ては首をかしげて頭に生えている耳を様々な角度から見ているではないか。
「なんだよ」と困惑した様子で話す虎白を見てもなお、首をかしげている。
「うーんたぶん狐さんじゃないかなあ・・・夢でさ。 似たような人間みたいだけど耳が頭に生えている女の人が泣いているんだよねえ。」
その言葉に虎白と竹子は顔を見合わせて首をかしげている。
天上界にきた拍子に蘇った記憶の断片には友奈の話した内容はなかった。
どうやらこれ以上は考えてもわからないだろうと「今は考えるのはよせ」と諭す様に話した。
「ま、まあそうか・・・」
「とにかく、歓迎するぞ。」
「あ、どうも・・・」
どうしても友奈は馴染める気がしなかった。
それもそのはず、彼女は厳三郎や土屋と赤備え以外の友人はこれまでにいなかったのだ。
第一の人生でも会社の飲み会や友人同士での旅行などを極端に避けていた。
目の前にいる虎白と竹子はそれは強い絆で結ばれている様子だ。
二人の良好な関係に馴染む事を考えるだけでめまいがしてくる。
ぎこちない返事だけ返すと、再び朝焼けを眺めていた。
虎白と竹子は梯子から降り始めたが、先に降りた虎白がふと顔を上げると竹子の小さくて可愛らしい張りのある美尻が眼前にあるではないか。
梯子を降りる手を止めると、絶景が近づいてきては虎白の女の様な美顔にむすっと当たった。
「あ、ごめんね!?」
「いや、最高だなこれは。」
「ちょ、ちょっと止めてよ・・・恥ずかしいから早く降りてよ。」
たまらず赤面する竹子と心地よさそうに顔を埋める変態は梯子の中腹で醜態を晒している。
そんな間抜けな光景を冷たい目で見ている妹が「朝食食べますよ姉上」と愛想のない声で言った。
妹の前でこんな恥ずかしい光景を見せてしまった竹子の姉の威厳とやらは。
たまらず竹子が梯子から飛び降りようとすると、虎白の顔に足が当たり二人とも地面に落下した。
しかし虎白は空中で竹子を抱きかかえて自身が背中から落ちたではないか。
「危ねえ。 悪い竹子・・・」
「もう二度と人前でしないでね?」
「あ、ああ。 たまらずついな・・・」
すると甲高い笑い声を響かせる女が着物を着て歩いてきた。
「久しぶりだなー虎白ー!!」と勢い良く駆け寄ってきた女はこれもまた絶世の美女だ。
肩下まである黒髪を天上界の風になびかせて、颯爽と現れた女は虎白を見るなり肩を組んでいる。
「おお、久しぶりだな甲斐(かい)」
「二十四年間もどこ行ってたんだよおー。」
甲斐と呼ばれた美女は小柄な竹子とは異なりすらっと細くて長い脚が着物からもわかる背の高い女だ。
満点の笑顔で虎白と肩を組む甲斐は「二十四年」と言った。
虎白が天上界から姿を消した年月と祐輝の体で過ごした年月が一致したのだ。
眉間にしわを寄せた虎白は「また二十四年か」と険しい表情でうつむいた。
古くからの友人であろう甲斐ですら虎白が失踪した理由を知らない様だ。
「ああ、一体何があったんだよ・・・」
「テッド戦役の後に姿を消したよなあ?」
綺麗な黒髪を下から上にかきあげながら甲斐は「テッド戦役」という言葉を出した。
その言葉を聞いた途端、吐き気でも催したかの様に口元を抑え込んだかと思えばその場に崩れ落ちたではないか。
甲斐が背中をさすっているが、虎白の表情は日頃から真っ白の顔をさらに蒼白させている。
「テッド戦役か・・・」
「あんたにとっては最悪の戦いだよねえ。 友達がたくさん・・・」
ふらふらと竹子の肩を借りて立ち上がった虎白は「あいつは元気か?」と尋ねた。
テッド戦役という天上界で起きた巨大戦争で虎白は大切な友人を七人も失った。
たった一人だけ生き残った親友がどこにいるのか気になっている虎白は「会いたい」と甲斐に話した。
「今は秦国を率いているよ。 始皇帝らしくね。」
「そうか・・・じゃあ嬴政に会いに行くか。 何か思い出すかもしれねえな。」
虎白の話した親友とは始皇帝こと嬴政であったのだった。
美人姉妹が寄り添って眠っている美しい寝顔を見て微笑んだ虎白は一足先に起き上がると、天上界の朝焼けを拝んでいた。
鳥のさえずりと優しく温かいそよ風を肌で感じながら目を擦って宿営を出ると、一人の女が監視塔の上で黄昏れている。
気がついた虎白は梯子(はしご)を登って女の元へ行った。
「お前は確か友奈だったか?」
「ああ、狐さんね。」
さほど愛想も良くない返答をすると、大きなため息をついている。
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虎白は「連中には感謝している」と勇敢なる赤備えの話を始めた。
彼らなくしてはこの天上界に来る事は叶わなかった。
しかし二十四年も共にしてきた皆を霊界に残して、自身だけ良く知らない虎白達の元に預けられた事への困惑は凄まじい様子だ。
よそよそしい態度で「初めまして」と話す友奈に虎白は一礼すると梯子から降りていこうとした。
「ねえ狐さん。」
「鞍馬だ。 鞍馬虎白だ。」
「私はこれからどうすればいいの?」
そう話す友奈の声は震えていた。
背中を向けて朝焼けを眺めているが、表情は見ずともわかる。
泣いているに違いない。
虎白はそう感じると「俺らも大勢失った」と声を低くして話した。
霊界で突然起きた大戦闘は新納を含む新政府軍や幕府軍の兵士も大勢消えている。
下を向いている友奈の肩をぽんっと叩くと「俺らといろよ」と語りかけた。
「見ず知らずの私がここにいていいの?」
「ああ。 少なくともお前の家族は俺に託しただろ。」
土屋と厳三郎が託した友奈はどうしようもない孤独感に苦しんでいた。
朝焼けが彼女の頬をつたっていく雫を儚くも照らしている。
任された虎白も彼女を迎え入れるつもりだった。
すると梯子を登るかつかつとした音が聞こえてきた。
見下ろすと竹子が眠そうな顔で微笑んでいる。
「おはよお。」
「ああ竹子。 彼女は友奈だ。 土屋達の仲間だ。」
竹子がおしとやかに一礼すると、ぎこちない会釈で返した。
すると竹子は虎白の頭の上に生えている白い耳に綺麗な口を近づけて口を開いた。
「どんな方だったの?」と友奈が持つ不思議な力の話を始めた。
思い出したかの様に虎白も目を見開いて「ああ」と声を発すると友奈に問いかけた。
「私は第一の人生の時から霊界が見えて、そこの住人と話せたの。」
「なんだと? それって祐輝と同じ力か。」
驚きのあまり着物の袖で口元を隠してこくこくとうなずく竹子は「そうでしたか」と小さい声を発する。
だが友奈自身もその力になんの意味があったのかはわからずにいた。
続け様に虎白は「他には?」と尋ねた。
「怨霊を触った時に彼らと話せたかなあ。」
「襲って来なかったのか?」
「え、う、うん。」
その時友奈は自身の記憶を掘り起こして、あの凄まじい戦闘を思い出していた。
確かに厳三郎が二人三脚の様にぺったりと側にいたが、怨霊の一人として襲いかかってこなかった事を思い出した。
すると友奈はさらに複雑な表情をして「マジでわかんない」と髪の毛をぐしゃっと触って下を向いた。
「なあ、頭の中で声が聞こえたりはしないのか?」
「え、いやそれはないかな。 でもたまに夢を見るかな。 めっちゃリアルな夢。」
そのめっちゃリアルな夢については日によって情景が異なると話すが、決まっていつも同じ情景があるという。
すると虎白の顔を見ては首をかしげて頭に生えている耳を様々な角度から見ているではないか。
「なんだよ」と困惑した様子で話す虎白を見てもなお、首をかしげている。
「うーんたぶん狐さんじゃないかなあ・・・夢でさ。 似たような人間みたいだけど耳が頭に生えている女の人が泣いているんだよねえ。」
その言葉に虎白と竹子は顔を見合わせて首をかしげている。
天上界にきた拍子に蘇った記憶の断片には友奈の話した内容はなかった。
どうやらこれ以上は考えてもわからないだろうと「今は考えるのはよせ」と諭す様に話した。
「ま、まあそうか・・・」
「とにかく、歓迎するぞ。」
「あ、どうも・・・」
どうしても友奈は馴染める気がしなかった。
それもそのはず、彼女は厳三郎や土屋と赤備え以外の友人はこれまでにいなかったのだ。
第一の人生でも会社の飲み会や友人同士での旅行などを極端に避けていた。
目の前にいる虎白と竹子はそれは強い絆で結ばれている様子だ。
二人の良好な関係に馴染む事を考えるだけでめまいがしてくる。
ぎこちない返事だけ返すと、再び朝焼けを眺めていた。
虎白と竹子は梯子から降り始めたが、先に降りた虎白がふと顔を上げると竹子の小さくて可愛らしい張りのある美尻が眼前にあるではないか。
梯子を降りる手を止めると、絶景が近づいてきては虎白の女の様な美顔にむすっと当たった。
「あ、ごめんね!?」
「いや、最高だなこれは。」
「ちょ、ちょっと止めてよ・・・恥ずかしいから早く降りてよ。」
たまらず赤面する竹子と心地よさそうに顔を埋める変態は梯子の中腹で醜態を晒している。
そんな間抜けな光景を冷たい目で見ている妹が「朝食食べますよ姉上」と愛想のない声で言った。
妹の前でこんな恥ずかしい光景を見せてしまった竹子の姉の威厳とやらは。
たまらず竹子が梯子から飛び降りようとすると、虎白の顔に足が当たり二人とも地面に落下した。
しかし虎白は空中で竹子を抱きかかえて自身が背中から落ちたではないか。
「危ねえ。 悪い竹子・・・」
「もう二度と人前でしないでね?」
「あ、ああ。 たまらずついな・・・」
すると甲高い笑い声を響かせる女が着物を着て歩いてきた。
「久しぶりだなー虎白ー!!」と勢い良く駆け寄ってきた女はこれもまた絶世の美女だ。
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満点の笑顔で虎白と肩を組む甲斐は「二十四年」と言った。
虎白が天上界から姿を消した年月と祐輝の体で過ごした年月が一致したのだ。
眉間にしわを寄せた虎白は「また二十四年か」と険しい表情でうつむいた。
古くからの友人であろう甲斐ですら虎白が失踪した理由を知らない様だ。
「ああ、一体何があったんだよ・・・」
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綺麗な黒髪を下から上にかきあげながら甲斐は「テッド戦役」という言葉を出した。
その言葉を聞いた途端、吐き気でも催したかの様に口元を抑え込んだかと思えばその場に崩れ落ちたではないか。
甲斐が背中をさすっているが、虎白の表情は日頃から真っ白の顔をさらに蒼白させている。
「テッド戦役か・・・」
「あんたにとっては最悪の戦いだよねえ。 友達がたくさん・・・」
ふらふらと竹子の肩を借りて立ち上がった虎白は「あいつは元気か?」と尋ねた。
テッド戦役という天上界で起きた巨大戦争で虎白は大切な友人を七人も失った。
たった一人だけ生き残った親友がどこにいるのか気になっている虎白は「会いたい」と甲斐に話した。
「今は秦国を率いているよ。 始皇帝らしくね。」
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