10 / 205
シーズン1序章 消えた神族と悲劇の少年
第10話 霊界での大運動会
しおりを挟む
天真爛漫すぎる笹子は、疲れたのか新納におぶられて眠っている。一同は、海を後にして、さらに進んだ。
目的地と言える明白な場所があるわけではないが。
「なあ竹子、新納。 俺達もどこかに拠点でも置くか」
「うんそうだね。 そういえば最近怨霊を見かけないと思わない?」
最後に襲われてから、既に四日ほど経過する。何処へ行っても現れ続けた怨霊の群れは、どういうわけか姿すら見かけなくなっていた。
不審に思っている一同は、逆に彼らを探すかのように探索を続けたが、一体とて見つけることはできなかった。やがて一同は、それなりに栄えた街を見つけると、大きな学校を拠点にするために足を進めた。
「ここなら周囲を見渡せるし、銃も撃ちやすいな。 怨霊が来ても、校庭におびき出せば、暴れやすいな」
「ねえ虎白。 校庭で暴れるなんて、昔祐輝殿が観ていた不良映画を思い出すね」
そう呑気なことを話している竹子は、祐輝の話しをしても明るい表情を保っていた。笑みを浮かべる竹子を見た虎白は、安心した様子で頭を優しく撫でた。
嬉しそうに前髪を触って、背中を向ける竹子は、校舎内へ入っていくと安全を確認している。
「問題ないよ。 やっぱりここにも怨霊は一体もいない」
「このまま、消えてくれるといいけどな」
一同は、学校を拠点とした。体を休める場所を手に入れた一同は、防御を固めて怨霊に備えた。
それから一週間ほどが経過したが、怨霊は変わらず一体たりとも姿を見せなかった。気がつけば、とんがり帽子の兵士達にも気の緩みが見え始めていた。
もう怨霊はいない。昔のように通常の日々が戻ったのだ。そう、誰もが思い始めていた。
「よお竹子! 今日は屋上で和歌でもたしなむか?」
「いいねえ! 天気も良いし楽しみだね」
「ねえ新納ー! 運動会しようよ!」
「よかよか! じゃあ兵隊集めて誰が一番になるかやるか!」
気がつけば平和な時間が流れ始めていた。赤いハチマキを頭に巻いて、校庭を走り回る笹子を見て笑っている。
そんな時だ。
屋上で見張りをしている、とんがり帽子が絶叫した。
「て、敵襲! 全方向から!」
束の間の平和は、一瞬にして崩れ去った。和歌を読むことも、運動会も全て終わりだ。
徒競走なら確実に一等であろう速度で、階段を駆け上がった虎白が屋上へ飛び出すと、学校の周囲を埋め尽くすほどの邪悪な存在がいた。
「ま、待て何か様子がおかしいぞ」
瞳孔を開いて、周囲を見渡す虎白の鋭い瞳に写っている邪悪な存在は、今まで相手にしてきた者達とは明らかに様子が違った。
腹の底まで響くような、低いラッパの音が鳴り響き、足音が見事なほど一致している。集団の各所にそびえる黒い旗には、何か印が描かれ、誰がどこにいるのかわかるようになっている。
「あ、あれは軍隊だ......」
「第一隊! 攻撃準備! 敵を建物の外へ出すな!」
「敵だと? おい連中はなんだ!? 誰かあいつら見たことないのか!?」
「あんな黒くて統一感のある軍隊は初めて見たよ......というか怨霊が軍隊を持っていたなんて知らなかったよお」
隊列を組んでいる怨霊の軍隊は、美しいまでに肩を揃えて立っている。各所に黒い馬にまたがった指揮官らしき者までいる。銃こそ持っていないが、長槍や盾を持って武装する怨霊の軍隊の数は、新納のとんがり帽子の兵隊の三倍はいるだろうか。
「しばらく静かだと思っていたら軍隊用意してたのかよ!」
「どげんすると鞍馬どん!?」
「この数でまともにやり合ったら全滅するに決まってるだろ......一点突破してこの場を脱するんだ」
屋上から目を凝らして、逃げ道を探す虎白は、街の外れにある山を見ていた。あの場所まで逃げれば、怨霊の軍隊も数を活かせないのではないか。そう考えた虎白は、新納に話してとんがり帽子達を集結させた。
「絶対に立ち止まるな。 相手は軍隊なんだ、止まったら直ぐに殺される。 俺が先頭を走るからみんなついてこい。 行くぞ!」
校庭へ飛び出した虎白は、馬にまたがる指揮官らしき怨霊を斬り捨てると、さらに兵卒共も蹴散らした。自慢の二刀流を、勇猛果敢に振り続ける虎白に従って一同は、この絶望的な状況から脱出を試みた。
目的地と言える明白な場所があるわけではないが。
「なあ竹子、新納。 俺達もどこかに拠点でも置くか」
「うんそうだね。 そういえば最近怨霊を見かけないと思わない?」
最後に襲われてから、既に四日ほど経過する。何処へ行っても現れ続けた怨霊の群れは、どういうわけか姿すら見かけなくなっていた。
不審に思っている一同は、逆に彼らを探すかのように探索を続けたが、一体とて見つけることはできなかった。やがて一同は、それなりに栄えた街を見つけると、大きな学校を拠点にするために足を進めた。
「ここなら周囲を見渡せるし、銃も撃ちやすいな。 怨霊が来ても、校庭におびき出せば、暴れやすいな」
「ねえ虎白。 校庭で暴れるなんて、昔祐輝殿が観ていた不良映画を思い出すね」
そう呑気なことを話している竹子は、祐輝の話しをしても明るい表情を保っていた。笑みを浮かべる竹子を見た虎白は、安心した様子で頭を優しく撫でた。
嬉しそうに前髪を触って、背中を向ける竹子は、校舎内へ入っていくと安全を確認している。
「問題ないよ。 やっぱりここにも怨霊は一体もいない」
「このまま、消えてくれるといいけどな」
一同は、学校を拠点とした。体を休める場所を手に入れた一同は、防御を固めて怨霊に備えた。
それから一週間ほどが経過したが、怨霊は変わらず一体たりとも姿を見せなかった。気がつけば、とんがり帽子の兵士達にも気の緩みが見え始めていた。
もう怨霊はいない。昔のように通常の日々が戻ったのだ。そう、誰もが思い始めていた。
「よお竹子! 今日は屋上で和歌でもたしなむか?」
「いいねえ! 天気も良いし楽しみだね」
「ねえ新納ー! 運動会しようよ!」
「よかよか! じゃあ兵隊集めて誰が一番になるかやるか!」
気がつけば平和な時間が流れ始めていた。赤いハチマキを頭に巻いて、校庭を走り回る笹子を見て笑っている。
そんな時だ。
屋上で見張りをしている、とんがり帽子が絶叫した。
「て、敵襲! 全方向から!」
束の間の平和は、一瞬にして崩れ去った。和歌を読むことも、運動会も全て終わりだ。
徒競走なら確実に一等であろう速度で、階段を駆け上がった虎白が屋上へ飛び出すと、学校の周囲を埋め尽くすほどの邪悪な存在がいた。
「ま、待て何か様子がおかしいぞ」
瞳孔を開いて、周囲を見渡す虎白の鋭い瞳に写っている邪悪な存在は、今まで相手にしてきた者達とは明らかに様子が違った。
腹の底まで響くような、低いラッパの音が鳴り響き、足音が見事なほど一致している。集団の各所にそびえる黒い旗には、何か印が描かれ、誰がどこにいるのかわかるようになっている。
「あ、あれは軍隊だ......」
「第一隊! 攻撃準備! 敵を建物の外へ出すな!」
「敵だと? おい連中はなんだ!? 誰かあいつら見たことないのか!?」
「あんな黒くて統一感のある軍隊は初めて見たよ......というか怨霊が軍隊を持っていたなんて知らなかったよお」
隊列を組んでいる怨霊の軍隊は、美しいまでに肩を揃えて立っている。各所に黒い馬にまたがった指揮官らしき者までいる。銃こそ持っていないが、長槍や盾を持って武装する怨霊の軍隊の数は、新納のとんがり帽子の兵隊の三倍はいるだろうか。
「しばらく静かだと思っていたら軍隊用意してたのかよ!」
「どげんすると鞍馬どん!?」
「この数でまともにやり合ったら全滅するに決まってるだろ......一点突破してこの場を脱するんだ」
屋上から目を凝らして、逃げ道を探す虎白は、街の外れにある山を見ていた。あの場所まで逃げれば、怨霊の軍隊も数を活かせないのではないか。そう考えた虎白は、新納に話してとんがり帽子達を集結させた。
「絶対に立ち止まるな。 相手は軍隊なんだ、止まったら直ぐに殺される。 俺が先頭を走るからみんなついてこい。 行くぞ!」
校庭へ飛び出した虎白は、馬にまたがる指揮官らしき怨霊を斬り捨てると、さらに兵卒共も蹴散らした。自慢の二刀流を、勇猛果敢に振り続ける虎白に従って一同は、この絶望的な状況から脱出を試みた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました
ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。
大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。
ー---
全5章、最終話まで執筆済み。
第1章 6歳の聖女
第2章 8歳の大聖女
第3章 12歳の公爵令嬢
第4章 15歳の辺境聖女
第5章 17歳の愛し子
権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。
おまけの後日談投稿します(6/26)。
番外編投稿します(12/30-1/1)。
作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる