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第124話 限界だね

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元気のないアヤノを放課後にラーメンに連れていく事が頻繁になっていた。


夕飯を一緒に食べる時間だけはアヤノが楽しそうにしていた。


それしかできなかったが祐輝は自分にできる事を精一杯行っていた。


だが事態は悪い方向へと向かっていった。


ある日の学校での事だった。


体育の授業での事だ。


サッカーの授業は祐輝の苦手なスポーツでいつもゴールキーパーをしていた。


けんせーを含む野球部の仲間達は相手チームになっていた。


だがこれは生徒達が振り分けたチーム分けだった。


祐輝は不審に思いながらもサッカーを始めると事件は起きた。


ドリブルをして祐輝が構えるゴールへと近づいてくると力強いシュートをあえて祐輝の体にけんせーは当ててきた。


最初は気にしていなかったが、驚く事に大熊や他の仲間達までがわざと祐輝にボールをぶつけ始めた。


不快感をあらわにしたまま、授業を終えた祐輝はけんせーの元へ詰め寄る勢いで近づいて「言いたい事あるなら言え」と鬼の形相で話した。


だがけんせーは何も返答をせずに仲間と着替えては教室へ戻ろうとしていた。


祐輝は肩を掴んで「待てよ」睨みつけると振り払ってその場を後にしようとしていた。




「随分汚い事するよな・・・」
「なんのこと?」




あれだけの事をしても何も知らないとしらを切るつもりだったけんせーに我慢の限界がきた祐輝は力強く腕を引っ張った。


するとけんせーは手を振り払い祐輝の胸元を力強くどついた。


後ろにのけぞった祐輝は壁に頭をぶつけた。


その瞬間に祐輝の中で眠っている「何か」が目を覚ましかけた。


けんせーの胸ぐらを掴むとその場で足を引っ掛けて転ばせた。


そして腹部を踏みつけるとけんせーは祐輝の足を何度も殴った。


一度は親友の様に仲の良かった2人は激しい殴り合いに発展した。


だが何よりも周囲には野球部の仲間がいたが誰も止めに入らなかった。


見かねた不良生徒達が喧嘩を止めに入ったがなんと祐輝は5人がかりでも止まらなかった。


既にけんせーは顔から血を流していたが我を失った様に暴れる祐輝を前に不良達ではどうにもならなかった。


やがて騒ぎを聞きつけた体育教師が止めに入ってなんとか冷静になった。


けんせーと祐輝は体育教師に体育館へと連れて行かれると「続きをやるか?」と尋ねられた。



「お前ら高校野球を今日まで一生懸命やってきたんだろ。 喧嘩するって事は最後の夏大会に出場できなくてもいいんだろ? それぐらいの覚悟があるならここで続きをやれ。」



教師なのに何を言っているのかと驚いた祐輝だったがじっと目をつぶってアヤノの泣いている顔を思い浮かべた。


隣を見るとけんせーは何食わぬ顔をしていた。


陰湿なイジメをしてきたけんせーの顔は腫れていたが祐輝の目には小学校の時に出会った勝に見えた仕方なかった。


「い、いえもうやりません」と話したけんせーを見た体育教師は「お前は?」と尋ねてきた。




「やります。 どっちかが死ぬまで・・・」
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