上 下
117 / 140

第117話 辛いよな…

しおりを挟む
駅のベンチで泣いているアヤノの隣で座る祐輝との間には切ない沈黙が流れている。


しばらく泣いていたアヤノは絞り出す様な声で「あのね・・・」と話を始めた。


真剣な眼差しで祐輝は話を聞いていた。



「中学生の頃から付き合っていた彼氏がいたんだけどね・・・飽きたから別れようって・・・言われちゃったの・・・」




それは高校生にはあまりに残酷な別れ宣告だった。


祐輝も言葉に詰まり黙り込んでいた。


そこまで素直に言う必要があったのかと考えていた。




「ごめんね・・・クラスメイトに変な事言っちゃって・・・」
「ラーメン行こうぜ!!」
「えっ!?」




祐輝はとっさに口にしてしまった。


まだ少年から青年になりかけの祐輝には重すぎる話だった。


今のアヤノの心を癒やしてあげる言葉をかけられる事はできなかった。


笑顔でラーメンに連れていく事しか。



「ラーメン食べてまた明日元気に学校へ行こうぜ!!」
「そ、そうだね・・・でもお腹空いたかも・・・」



ベンチから立ち上がった2人は駅を出てラーメン屋に行った。


暗い夜道を歩く2人はどこか楽しそうでもあった。


「たまにはラーメン行くのありだな!!」と話す祐輝にアヤノは笑いながらうなずいていた。




「元気出せよアヤノ。」
「そうだね。 そのうち良い彼氏できるよね!!」




アヤノはニコリと笑った。


まるで天使の様に可愛らしい笑顔を見た祐輝は「俺が彼氏なる」と言いたい気持ちを表には出せなかった。


心の中で葛藤する気持ちは「好き」だと伝えたい気持ちと気まずい関係になりたくない気持ちでいっぱいだった。


やがてラーメン屋に入ると北海道味噌ラーメンを食べて2人で店を出た。



「めっちゃ美味しかったね!!」
「元気出た?」
「うん。 祐輝君ありがとうね!!」



そして2人はお互いの家に帰っていった。


電車に乗って1人で考えていた。


アヤノに気持ちを伝えるべきではなかったと電車に揺られながらうなずいていた。



「絶対フラれたに決まっている。 それに今は恋愛なんてしたくないはずだしな・・・」



新宿へ着くと家に帰って真美に今日の話をした。


男という生き物は飽きると次の女性を求めるのか。


祐輝はかつてミズキの事が大好きだった。


しかし不可解な自分の異変や生活環境の変化から別れる他なかった。


決して飽きたわけではなかった。


真美は「男なんてそんなもんよ」と唇を尖らせて遠くを見ていた。



「せめてあんたはそんな男にならない様にしなさいよ。 女の子を大切にしてあげられる男になりなさい。」




祐輝は真美に何かを教えてもらう事は少なかった。


基本的に息子の生き方を見守っている真美の教育は父の祐一に縛られた半生を思っての事でもあった。


我が子の生きたい生き方を応援する。


そんな真美が口にした「女の子を大切に」という言葉は祐輝の胸に深く刺さった。


寝室へ戻った祐輝はアヤノの可愛らしい笑顔を思い浮かべて眠るのだった。


間もなく2年生も後半だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

同僚くすぐりマッサージ

セナ
大衆娯楽
これは自分の実体験です

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

処理中です...