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第84話 言葉はいらない
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いきなりの事に戸惑う祐輝は唖然としたまま、越田を見ている。
今にも殴り掛かりそうな越田は「とにかく来いよ。」としか言わなかった。
困惑する祐輝の胸元ドンッとどつくとその力の強さに尻もちをついた。
しかし越田は立ち上がらせる事すらさせずに顔を思い切り殴った。
「痛えな。」
「殴り返せよ。 もう言葉はいらない。」
「ああ。 てめえも怪我して野球できなくさせてやるよ!!」
立ち上がった祐輝は前蹴りを越田の腹部に食らわすと間髪を入れずに殴りかかった。
顔を抑える越田に容赦する事なく胸ぐらを掴んで殴ろうとすると越田は頭突きを祐輝の顔に食らわせると鼻血が吹き出た。
興奮する祐輝は鼻血を気にもせず殴りかかった。
2人とも激しい殴り合いをしている。
まるで格闘技の試合かの様に互いに拳をぶつけ合い、蹴り技すらも駆使して闘った。
野球が上手い2人なだけあって運動神経も良く非常にレベルの高い殴り合いを続ける事数分。
呼吸を荒くさせる2人は互いに胸ぐらを掴んで睨み合った。
そして。
『ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
互いに気持ちを爆発させて突き放すとまたも激しい殴り合いを続けた。
気がつけば互いにフラフラとしているがまだ殴るのを止めなかった。
そしてそれから数分するとどちらともなくその場に倒れ込んだ。
「はあ・・・はあ・・・」
「はあ・・・少しは気が晴れたか?」
「はあ・・・なんだよいきなり・・・」
「お前金持ってる? ジュース買ってこいよ。」
祐輝は立ち上がると座り込む越田に手を出して「炭酸?」と聞くと「運動後はスポドリだろ。」と鼻で笑って返した。
飲み物を買ってきた祐輝は越田とベンチに座り呼吸を落ち着かせた。
気がつけば鼻血も乾いて真っ赤な顔を水道で洗い流すとまたベンチに座りスポドリを飲み始めた。
「ありがとうな越田。」
「お前喧嘩強いな。」
「まあね。」
「もうこれぐらいしかしてやれねえから。」
その言葉に祐輝は涙が溢れそうになっていた。
同じナインズの健太もエルドも何一つ声をかけてくれなかったが、越田だけは毎日公園に通い詰めて待っていた。
悔しくて暴れたい気持ちを察した越田は大切な体を酷使して祐輝と向き合ったのだ。
「キャッチャーはピッチャーの気持ちを理解するのが仕事だからよ。 お前の剛速球を捕った日からお前の気持ちは理解できた。」
「・・・・・・」
「誰にも負けたくないって気持ちがこもった鋭いストレートは速田さんより重かったよ。 だからその分、悔しいよな。」
もう我慢する事はできなかった。
祐輝は男の前でまたしても大粒の涙を溢してしまった。
自分なんかの事をここまで考えてくれる存在があとどれだけいるのか。
強敵でありながらも東京の旗を一緒に背負った戦友。
越田は祐輝にとって世界で唯一無二の存在となっていた。
「後は任せろよ祐輝。」
「ひっ・・・うう・・・」
「必ず甲子園に行く。 お前は見ている事しかできねえかもしれねえが俺はもう三振はしない。 そうすればいつの日か俺から三振を取ったのは幻となった天才ピッチャーだけってなるからよ。」
越田は立ち上がり祐輝の右肩をポンっと優しく触った。
もう休めと言われた様な死にゆく者に対して優しく撫でるかの様に。
「じゃあな祐輝。」と一言だけ言うと越田は去っていった。
「お、俺は・・・あいつの気持ちも理解せずに散々殴っちまった・・・ごめんよ。 お前は怪我するなよ・・・」
残酷な世界だ。
しかしスポーツとはそんなもの。
だからこそ美しく。
だからこそ儚いのだ。
今にも殴り掛かりそうな越田は「とにかく来いよ。」としか言わなかった。
困惑する祐輝の胸元ドンッとどつくとその力の強さに尻もちをついた。
しかし越田は立ち上がらせる事すらさせずに顔を思い切り殴った。
「痛えな。」
「殴り返せよ。 もう言葉はいらない。」
「ああ。 てめえも怪我して野球できなくさせてやるよ!!」
立ち上がった祐輝は前蹴りを越田の腹部に食らわすと間髪を入れずに殴りかかった。
顔を抑える越田に容赦する事なく胸ぐらを掴んで殴ろうとすると越田は頭突きを祐輝の顔に食らわせると鼻血が吹き出た。
興奮する祐輝は鼻血を気にもせず殴りかかった。
2人とも激しい殴り合いをしている。
まるで格闘技の試合かの様に互いに拳をぶつけ合い、蹴り技すらも駆使して闘った。
野球が上手い2人なだけあって運動神経も良く非常にレベルの高い殴り合いを続ける事数分。
呼吸を荒くさせる2人は互いに胸ぐらを掴んで睨み合った。
そして。
『ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
互いに気持ちを爆発させて突き放すとまたも激しい殴り合いを続けた。
気がつけば互いにフラフラとしているがまだ殴るのを止めなかった。
そしてそれから数分するとどちらともなくその場に倒れ込んだ。
「はあ・・・はあ・・・」
「はあ・・・少しは気が晴れたか?」
「はあ・・・なんだよいきなり・・・」
「お前金持ってる? ジュース買ってこいよ。」
祐輝は立ち上がると座り込む越田に手を出して「炭酸?」と聞くと「運動後はスポドリだろ。」と鼻で笑って返した。
飲み物を買ってきた祐輝は越田とベンチに座り呼吸を落ち着かせた。
気がつけば鼻血も乾いて真っ赤な顔を水道で洗い流すとまたベンチに座りスポドリを飲み始めた。
「ありがとうな越田。」
「お前喧嘩強いな。」
「まあね。」
「もうこれぐらいしかしてやれねえから。」
その言葉に祐輝は涙が溢れそうになっていた。
同じナインズの健太もエルドも何一つ声をかけてくれなかったが、越田だけは毎日公園に通い詰めて待っていた。
悔しくて暴れたい気持ちを察した越田は大切な体を酷使して祐輝と向き合ったのだ。
「キャッチャーはピッチャーの気持ちを理解するのが仕事だからよ。 お前の剛速球を捕った日からお前の気持ちは理解できた。」
「・・・・・・」
「誰にも負けたくないって気持ちがこもった鋭いストレートは速田さんより重かったよ。 だからその分、悔しいよな。」
もう我慢する事はできなかった。
祐輝は男の前でまたしても大粒の涙を溢してしまった。
自分なんかの事をここまで考えてくれる存在があとどれだけいるのか。
強敵でありながらも東京の旗を一緒に背負った戦友。
越田は祐輝にとって世界で唯一無二の存在となっていた。
「後は任せろよ祐輝。」
「ひっ・・・うう・・・」
「必ず甲子園に行く。 お前は見ている事しかできねえかもしれねえが俺はもう三振はしない。 そうすればいつの日か俺から三振を取ったのは幻となった天才ピッチャーだけってなるからよ。」
越田は立ち上がり祐輝の右肩をポンっと優しく触った。
もう休めと言われた様な死にゆく者に対して優しく撫でるかの様に。
「じゃあな祐輝。」と一言だけ言うと越田は去っていった。
「お、俺は・・・あいつの気持ちも理解せずに散々殴っちまった・・・ごめんよ。 お前は怪我するなよ・・・」
残酷な世界だ。
しかしスポーツとはそんなもの。
だからこそ美しく。
だからこそ儚いのだ。
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