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第80話 暗黒の誘惑
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次の日も学校には行ったが授業もろくに受けずに校舎内を歩き回っていた。
男子トイレの中に入るとタバコの匂いがしてきた。
「おお祐輝。」
「ゲーオ。」
「吸う?」
今までにないほどタバコへの誘惑に全身が包み込まれた。
酒も飲んでみたいし、女性と初体験もしてみたくなった。
そして何よりも体の中で眠る「何か」が「暴れさせろ。」と祐輝に言っている様だった。
授業をサボった祐輝はタバコこそ断ったが学校をゲーオと共に抜け出してゲームセンターへ行くと他校の不良達も集まっていた。
するとタバコを咥えて格闘ゲームをする先輩が手招きしてきた。
隣に座ると「野球は?」と聞いてきた。
「肩怪我して何もかも終わりました。」
「そっか。 俺もずっと野球やってたんだよ。」
「先輩も?」
「そうだよ。 俺は膝を怪我して終わった。 今は俺も東王会の構成員だけど。」
その昔同じ新宿西中学の先輩だった彼も野球を愛していた。
しかし運命は残酷で一度の怪我で全てが終わった。
行く宛も生きる希望もなくなった彼を救ったのは東王会という暴力団だった。
そこしか行く場所はなかった。
「あ、あの。」
「やめておけ。 何もヤクザにならなくても高校行って女遊びでもしろよ。」
「で、でも。」
「来るなって言ってんだ! お前はこっちの世界に来るな。 そんな純粋な目で見てんじゃねえよ。」
先輩は祐輝を突き飛ばして顎で仲間に合図するとゲームセンターからつまみ出された。
彼もきっと心の中で思うことがあったのだろう。
昔の自分と同じ絶望感と孤独に襲われていると。
彼には東王会しか行く場所がなかったがもしあの時誰かに救ってもらっていれば何か違ったかもしれないと永遠に苦しんでいるのかもしれない。
祐輝は立ち上がると街を歩き始めた。
野球を愛していた頃とはまるで違って見える新宿の町並み。
綺麗な女性や気になる店が急にたくさん見える様になってきた。
「ミズキとヤろう・・・」
祐輝は今まで抑えていた感情が爆発しそうになっていた。
学校が終わる時間にミズキに連絡をすると急いで駆けつけた。
呼吸を上げて少し汗をかいているミズキを見てムラっとしていた。
「はあ・・・はあ・・・大丈夫?」
「なあミズキ・・・ヤらせて。」
「ええ!?」
驚いたミズキは口を手で抑えているが少しすると真顔になって下を向いた。
「嫌だ。」と小さい声で悲しげに言った。
祐輝の表情も何処か切ないがミズキの顔はもっと悲しそうにしていた。
「野球できなくなったから?」
「うん・・・」
「それでいいの?」
「うん・・・」
「そっかあ・・・」
2人の間に沈黙が続き、しばらくするとミズキが「高校行かないの?」と話題を変える様に話を始めた。
祐輝は黙ってうなずくと家に向かって歩き始めた。
ミズキが呼び止めると振り返り様に「ごめんね。」と一言だけ言って立ち去った。
その日以来、2人には何処か気まずい空気が流れた。
毎日の恒例だったランニングもなくなり受験勉強で忙しいミズキとは会う時間が明らかに減っていった。
祐輝は生きる希望すらなくなっていた。
男子トイレの中に入るとタバコの匂いがしてきた。
「おお祐輝。」
「ゲーオ。」
「吸う?」
今までにないほどタバコへの誘惑に全身が包み込まれた。
酒も飲んでみたいし、女性と初体験もしてみたくなった。
そして何よりも体の中で眠る「何か」が「暴れさせろ。」と祐輝に言っている様だった。
授業をサボった祐輝はタバコこそ断ったが学校をゲーオと共に抜け出してゲームセンターへ行くと他校の不良達も集まっていた。
するとタバコを咥えて格闘ゲームをする先輩が手招きしてきた。
隣に座ると「野球は?」と聞いてきた。
「肩怪我して何もかも終わりました。」
「そっか。 俺もずっと野球やってたんだよ。」
「先輩も?」
「そうだよ。 俺は膝を怪我して終わった。 今は俺も東王会の構成員だけど。」
その昔同じ新宿西中学の先輩だった彼も野球を愛していた。
しかし運命は残酷で一度の怪我で全てが終わった。
行く宛も生きる希望もなくなった彼を救ったのは東王会という暴力団だった。
そこしか行く場所はなかった。
「あ、あの。」
「やめておけ。 何もヤクザにならなくても高校行って女遊びでもしろよ。」
「で、でも。」
「来るなって言ってんだ! お前はこっちの世界に来るな。 そんな純粋な目で見てんじゃねえよ。」
先輩は祐輝を突き飛ばして顎で仲間に合図するとゲームセンターからつまみ出された。
彼もきっと心の中で思うことがあったのだろう。
昔の自分と同じ絶望感と孤独に襲われていると。
彼には東王会しか行く場所がなかったがもしあの時誰かに救ってもらっていれば何か違ったかもしれないと永遠に苦しんでいるのかもしれない。
祐輝は立ち上がると街を歩き始めた。
野球を愛していた頃とはまるで違って見える新宿の町並み。
綺麗な女性や気になる店が急にたくさん見える様になってきた。
「ミズキとヤろう・・・」
祐輝は今まで抑えていた感情が爆発しそうになっていた。
学校が終わる時間にミズキに連絡をすると急いで駆けつけた。
呼吸を上げて少し汗をかいているミズキを見てムラっとしていた。
「はあ・・・はあ・・・大丈夫?」
「なあミズキ・・・ヤらせて。」
「ええ!?」
驚いたミズキは口を手で抑えているが少しすると真顔になって下を向いた。
「嫌だ。」と小さい声で悲しげに言った。
祐輝の表情も何処か切ないがミズキの顔はもっと悲しそうにしていた。
「野球できなくなったから?」
「うん・・・」
「それでいいの?」
「うん・・・」
「そっかあ・・・」
2人の間に沈黙が続き、しばらくするとミズキが「高校行かないの?」と話題を変える様に話を始めた。
祐輝は黙ってうなずくと家に向かって歩き始めた。
ミズキが呼び止めると振り返り様に「ごめんね。」と一言だけ言って立ち去った。
その日以来、2人には何処か気まずい空気が流れた。
毎日の恒例だったランニングもなくなり受験勉強で忙しいミズキとは会う時間が明らかに減っていった。
祐輝は生きる希望すらなくなっていた。
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