77 / 99
第77章 継承者
しおりを挟む
白斗が白陸を継ぐ日はいつになるのか。
それはまだずっと先になるだろう。
しかし白斗は後継者としての自覚があり悩んでいた。
圧倒的な父の背中。
白神隊の英雄達に話している。
「まあやってみないとですね。」
「リトってば!」
「だってわかりませんものー。」
「ま、まああの殿下。 この子の言う通りではあるのですよ。 虎白様の凄さは知っています。 でもあまりお気になさらずに一生懸命走ればいいのではないでしょうか?」
ハンナやリト。
平蔵も太吉もみんなが白神隊という看板を背負っていた。
虎白の右腕で白陸軍の中央軍の指揮官。
無敵の中央軍と呼ばれて白陸軍の全兵士が身を輝かせて見ている。
そんな竹子を守る私兵。
重圧もあるし、危険な戦いも数え切れないほどあった。
ハンナは一言だけ言える事があった。
「殿下。 私も悩みました。 苦しみました。 でも。 とにかく走りました。」
「怖くなかったんですか? 失敗するのではないかと。」
「怖かったですよ。 平蔵さんの様には私はなれないと思っていました。」
「それでどうしたんですか?」
「頑張りました。 とにかく必死に。 そして。 信じました。 竹子の事を。」
ハンナは精鋭白神隊の少佐という重圧に何度も潰れかけた。
しかしその度に竹子やリトや虎白といった自分を信じて支えてくれる存在がいた。
ハンナは信じてくれる者を信じた。
そして懸命に走った。
そして今では歴代でも最高の少佐と白神隊で語られている。
「信じるですか。」
「殿下は虎白様を信じていますか?」
「父上ですか。 そうですね。 信じていると思います。」
「どうでしょうか。 私にはそうは思いませんね。」
「え?」
「殿下はお若いので。 信じるが何かまだご理解していないのかと。」
白斗の信じるとハンナの信じるは重さが違った。
どんな危険な事があっても後ろにいる竹子やリトを信じている。
だから勇猛果敢に戦える。
敵兵が自分を通過しても背後には仲間がいる。
だから目の前の敵に集中するのだと。
白斗の信じるは虎白が父親だから言うことは正しい。
根拠は特にない。
そんなものだ。
まだ白斗はそこまでの場数を踏んでいない。
ハンナの指摘は正しかった。
「信じるかあ。」
「殿下。 今はとにかく優秀な指揮官になる努力をなさるのがいいかと。 虎白様の事は考えずに1人の指揮官として成長する事が大事かと思います。」
「さすがだなあ。 竹子姉ちゃんの兵士は。」
「ふふ。 恐れ入ります。」
「ありがとうございます! 俺・・・頑張ってみます!!」
「はい! 頑張ってください殿下!」
白斗は敬礼するとためらいの丘を後にした。
ハンナは到達点から見守っている。
もう共に戦場には出られない。
見守る事しかできないが心から応援している。
若き皇太子が成長する姿を楽しみにしている。
英雄達は静かに見ている。
彼らは決して忘れない。
「ふぁあー。 ハンナもう寝ようよー。」
「ふふ。 そうだね。 殿下が大きくなるといいね。」
「そのうちなるよー。」
白斗は虎白と共に旅に出た。
嫁探しの旅だ。
そしてペップはというと。
「第1分隊は右から前進しろ。 第2は左。 挟撃するぞ。 第3は俺についてこい。 敵を引きつけて左右の部隊を待つぞ。」
将校として指揮官として少しずつ成長している。
中尉への昇格は認められたが指揮兵力は小隊規模。
副官のルルは少尉になって将校として共に勉強していた。
ただの将校ではない。
ここは精鋭獣王隊だ。
「訓練止め!!」
「あー! 挟撃できたのに!!」
「ペップ我慢我慢。」
「ああ。」
「先日話した宮衛党との模擬演習だが、明日決行する!!」
『ガルルルルルッ!!!!』
次の模擬演習は同じ半獣族の部隊だ。
近頃の宮衛党はアーム戦役の失態以来、前線配備はあまりされていなかった。
これは虎白の決定ではなく正室の恋華の決定だった。
アーム戦役後にメルキータは深く反省していたが自信を失い勢いが衰えていた。
そして虎白と恋華に宮衛党の当主である優奈からの謝罪がなかった事が恋華の逆鱗に触れた。
しかし虎白からの信頼もあり、実際に恋華の指揮の元でアーム戦役時に白陸へ攻め込んできた西側連合軍の猛攻にも耐え忍んだウランヌの存在は貴重で先日の冥府軍による天上界突入時も城門で敵を撃退する活躍を見せた。
今ではウランヌあっての宮衛党だった。
何度も恋華から宮衛党を脱退して大将軍の一角を担わないかと誘いを受けていた。
だが全く揺るがなかった。
メルキータへの忠誠が。
「私はメテオ海戦で拾ってもらった身だからね。 命の恩人への忠誠を裏切って大将軍になるなんてあり得ないよ。」
后宮でウランヌはメルキータと話している。
メルキータは椅子に座って黙っている。
ウランヌは微笑んでメルキータの頬をペロペロと舐めている。
美しく気高い雪豹の半獣族。
グレーの綺麗な瞳がメルキータを見ている。
「そんな昔の事を・・・お前の実力は誰もが認めている。 私の下にいるような器じゃない。」
「もー。 そんな事言わないでよー。 私は好きでここにいるんだよ? それとも私がここにいたら嫌だ?」
「そ、そんなわけあるか! わ、私はお前に感謝している・・・宮衛党の名誉を守ってくれている。」
「感謝しているのは私だよー。」
健気で優しいウランヌの忠誠は揺るがなかった。
優奈との関係も良好で毎晩ウランヌは優奈に膝枕をしてもらっていた。
それがウランヌの幸せでいる場所だった。
「それより獣王隊との模擬演習。」
「ああ。」
「メルキータの指揮の見せ所だね!」
「バカ言うな。 相手はあの夜叉子だぞ・・・先日のエリュシオンとの戦いで討ち取った将軍の数を知っているのか・・・」
「諦めるの?」
自信のなくなっているメルキータ。
実は何度も引退を考えていた。
だがその度に優奈やウランヌと話しては迷って引退せずにいた。
表情は暗く、元気もない。
宮衛党には暗雲が漂っていた。
ある日の白陸。
山もあり森もある山岳で獣王隊と宮衛党は対峙した。
半獣族の能力が最大限に活かされる地形だ。
宮衛党はメルキータ指揮で布陣している。
「よし。 じゃあニキータの主力は正面から行くんだ。 ウランヌ。 背後を取れるか?」
「うんやってみるよ。 私の陸戦歩兵強襲隊なら。」
「へスタとアスタはニキータを援護する様に左右から。」
『待って待ってええ!! 私達は常に一緒!!』
「ああ。 そうか。 じゃあ・・・」
部隊配置に悩むメルキータはおどおどしながら考えている。
へスタとアスタは飛び跳ねて指示を待っている。
見かねたウランヌが助言する。
「じゃあこれはどう? へスタとアスタは中央で獣王隊を引きつけて、私とニキータで左右を支援する。 そして敢えて総大将のメルキータが背後から夜叉子様を攻撃する。」
「え、で、でも・・・私の重装歩兵隊は象やサイの半獣族ばかりで・・・」
「私の陸戦歩兵強襲隊を連れて行って!」
「で、でもあれはお前の兵士だ・・・」
「違うよ! 全部メルキータの兵士だよ!」
困った表情でメルキータは遠くを見ている。
自信のない表情で下を向いていた。
妹のニキータでさえ最近のメルキータには見かねていた。
「お姉ちゃん!!」
「え!?」
「大丈夫なの!?」
「あ、ああ。 背後からだな。 夜叉子かあ・・・きっとタイロンやクロフォードもいるだろうなあ・・・」
「お姉ちゃんって!!!」
おどおどしながらメルキータは配置についた。
そして戦闘は始まった。
相手は百戦錬磨の獣王隊。
訓練にはいい機会だがメルキータは弱気だった。
へスタ、アスタの部隊に獣王隊が襲いかかると静かにウランヌとニキータは挟撃に動いた。
しかし相手は獣王隊。
簡単に挟撃は見破られてタイロンはニキータにウランヌにはクロフォードの部隊が当たった。
だが兵員の全てが半獣族の宮衛党と大多数が半獣族の獣王隊では乱戦能力に若干の差が出た。
へスタとアスタは良く踏ん張り夜叉子の本陣にいる部隊まで投入された。
この場で持ちこたえれば夜叉子の周りが手薄になる。
それはメルキータの強襲が成功しやすくなるという事だ。
「みんな耐えろ!! 各部隊で耐えるんだ!!!」
「よおウランヌー!!!」
「クロフォード!!」
「うちに入る気はないのか!?」
「ないよ。 私はずっと宮衛党にいるからね。」
黒豹と雪豹は激しくぶつかり合っている。
ウランヌの潜在能力は素晴らしい。
クロフォードが相手でも全く怯まなかった。
それどころか圧倒し始める。
「ガルゥ・・・やるなあ。 もったいないなあ。 うちにくれば私の立場が危うくなるっていうのに。」
「じゃあ私が宮衛党でよかったね。 ニャアアア!!!」
なんとウランヌはクロフォードを倒してしまった。
ウランヌもボロボロではあるが右側の戦闘では宮衛党が優勢だった。
そしてサガミ中尉の中隊までウランヌに当てる事になった。
これで夜叉子を守っているのはペップの小隊だけだ。
しかしメルキータは茂みの中で潜んでいたが攻撃はしなかった。
陸戦歩兵強襲隊の兵士達が表情を歪めている。
「夜叉子の事だから何か仕掛けている・・・」
「あ、あの総帥? そのための強襲では?」
「た、確かにな・・・はあ失敗したらどうしよう・・・」
するとペップがメルキータと陸戦歩兵強襲隊に気がついた。
しかし夜叉子は迎撃を命ずる事なくペップには睨みつけて警戒する様に命じた。
目の前に敵がいるのに何故攻撃しないのかペップは不思議そうにしていた。
「お頭?」
「いいよ。 あいつはどうせ動けない。 何も仕掛けてないけどね。 あいつに仕掛けはいらない。 私がここに座っているだけであいつは動けないさ。」
まるで蛇に睨まれた蛙だった。
夜叉子の言う通りメルキータは罠を警戒して攻撃できずにせっかくの強襲もペップに見破られて膠着した。
そしてしばらくするとタイロンやコカ、リーク、サガミといった獣王隊が戻ってきた。
「お頭! 少し手こずりましたが全滅させました。」
「クロフォードの手当してあげな。 じゃあ帰るよ。」
「お頭。 あいつはいいんですか?」
「ふっ。 もう戦意はないよ。」
そして夜叉子はメルキータと精鋭がいるのに背を向けて悠々と帰っていった。
それはまだずっと先になるだろう。
しかし白斗は後継者としての自覚があり悩んでいた。
圧倒的な父の背中。
白神隊の英雄達に話している。
「まあやってみないとですね。」
「リトってば!」
「だってわかりませんものー。」
「ま、まああの殿下。 この子の言う通りではあるのですよ。 虎白様の凄さは知っています。 でもあまりお気になさらずに一生懸命走ればいいのではないでしょうか?」
ハンナやリト。
平蔵も太吉もみんなが白神隊という看板を背負っていた。
虎白の右腕で白陸軍の中央軍の指揮官。
無敵の中央軍と呼ばれて白陸軍の全兵士が身を輝かせて見ている。
そんな竹子を守る私兵。
重圧もあるし、危険な戦いも数え切れないほどあった。
ハンナは一言だけ言える事があった。
「殿下。 私も悩みました。 苦しみました。 でも。 とにかく走りました。」
「怖くなかったんですか? 失敗するのではないかと。」
「怖かったですよ。 平蔵さんの様には私はなれないと思っていました。」
「それでどうしたんですか?」
「頑張りました。 とにかく必死に。 そして。 信じました。 竹子の事を。」
ハンナは精鋭白神隊の少佐という重圧に何度も潰れかけた。
しかしその度に竹子やリトや虎白といった自分を信じて支えてくれる存在がいた。
ハンナは信じてくれる者を信じた。
そして懸命に走った。
そして今では歴代でも最高の少佐と白神隊で語られている。
「信じるですか。」
「殿下は虎白様を信じていますか?」
「父上ですか。 そうですね。 信じていると思います。」
「どうでしょうか。 私にはそうは思いませんね。」
「え?」
「殿下はお若いので。 信じるが何かまだご理解していないのかと。」
白斗の信じるとハンナの信じるは重さが違った。
どんな危険な事があっても後ろにいる竹子やリトを信じている。
だから勇猛果敢に戦える。
敵兵が自分を通過しても背後には仲間がいる。
だから目の前の敵に集中するのだと。
白斗の信じるは虎白が父親だから言うことは正しい。
根拠は特にない。
そんなものだ。
まだ白斗はそこまでの場数を踏んでいない。
ハンナの指摘は正しかった。
「信じるかあ。」
「殿下。 今はとにかく優秀な指揮官になる努力をなさるのがいいかと。 虎白様の事は考えずに1人の指揮官として成長する事が大事かと思います。」
「さすがだなあ。 竹子姉ちゃんの兵士は。」
「ふふ。 恐れ入ります。」
「ありがとうございます! 俺・・・頑張ってみます!!」
「はい! 頑張ってください殿下!」
白斗は敬礼するとためらいの丘を後にした。
ハンナは到達点から見守っている。
もう共に戦場には出られない。
見守る事しかできないが心から応援している。
若き皇太子が成長する姿を楽しみにしている。
英雄達は静かに見ている。
彼らは決して忘れない。
「ふぁあー。 ハンナもう寝ようよー。」
「ふふ。 そうだね。 殿下が大きくなるといいね。」
「そのうちなるよー。」
白斗は虎白と共に旅に出た。
嫁探しの旅だ。
そしてペップはというと。
「第1分隊は右から前進しろ。 第2は左。 挟撃するぞ。 第3は俺についてこい。 敵を引きつけて左右の部隊を待つぞ。」
将校として指揮官として少しずつ成長している。
中尉への昇格は認められたが指揮兵力は小隊規模。
副官のルルは少尉になって将校として共に勉強していた。
ただの将校ではない。
ここは精鋭獣王隊だ。
「訓練止め!!」
「あー! 挟撃できたのに!!」
「ペップ我慢我慢。」
「ああ。」
「先日話した宮衛党との模擬演習だが、明日決行する!!」
『ガルルルルルッ!!!!』
次の模擬演習は同じ半獣族の部隊だ。
近頃の宮衛党はアーム戦役の失態以来、前線配備はあまりされていなかった。
これは虎白の決定ではなく正室の恋華の決定だった。
アーム戦役後にメルキータは深く反省していたが自信を失い勢いが衰えていた。
そして虎白と恋華に宮衛党の当主である優奈からの謝罪がなかった事が恋華の逆鱗に触れた。
しかし虎白からの信頼もあり、実際に恋華の指揮の元でアーム戦役時に白陸へ攻め込んできた西側連合軍の猛攻にも耐え忍んだウランヌの存在は貴重で先日の冥府軍による天上界突入時も城門で敵を撃退する活躍を見せた。
今ではウランヌあっての宮衛党だった。
何度も恋華から宮衛党を脱退して大将軍の一角を担わないかと誘いを受けていた。
だが全く揺るがなかった。
メルキータへの忠誠が。
「私はメテオ海戦で拾ってもらった身だからね。 命の恩人への忠誠を裏切って大将軍になるなんてあり得ないよ。」
后宮でウランヌはメルキータと話している。
メルキータは椅子に座って黙っている。
ウランヌは微笑んでメルキータの頬をペロペロと舐めている。
美しく気高い雪豹の半獣族。
グレーの綺麗な瞳がメルキータを見ている。
「そんな昔の事を・・・お前の実力は誰もが認めている。 私の下にいるような器じゃない。」
「もー。 そんな事言わないでよー。 私は好きでここにいるんだよ? それとも私がここにいたら嫌だ?」
「そ、そんなわけあるか! わ、私はお前に感謝している・・・宮衛党の名誉を守ってくれている。」
「感謝しているのは私だよー。」
健気で優しいウランヌの忠誠は揺るがなかった。
優奈との関係も良好で毎晩ウランヌは優奈に膝枕をしてもらっていた。
それがウランヌの幸せでいる場所だった。
「それより獣王隊との模擬演習。」
「ああ。」
「メルキータの指揮の見せ所だね!」
「バカ言うな。 相手はあの夜叉子だぞ・・・先日のエリュシオンとの戦いで討ち取った将軍の数を知っているのか・・・」
「諦めるの?」
自信のなくなっているメルキータ。
実は何度も引退を考えていた。
だがその度に優奈やウランヌと話しては迷って引退せずにいた。
表情は暗く、元気もない。
宮衛党には暗雲が漂っていた。
ある日の白陸。
山もあり森もある山岳で獣王隊と宮衛党は対峙した。
半獣族の能力が最大限に活かされる地形だ。
宮衛党はメルキータ指揮で布陣している。
「よし。 じゃあニキータの主力は正面から行くんだ。 ウランヌ。 背後を取れるか?」
「うんやってみるよ。 私の陸戦歩兵強襲隊なら。」
「へスタとアスタはニキータを援護する様に左右から。」
『待って待ってええ!! 私達は常に一緒!!』
「ああ。 そうか。 じゃあ・・・」
部隊配置に悩むメルキータはおどおどしながら考えている。
へスタとアスタは飛び跳ねて指示を待っている。
見かねたウランヌが助言する。
「じゃあこれはどう? へスタとアスタは中央で獣王隊を引きつけて、私とニキータで左右を支援する。 そして敢えて総大将のメルキータが背後から夜叉子様を攻撃する。」
「え、で、でも・・・私の重装歩兵隊は象やサイの半獣族ばかりで・・・」
「私の陸戦歩兵強襲隊を連れて行って!」
「で、でもあれはお前の兵士だ・・・」
「違うよ! 全部メルキータの兵士だよ!」
困った表情でメルキータは遠くを見ている。
自信のない表情で下を向いていた。
妹のニキータでさえ最近のメルキータには見かねていた。
「お姉ちゃん!!」
「え!?」
「大丈夫なの!?」
「あ、ああ。 背後からだな。 夜叉子かあ・・・きっとタイロンやクロフォードもいるだろうなあ・・・」
「お姉ちゃんって!!!」
おどおどしながらメルキータは配置についた。
そして戦闘は始まった。
相手は百戦錬磨の獣王隊。
訓練にはいい機会だがメルキータは弱気だった。
へスタ、アスタの部隊に獣王隊が襲いかかると静かにウランヌとニキータは挟撃に動いた。
しかし相手は獣王隊。
簡単に挟撃は見破られてタイロンはニキータにウランヌにはクロフォードの部隊が当たった。
だが兵員の全てが半獣族の宮衛党と大多数が半獣族の獣王隊では乱戦能力に若干の差が出た。
へスタとアスタは良く踏ん張り夜叉子の本陣にいる部隊まで投入された。
この場で持ちこたえれば夜叉子の周りが手薄になる。
それはメルキータの強襲が成功しやすくなるという事だ。
「みんな耐えろ!! 各部隊で耐えるんだ!!!」
「よおウランヌー!!!」
「クロフォード!!」
「うちに入る気はないのか!?」
「ないよ。 私はずっと宮衛党にいるからね。」
黒豹と雪豹は激しくぶつかり合っている。
ウランヌの潜在能力は素晴らしい。
クロフォードが相手でも全く怯まなかった。
それどころか圧倒し始める。
「ガルゥ・・・やるなあ。 もったいないなあ。 うちにくれば私の立場が危うくなるっていうのに。」
「じゃあ私が宮衛党でよかったね。 ニャアアア!!!」
なんとウランヌはクロフォードを倒してしまった。
ウランヌもボロボロではあるが右側の戦闘では宮衛党が優勢だった。
そしてサガミ中尉の中隊までウランヌに当てる事になった。
これで夜叉子を守っているのはペップの小隊だけだ。
しかしメルキータは茂みの中で潜んでいたが攻撃はしなかった。
陸戦歩兵強襲隊の兵士達が表情を歪めている。
「夜叉子の事だから何か仕掛けている・・・」
「あ、あの総帥? そのための強襲では?」
「た、確かにな・・・はあ失敗したらどうしよう・・・」
するとペップがメルキータと陸戦歩兵強襲隊に気がついた。
しかし夜叉子は迎撃を命ずる事なくペップには睨みつけて警戒する様に命じた。
目の前に敵がいるのに何故攻撃しないのかペップは不思議そうにしていた。
「お頭?」
「いいよ。 あいつはどうせ動けない。 何も仕掛けてないけどね。 あいつに仕掛けはいらない。 私がここに座っているだけであいつは動けないさ。」
まるで蛇に睨まれた蛙だった。
夜叉子の言う通りメルキータは罠を警戒して攻撃できずにせっかくの強襲もペップに見破られて膠着した。
そしてしばらくするとタイロンやコカ、リーク、サガミといった獣王隊が戻ってきた。
「お頭! 少し手こずりましたが全滅させました。」
「クロフォードの手当してあげな。 じゃあ帰るよ。」
「お頭。 あいつはいいんですか?」
「ふっ。 もう戦意はないよ。」
そして夜叉子はメルキータと精鋭がいるのに背を向けて悠々と帰っていった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる