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第四十話 母娘 2
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会う努力はお互いにしないものの、母に会うと嬉しいし、好ましく思う。
自分は母のようになるのは無理だとは思うけれど。
「ステラ、いらっしゃい」
「お母様、お久しぶりです」
私が訪ねるといつも私の好きなお菓子やお茶を出してくれて、私が食べる様を嬉しそうにニコニコと見つめられるのはこの年では恥ずかしい。
それでも自分からここに来るのも久しぶりである。母に会うのはいつも公的な行事などばかりで、それ以外の余暇は全部、勉強に回していたのだから。
最後に私的な場所で会ったのはいつだったっけ。
「貴女とスピネル、婚約解消するとかどうとか言ってたみたいだけど、あれからなんの話もないから解決したでいいのかしら?」
そして、ぐうたらな癖に、耳が早い人でもある。
一体どこまで知っているのかわからない以上、あまり無駄なことを言って、彼女の好奇心を刺激したくもない。説明をするのも面倒というのもある。
「そういうことになりますかね……お母様にもお騒がせしました」
そういうにとどめて、母の探るような視線から目をそらして手紙を取り出すと、母の前にそれを差し出した。
「お母様、私からスタイラス卿にお手紙を書いたのですがよろしかったら見ていただけますか?」
さっそく用件を切り出すと、母は大げさに両手を頬につけた。
「まぁまぁ、今から義理のお父様に対して色目を使うなんて。私の娘にしては気が多いわねえ」
「ふざけてないで、見てくださいませ」
そんな器用な芸当できるわけないでしょう、と思いつつ手紙を母に突き付けた。
母は手紙を読み進めながら、口元をにやつかせている。そして最後にはとうとうふきだし、笑いながら私に手紙を返してきた。
「ふふふ、面白いわ。貴女の希望に関しては、ごめんなさい、わたくしからは何も言えないわ。でも、いいじゃない。これくらい言っておやりなさい。ジョージの頭が固くてこれくらいで腹を立てて、苦情を申し立ててくれば結婚なんてしなくていいし、結婚してからもさっさと別れて帰ってくればいいのよ」
「お、お母様?」
ジョージというのスピネル様のお父様のお名前で。呼び捨てにしてくるとは思わなかった。
相手に対してこういう意地悪な言い方をするのは、母の実家とスタイラス家は仲が良くないからだろうか。
しかし、母はそういう家同士の問題などは達観しているようなところがあるのだが。単に面白がっているだけなのかもしれない。
そういえば、こういう時に止めないのが母だった……と彼女の性格を思いだした。
自分が帝国最高試験を受験したいと言い出した時に、積極的に応援はしてくれなかったけれど、止めもしなかった。
私がスピネル様と婚約破棄を言い出した時も、騒いでいたのは父や兄たちで、母は「あらあら」と笑って見ていただけだった。
相談する相手を誤っていたかもしれないと思うが、結局は、背中を押してくれる誰かが欲しかっただけかもしれなくて。母がゴーサインを出したことで、この手紙を出す心が固まった。
しかし――。
王族は婚約もだが、婚姻はなおさら一度結んだら、破棄できないのがルールだ。
それは聖堂教会の教義の中にもよるもので、王家と神が密接に関わりあう存在であるからだ。
なのにあっさり、スピネル様と別れて帰ってこいと言い切る母にびっくりしてしまうのだが。
「お母さま、むちゃくちゃおっしゃらないでください」
「何を言ってるの。娘の幸せの方が決まり事なんかより大事に決まっているわ。なんのための権力よ。王命による婚約も神の元での結婚も、そんな建前守ってなんになるの? 神様がなんかしてくれるの? 教会から文句言われたら教会潰せばいいじゃない。全力でスタイラス家を貶めて貴女を守るわよ」
ふん、と傲岸な態度を崩さないお母様。
王は民のために。王族は民の規範たれという言葉はどこへ行ったのだろうか。
私も自由奔放な姫と言われている方だが、産まれた時から王族として教育を受けていた自分では発想の自由に限界があるらしい。自分がルールな母に対して何も言えなくなってしまった。
しかし、そんな母の言葉がものすごく嬉しい。
そして、母がいつも私がすることに口を出してこない理由が分かった。どんな結末になっても受け入れる覚悟をしているからだと。
なんとなく敗北感を感じてしまう。
「私のデビュタントについて、スピネル様がお母様ともお話したいというような話をされていました」
「なんでわたくしと? 貴女のデビュタントなのに?」
デビュタントの準備は娘と母の共同作業だと思っていたが、そうではないのだろうか。
この手のことはあまり覚えてなくて、どうしているものなのかよくわからない。
今までのパーティーなどは全部お膳立てされるのが当たり前だったから。
「私があまりにも興味がないのもあるからでしょうねえ。私もお母様が決めてくださった方が嬉しいです」
「わたくしは全部自分で決めたかったけれどねえ。そういう子もいるのね。仕方がないわねえ。スピネルと連絡を取りましょう」
私と母はファッションに対してはまるで逆の性格らしいことをいまさら知った。私は着ているものはどうでもいい人だが、オシャレな母は祖母の口出しの方が嫌だったようだ。確かに母のセンスはいいと思う。よくわからないが。
「もし、お母様が面倒だというのなら、頑張ってみますが……」
私のデビュタントだと言われたことに引っかかって、それに母が面倒くさがりなのも知っていたので、そう言ってみたが、ため息をつかれてしまった。
「貴女ねえ……。なんでもかんでも自分でやろうとするんじゃないわよ? 苦手なものは頼りなさい。誰かを使うようにしなさい。困ったら言いなさいと言ってるのに、全然なにも言わないわよね」
困ってないから言わないだけだが。
そう言うと、母は手をひらひら振って、私にまかせなさいと言い切る。
「それは貴女が結婚したとしても同じよ。どこの世界でも同じなの。貴女はその辺の誰よりも少しは知識が豊富かもしれないけれど、貴女の手は二本しかないの。一人じゃできることなんてたかが知れてるわよ……? それにやりたくないことなんて、それができるだれかに丸投げした方が、結果は良いでしょう?……シルヴィアはしっかりしてるし、マリアンヌは甘え上手だからいいけれど……私はカルマリンと貴女が心配よ」
自分のことだけでなく、兄妹たちの話まで出てきて目を丸くする。しかも。
「私はともかく、あのお兄様をですか?」
大きくため息をついた母の言葉に驚いた。
猪突猛進型な私が危ういと言われるのは珍しくないし、自分でも欠点を自覚している。
しかし、母は私と同じように兄のことも心配しているのは意外だ。
あの兄のどこにそんな要素があるというのだろう。
「未来の王としてふさわしく生きようと真面目すぎよね。ちゃらんぽらんに見えるけれど、あの子の本質は真面目人間だもの。早死にしなければいいけれどね。貴女こそカルマリンの補佐をしてくれればいいのに」
大人視点からは、あの兄も危うく見えるのか、と思ってしまう。
それは私が兄からは庇護対象で、母たちからは彼こそが庇護対象だから見える視点だからなのかもしれない。
「…………」
目の前のテーブルの上の、後は届けさせるだけだった手紙を手にとると、大きく二つに破った。
渾身の思いを込めて書いた手紙は心地よい音を響かせて割け、かの人に自分の言葉を届けるという目的を失った。
でももう、この手紙は必要がない。
私は母を見つめるとにっこりと笑った。
「お母様、ありがとうございます。私、希望がたった今、決まりました」
自分は母のようになるのは無理だとは思うけれど。
「ステラ、いらっしゃい」
「お母様、お久しぶりです」
私が訪ねるといつも私の好きなお菓子やお茶を出してくれて、私が食べる様を嬉しそうにニコニコと見つめられるのはこの年では恥ずかしい。
それでも自分からここに来るのも久しぶりである。母に会うのはいつも公的な行事などばかりで、それ以外の余暇は全部、勉強に回していたのだから。
最後に私的な場所で会ったのはいつだったっけ。
「貴女とスピネル、婚約解消するとかどうとか言ってたみたいだけど、あれからなんの話もないから解決したでいいのかしら?」
そして、ぐうたらな癖に、耳が早い人でもある。
一体どこまで知っているのかわからない以上、あまり無駄なことを言って、彼女の好奇心を刺激したくもない。説明をするのも面倒というのもある。
「そういうことになりますかね……お母様にもお騒がせしました」
そういうにとどめて、母の探るような視線から目をそらして手紙を取り出すと、母の前にそれを差し出した。
「お母様、私からスタイラス卿にお手紙を書いたのですがよろしかったら見ていただけますか?」
さっそく用件を切り出すと、母は大げさに両手を頬につけた。
「まぁまぁ、今から義理のお父様に対して色目を使うなんて。私の娘にしては気が多いわねえ」
「ふざけてないで、見てくださいませ」
そんな器用な芸当できるわけないでしょう、と思いつつ手紙を母に突き付けた。
母は手紙を読み進めながら、口元をにやつかせている。そして最後にはとうとうふきだし、笑いながら私に手紙を返してきた。
「ふふふ、面白いわ。貴女の希望に関しては、ごめんなさい、わたくしからは何も言えないわ。でも、いいじゃない。これくらい言っておやりなさい。ジョージの頭が固くてこれくらいで腹を立てて、苦情を申し立ててくれば結婚なんてしなくていいし、結婚してからもさっさと別れて帰ってくればいいのよ」
「お、お母様?」
ジョージというのスピネル様のお父様のお名前で。呼び捨てにしてくるとは思わなかった。
相手に対してこういう意地悪な言い方をするのは、母の実家とスタイラス家は仲が良くないからだろうか。
しかし、母はそういう家同士の問題などは達観しているようなところがあるのだが。単に面白がっているだけなのかもしれない。
そういえば、こういう時に止めないのが母だった……と彼女の性格を思いだした。
自分が帝国最高試験を受験したいと言い出した時に、積極的に応援はしてくれなかったけれど、止めもしなかった。
私がスピネル様と婚約破棄を言い出した時も、騒いでいたのは父や兄たちで、母は「あらあら」と笑って見ていただけだった。
相談する相手を誤っていたかもしれないと思うが、結局は、背中を押してくれる誰かが欲しかっただけかもしれなくて。母がゴーサインを出したことで、この手紙を出す心が固まった。
しかし――。
王族は婚約もだが、婚姻はなおさら一度結んだら、破棄できないのがルールだ。
それは聖堂教会の教義の中にもよるもので、王家と神が密接に関わりあう存在であるからだ。
なのにあっさり、スピネル様と別れて帰ってこいと言い切る母にびっくりしてしまうのだが。
「お母さま、むちゃくちゃおっしゃらないでください」
「何を言ってるの。娘の幸せの方が決まり事なんかより大事に決まっているわ。なんのための権力よ。王命による婚約も神の元での結婚も、そんな建前守ってなんになるの? 神様がなんかしてくれるの? 教会から文句言われたら教会潰せばいいじゃない。全力でスタイラス家を貶めて貴女を守るわよ」
ふん、と傲岸な態度を崩さないお母様。
王は民のために。王族は民の規範たれという言葉はどこへ行ったのだろうか。
私も自由奔放な姫と言われている方だが、産まれた時から王族として教育を受けていた自分では発想の自由に限界があるらしい。自分がルールな母に対して何も言えなくなってしまった。
しかし、そんな母の言葉がものすごく嬉しい。
そして、母がいつも私がすることに口を出してこない理由が分かった。どんな結末になっても受け入れる覚悟をしているからだと。
なんとなく敗北感を感じてしまう。
「私のデビュタントについて、スピネル様がお母様ともお話したいというような話をされていました」
「なんでわたくしと? 貴女のデビュタントなのに?」
デビュタントの準備は娘と母の共同作業だと思っていたが、そうではないのだろうか。
この手のことはあまり覚えてなくて、どうしているものなのかよくわからない。
今までのパーティーなどは全部お膳立てされるのが当たり前だったから。
「私があまりにも興味がないのもあるからでしょうねえ。私もお母様が決めてくださった方が嬉しいです」
「わたくしは全部自分で決めたかったけれどねえ。そういう子もいるのね。仕方がないわねえ。スピネルと連絡を取りましょう」
私と母はファッションに対してはまるで逆の性格らしいことをいまさら知った。私は着ているものはどうでもいい人だが、オシャレな母は祖母の口出しの方が嫌だったようだ。確かに母のセンスはいいと思う。よくわからないが。
「もし、お母様が面倒だというのなら、頑張ってみますが……」
私のデビュタントだと言われたことに引っかかって、それに母が面倒くさがりなのも知っていたので、そう言ってみたが、ため息をつかれてしまった。
「貴女ねえ……。なんでもかんでも自分でやろうとするんじゃないわよ? 苦手なものは頼りなさい。誰かを使うようにしなさい。困ったら言いなさいと言ってるのに、全然なにも言わないわよね」
困ってないから言わないだけだが。
そう言うと、母は手をひらひら振って、私にまかせなさいと言い切る。
「それは貴女が結婚したとしても同じよ。どこの世界でも同じなの。貴女はその辺の誰よりも少しは知識が豊富かもしれないけれど、貴女の手は二本しかないの。一人じゃできることなんてたかが知れてるわよ……? それにやりたくないことなんて、それができるだれかに丸投げした方が、結果は良いでしょう?……シルヴィアはしっかりしてるし、マリアンヌは甘え上手だからいいけれど……私はカルマリンと貴女が心配よ」
自分のことだけでなく、兄妹たちの話まで出てきて目を丸くする。しかも。
「私はともかく、あのお兄様をですか?」
大きくため息をついた母の言葉に驚いた。
猪突猛進型な私が危ういと言われるのは珍しくないし、自分でも欠点を自覚している。
しかし、母は私と同じように兄のことも心配しているのは意外だ。
あの兄のどこにそんな要素があるというのだろう。
「未来の王としてふさわしく生きようと真面目すぎよね。ちゃらんぽらんに見えるけれど、あの子の本質は真面目人間だもの。早死にしなければいいけれどね。貴女こそカルマリンの補佐をしてくれればいいのに」
大人視点からは、あの兄も危うく見えるのか、と思ってしまう。
それは私が兄からは庇護対象で、母たちからは彼こそが庇護対象だから見える視点だからなのかもしれない。
「…………」
目の前のテーブルの上の、後は届けさせるだけだった手紙を手にとると、大きく二つに破った。
渾身の思いを込めて書いた手紙は心地よい音を響かせて割け、かの人に自分の言葉を届けるという目的を失った。
でももう、この手紙は必要がない。
私は母を見つめるとにっこりと笑った。
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