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第33話 心強い仲間
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「思い出の場所? 詳しく話してもらえるかい?」
「はい。以前に家族と仲が悪いというのは嘘なんです……嘘をついてしまってごめんなさい」
その嘘の結果、チェリーの本までせしめてしまうことになったのだが。
その事も重ねて謝ったが、セユンにとってはどうってことないというよりどうでもいい話だったらしく、話の続きを促されてしまった。
おばあ様の思い出とおばあ様の容態が思わしくないことも全て彼に話す。
セユンは難しい顔をして唇で指を咥えるようにして話を聞いてくれていた。
「手がかりは青銅の天使の像。花園。あの時の絵本……ってところでしょうか。それで少なくとも50年以上は続いて、ここ王都に邸宅を構えている貴族の家を探してたんです。早く見つけて、その場所に連れていってあげたいのに……」
弱ってしまっているおばあ様の姿を思い出し、言葉が切れる。
セユンは「ええと」と考えをまとめるように額を突きながら口を開いた。
「君がうちのメイドに採用されていたとしても、よその邸宅のことなんて噂でもなかなか教えてもらえるものではないから、探すの難しかったと思うよ? セキュリティの問題あるし」
「やっぱり、そうなのでしょうか」
私は無知だ。
おばあ様のためにいてもたってもいられずに外に働きに出たけれど、そんな事すら知らなかった。
唇を噛んだ私をセユンは優しく見つめる。
「その話、俺にも協力させてくれないか?」
「え?」
どうして、と彼の方を見ると、気まずそうに彼は目をそらす。
「いや……俺が気になるんだよ。そういうの。宝探しみたいだからね。……だから、心配しないで一緒に探そう」
「……ありがとうございます」
ほっとした。
行き詰まってしまってどうにもできず、誰かに助けを求めることもできなかったから。
ミレーヌと二人で情報を集めるのも限界だった。
ここで手を差し伸べてもらえなかったら、このまま諦めてしまったかもしれなかった。
「まず、おばあさんにもっと詳しい話を聞いてみないか? もしかしたら、他の何かヒントになりそうなことを教えてくれるかもしれないし」
「えっと、わかりました。今、こちらのお仕事立て込んでいますから、次のお休みの時にでも……」
次の休みの予定はいつでしたっけ? とセユンを見ると彼は首を振る。
「俺からおばあ様にお見舞いを渡したいから、今から持って行ってくれるかな」
「ええ!? セユンさん、おばあ様と面識ないんですよね!? どういう関係なのかって不審がられてしまいますよ!」
「それなら、その辺りは君からってことにしといて。言い訳なんて、たくさん花を貰ったからおすそ分けってことでいいよ」
今すぐ庭師に温室の花を切らせよう、とセユンは窓を開ける。
今は冬。花なんて手に入らない。伯爵家は立派な温室があるのは知っていたけれど、そこで育てている花なんて豪華なのではないだろうか。
そんな貴重なものをいただいていいのだろうか。
ふと、なんで窓を開けたんだろうと我に帰ったら、彼はいきなりそこから外に飛び降りた。
「!? セユンさん!?」
確かにここからの方が伯爵邸の中庭は近いが、思い切った仕草に開いた口がふさがらない。
私は慌てて窓辺に寄ると地面に下り立った彼に室内から声をかける。
「あ、あの、私、これからおばあ様の家に行くんですか? お仕事は?」
「今日の君のお仕事は、俺の代わりにおばあ様のお見舞いに行って、少しでも話を聞いてくること。いいね。病人相手だから無理ならそのまま帰ってきてもいいけどね。うちの馬車も貸してあげるから、君は使用人出口で待ってて。俺は厩舎回って馬車の手配してから花取ってくるよ」
セユンは片手を上げるとそのまま軽い足取りで走り去ってしまった。
なんという行動力……。
私はその背中を呆然と見送っていた。
「はい。以前に家族と仲が悪いというのは嘘なんです……嘘をついてしまってごめんなさい」
その嘘の結果、チェリーの本までせしめてしまうことになったのだが。
その事も重ねて謝ったが、セユンにとってはどうってことないというよりどうでもいい話だったらしく、話の続きを促されてしまった。
おばあ様の思い出とおばあ様の容態が思わしくないことも全て彼に話す。
セユンは難しい顔をして唇で指を咥えるようにして話を聞いてくれていた。
「手がかりは青銅の天使の像。花園。あの時の絵本……ってところでしょうか。それで少なくとも50年以上は続いて、ここ王都に邸宅を構えている貴族の家を探してたんです。早く見つけて、その場所に連れていってあげたいのに……」
弱ってしまっているおばあ様の姿を思い出し、言葉が切れる。
セユンは「ええと」と考えをまとめるように額を突きながら口を開いた。
「君がうちのメイドに採用されていたとしても、よその邸宅のことなんて噂でもなかなか教えてもらえるものではないから、探すの難しかったと思うよ? セキュリティの問題あるし」
「やっぱり、そうなのでしょうか」
私は無知だ。
おばあ様のためにいてもたってもいられずに外に働きに出たけれど、そんな事すら知らなかった。
唇を噛んだ私をセユンは優しく見つめる。
「その話、俺にも協力させてくれないか?」
「え?」
どうして、と彼の方を見ると、気まずそうに彼は目をそらす。
「いや……俺が気になるんだよ。そういうの。宝探しみたいだからね。……だから、心配しないで一緒に探そう」
「……ありがとうございます」
ほっとした。
行き詰まってしまってどうにもできず、誰かに助けを求めることもできなかったから。
ミレーヌと二人で情報を集めるのも限界だった。
ここで手を差し伸べてもらえなかったら、このまま諦めてしまったかもしれなかった。
「まず、おばあさんにもっと詳しい話を聞いてみないか? もしかしたら、他の何かヒントになりそうなことを教えてくれるかもしれないし」
「えっと、わかりました。今、こちらのお仕事立て込んでいますから、次のお休みの時にでも……」
次の休みの予定はいつでしたっけ? とセユンを見ると彼は首を振る。
「俺からおばあ様にお見舞いを渡したいから、今から持って行ってくれるかな」
「ええ!? セユンさん、おばあ様と面識ないんですよね!? どういう関係なのかって不審がられてしまいますよ!」
「それなら、その辺りは君からってことにしといて。言い訳なんて、たくさん花を貰ったからおすそ分けってことでいいよ」
今すぐ庭師に温室の花を切らせよう、とセユンは窓を開ける。
今は冬。花なんて手に入らない。伯爵家は立派な温室があるのは知っていたけれど、そこで育てている花なんて豪華なのではないだろうか。
そんな貴重なものをいただいていいのだろうか。
ふと、なんで窓を開けたんだろうと我に帰ったら、彼はいきなりそこから外に飛び降りた。
「!? セユンさん!?」
確かにここからの方が伯爵邸の中庭は近いが、思い切った仕草に開いた口がふさがらない。
私は慌てて窓辺に寄ると地面に下り立った彼に室内から声をかける。
「あ、あの、私、これからおばあ様の家に行くんですか? お仕事は?」
「今日の君のお仕事は、俺の代わりにおばあ様のお見舞いに行って、少しでも話を聞いてくること。いいね。病人相手だから無理ならそのまま帰ってきてもいいけどね。うちの馬車も貸してあげるから、君は使用人出口で待ってて。俺は厩舎回って馬車の手配してから花取ってくるよ」
セユンは片手を上げるとそのまま軽い足取りで走り去ってしまった。
なんという行動力……。
私はその背中を呆然と見送っていた。
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