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59話 過去の傷が俺を苦しめるんだ
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ガレオンの話が終わった。セレヴィは飲み込むのに精いっぱいで、言葉が出なかった。
ガレオンの原点に関わる女性、イナンナ。肉体は消えても、彼女の魂はガレオンの中で生き続けているんだ。
「イナンナが旅立ってからも、俺はあいつの夢を引き継いでいる。魔界の片隅で、小さな洞窟から始まったでかい夢だ。誰もが飢えず幸せに暮らせる世界を実現し、あいつに見せてやらないといけないんだ」
「一人で……何でもできるようになったのも……イナンナ様のような方を出さないためですね」
「「肉体錬成」の呪法があれば、短時間以内なら体が粉みじんになろうとも蘇生が可能だ。そして、あいつに二度と誰も奪われないようにするためにも俺は、強くなる必要があった」
「その怪鳥、ノアを連れて来た怪物と酷似していませんか?」
「恐らく同一個体だろう。わざと俺に情報を与えて動揺を誘っているのさ。どうせまた何か悪だくみでもしているに決まっている」
「名前は判明されているのですか?」
「怪鳥ヒガナ。僅かに残っていた文献から判明した。ヒガナは種族名で、厳密には奴固有の名前ではないがな。生息地も生態も、殆ど分かってはいない。だが気まぐれに人里へ現れては、己の愉悦のために殺戮を楽しむサイコパスのようだ」
「そいつがまさに、すぐ近くに来ている」
「間違いなくな。捜索はしているが、まぁ見つからないだろう。奴は狡猾だ、俺に存在をちらつかせて、精神を削るつもりなのさ。だが、俺とて二の轍を踏むつもりはない。次に会った時は、必ず奴を殺す」
ガレオンから静かな怒りが伝わる。それと同時に、未だ彼がイナンナを愛し続けているのも分かった。
幾年も彼女との約束を守り、実現のために頑張り続けているのだから。その存在感があまりにも大きすぎて、入り込む余地が見当たらない。
……私では、ガレオンの特別には、なれないようだ。
「長話をしてしまったな。業務に支障は?」
「……どうでしょうか」
「ふん、無理はするな。今日くらいペースを落としても問題ない」
ガレオンの優しさがむしろ辛かった。気を遣われて嬉しいはずなのに、イナンナの影がちらついて胸が痛んだ。
動揺のあまり、手が震えて涙が出そうになる。するとガレオンは、罰悪そうに頭を掻き、
「俺は確かに、生涯イナンナ以外を愛するつもりはない。はずだった」
「え?」
「ま、なんだ。弱い所を見られたから、と言うのもあるが……過去の俺ならそう言っただろう。だが今の俺には……お前が必要だ。上手く言葉には出来ないが、未来の俺は恐らく……お前をより必要とするかもしれん」
ガレオンにしては、歯切れが悪かった。
セレヴィと向き合い、ガレオンは頭を撫でた。
「すまないな、俺自身もまだ整理できていないんだ。男ならばはっきりすべきなんだろうが、中途半端な覚悟ではイナンナにも、セレヴィにも納得してもらえないだろうからな」
「慰めならばやめてください」
「俺は気休めは嫌いだ。根本的に解決しなければ気が済まない性質だと知っているだろう。生半な期待を与えるかもしれんが、必ず答えを出す。だから……俯かずに待っていてくれ。少なくとも、今お前に離れられるのは、俺が辛い……」
過去を教えたからだろうか、ガレオンは自身の弱さをセレヴィに隠そうとしていない。
それに、「今離れられるのは辛い」と言ってくれた。ガレオンの心に、セレヴィが微かに入っている証ではないだろうか。
本当は今すぐに答えを聞きたい。けれどもガレオンの意思を尊重し、セレヴィは一旦仕事に集中する事にした。
◇◇◇
「一体俺は、何がしたいんだ……」
終業後、ガレオンは自室にて朝の事を思い返していた。
セレヴィに断りを入れるなら、あれが最初で最後だ。イナンナの存在を示し、彼女の想いを諦めさせるには。
なのに自分は、セレヴィを引き留めてしまった。これでセレヴィを振ってしまえば、彼女の心に大きな傷をつけてしまう。希望を与えた後に突き落とされると、心へのダメージは倍増してしまうのだ。
自分で自分を追い詰めて、後に引けなくなる。セレヴィを受け入れてやりたいのだが、その度にイナンナとの約束が待ったをかけてくるのだ。
「お前を差し置いて、別の女にうつつを抜かすわけには、いかないよな」
イナンナと死別して以来、ガレオンの中で彼女は神格化している。イナンナ以外の女性に惹かれるのは彼女への裏切りだと感じているのだ。
でもセレヴィは別だ。思えば初めて会った時から、ガレオンはイナンナの影を重ねていた。
自分より他者を思いやれて、目標に向けてひたむきで一生懸命で、イナンナにそっくりだ。しかし昔の女に似ているから惹かれたなんて、それもセレヴィに失礼ではないか?
駄目だ、考えれば考える程迷宮にはまっていく。
「お前ならどう答えるのか、教えてもらいたいものだ。……いや、それも困るな」
イナンナとセレヴィが別の男になびく姿を思い浮かべて勝手に落ち込んでしまった。
それだけセレヴィの存在が、イナンナと同格になっている証拠でもあるのだが。
カレンダーを眺め、皇霊祭の日付を確認する。もうあまり時間は残っていない。
答えを出すならこの日しかない。それまでに、ガレオンは決断しなければならなかった。
……セレヴィもイナンナも納得のいく答えか。イナンナと話せれば、見えたかもしれないな。
◇◇◇
「そっすか、とうとう主様、話したっすか」
セレヴィもマステマとノアに朝の顛末を話していた。マステマは複雑そうな顔で腕を組み、唸りながら天井を仰いだ。
「しかし驚いたよ、お前がそんな大昔からガレオンと共に居たとはな」
「ま、あーしとルシファーは長命種族っすから。アバドンは長寿の体に改造してるんすよ。イナンナ様の事知ってる奴らはもうあーしら幹部、初期面子しか居ないっすからね。あの人の思い出を風化させるわけにゃいかねっすし、二人の夢が実現する光景を見るまでは死ねないっすよ」
いつもふざけているマステマだが、命の恩人であるイナンナに対しては真摯な態度を見せていた。
「あーしにとってもイナンナ様は大事な人っすよ。あの人が助けてくれなきゃとっくに死んでたっすからね、今あーしが居るのはイナンナ様のおかげつっても過言じゃねっす。主様を除いて、唯一尊敬できる人っす」
「あのマステマ様がそうまで仰る方ですか、一度でいいから会ってみたかったです」
「なんか含みがある言い方っすけどあえて流しておくっす。さて、あーたはどうするんすか?」
「どうって」
「主様が昔の女引き摺ってんのわーったっすよね。その上でまだ突き進むんすか? それとも諦めるんすか? あーしとしては前者をお勧めするっすよ」
「そうですよ! だってガレオン様の想い人はもう亡くなられてるんですよ、実質ライバル無しじゃないですか! 押しまくればチャンスはありますって!」
「ノアは黙ってろ。答える前に聞かせろ、ガレオンとイナンナの関係を尊重しているにも関わらず、なぜマステマ達は私の後押しをする。お前達だって、イナンナを神格化しているだろう。なのに反するような真似をするのか、理解できないんだが」
「無礼を承知で言うっすけど、死人じゃ生きてる奴を慰められねーんすよ」
マステマはセレヴィの肩を抱いた。
「イナンナ様が死んでから、主様はあの人との約束を糧に生きてきたっす。弱みも見せない鋼の精神、何でもできる万能の才能、莫大に膨れ上がった奴隷達をたった一人で守れる無頼の強さ。イナンナ様への思慕が主様を弱点の無い史上最強の魔王にさせたっす。けどね、引き換えに主様は誰も支えられない、独りぼっちの男になっちまったっす。あんだけ出来すぎた奴、重すぎて誰も近寄れねっすよ」
「そうだな、過度に完璧な分、親しみは持てないだろう。特に魔王と奴隷と言う主従関係が成り立っていては、それこそガレオンは神のような存在になっている。ガレオンに特別な感情を抱くきっかけすらないだろうな」
「今はいいかもしれねっすけど、遠い将来、心がぶっ潰れてもおかしくねっす。そん時に死んだ奴が生きてる奴慰められるわけがねーっすよ。そうなっちまえば、イナンナ様が最期に願った主様の幸せが叶わねーっす。主様に必要なのは、自分の弱い所晒せる奴っす。弱点は決して欠点じゃねっす、自分の心を守るための拠り所なんすよ」
「要するに、お前は私を、ガレオンを支えさせるために利用しようとしているわけか」
「そうっすよ。都合よく主様に惚れた女が出てきたんすから、使わない手はねーっすよ」
マステマは思惑を隠そうとせず、偽悪的な言い方をする。ある意味、信用できるな。
「ま、勿論あーしらで勝手に審査させてもらったっすけどね。主様の嫁にさせる以上、こっちも仕える奴を選ばせてもらうっす。結論言っちまうと合格っすけどねー、アバドンもルシファーもあーたに満点あげてるっすから」
「一応、評価を聞こうか」
「元貴族なだけあってマナーや品性、教養は完璧っす。見てくれもいい線行ってるし、性格も全然着飾らねーし、誰であろうと分け隔てなく接するし、思考も庶民的っす。何より、主様とイナンナ様の夢に共感して、率先して他人のために動ける。こいつが何よりもでかいっす。あーたならイナンナ様の夢と主様を託せるっすよ」
マステマはセレヴィの胸に指を押し付け、ぐりぐりと捻り込んでくる。まるで、「ガレオンを頼むぞ」と言わんばかりに。
「個人的な頼みっす、主様を幸せにしてやってくれっす。あーたなら絶対出来るっすよ。マブダチのあーしが保証してやるっす。万一玉砕しちまっても心配すんなっす、あーしが責任もってあーたを貰ってやるっすから♪」
「はは、まぁお前の嫁になら、なってもやぶさかじゃないな」
マステマの手を握り、セレヴィは頷いた。
「私、イナンナに挑んでみるよ。ガレオンを必ず振り向かせる。だって……私だってガレオンが大好きだからな」
勝負は皇霊祭。その日がセレヴィの決戦の日だ。
ガレオンの原点に関わる女性、イナンナ。肉体は消えても、彼女の魂はガレオンの中で生き続けているんだ。
「イナンナが旅立ってからも、俺はあいつの夢を引き継いでいる。魔界の片隅で、小さな洞窟から始まったでかい夢だ。誰もが飢えず幸せに暮らせる世界を実現し、あいつに見せてやらないといけないんだ」
「一人で……何でもできるようになったのも……イナンナ様のような方を出さないためですね」
「「肉体錬成」の呪法があれば、短時間以内なら体が粉みじんになろうとも蘇生が可能だ。そして、あいつに二度と誰も奪われないようにするためにも俺は、強くなる必要があった」
「その怪鳥、ノアを連れて来た怪物と酷似していませんか?」
「恐らく同一個体だろう。わざと俺に情報を与えて動揺を誘っているのさ。どうせまた何か悪だくみでもしているに決まっている」
「名前は判明されているのですか?」
「怪鳥ヒガナ。僅かに残っていた文献から判明した。ヒガナは種族名で、厳密には奴固有の名前ではないがな。生息地も生態も、殆ど分かってはいない。だが気まぐれに人里へ現れては、己の愉悦のために殺戮を楽しむサイコパスのようだ」
「そいつがまさに、すぐ近くに来ている」
「間違いなくな。捜索はしているが、まぁ見つからないだろう。奴は狡猾だ、俺に存在をちらつかせて、精神を削るつもりなのさ。だが、俺とて二の轍を踏むつもりはない。次に会った時は、必ず奴を殺す」
ガレオンから静かな怒りが伝わる。それと同時に、未だ彼がイナンナを愛し続けているのも分かった。
幾年も彼女との約束を守り、実現のために頑張り続けているのだから。その存在感があまりにも大きすぎて、入り込む余地が見当たらない。
……私では、ガレオンの特別には、なれないようだ。
「長話をしてしまったな。業務に支障は?」
「……どうでしょうか」
「ふん、無理はするな。今日くらいペースを落としても問題ない」
ガレオンの優しさがむしろ辛かった。気を遣われて嬉しいはずなのに、イナンナの影がちらついて胸が痛んだ。
動揺のあまり、手が震えて涙が出そうになる。するとガレオンは、罰悪そうに頭を掻き、
「俺は確かに、生涯イナンナ以外を愛するつもりはない。はずだった」
「え?」
「ま、なんだ。弱い所を見られたから、と言うのもあるが……過去の俺ならそう言っただろう。だが今の俺には……お前が必要だ。上手く言葉には出来ないが、未来の俺は恐らく……お前をより必要とするかもしれん」
ガレオンにしては、歯切れが悪かった。
セレヴィと向き合い、ガレオンは頭を撫でた。
「すまないな、俺自身もまだ整理できていないんだ。男ならばはっきりすべきなんだろうが、中途半端な覚悟ではイナンナにも、セレヴィにも納得してもらえないだろうからな」
「慰めならばやめてください」
「俺は気休めは嫌いだ。根本的に解決しなければ気が済まない性質だと知っているだろう。生半な期待を与えるかもしれんが、必ず答えを出す。だから……俯かずに待っていてくれ。少なくとも、今お前に離れられるのは、俺が辛い……」
過去を教えたからだろうか、ガレオンは自身の弱さをセレヴィに隠そうとしていない。
それに、「今離れられるのは辛い」と言ってくれた。ガレオンの心に、セレヴィが微かに入っている証ではないだろうか。
本当は今すぐに答えを聞きたい。けれどもガレオンの意思を尊重し、セレヴィは一旦仕事に集中する事にした。
◇◇◇
「一体俺は、何がしたいんだ……」
終業後、ガレオンは自室にて朝の事を思い返していた。
セレヴィに断りを入れるなら、あれが最初で最後だ。イナンナの存在を示し、彼女の想いを諦めさせるには。
なのに自分は、セレヴィを引き留めてしまった。これでセレヴィを振ってしまえば、彼女の心に大きな傷をつけてしまう。希望を与えた後に突き落とされると、心へのダメージは倍増してしまうのだ。
自分で自分を追い詰めて、後に引けなくなる。セレヴィを受け入れてやりたいのだが、その度にイナンナとの約束が待ったをかけてくるのだ。
「お前を差し置いて、別の女にうつつを抜かすわけには、いかないよな」
イナンナと死別して以来、ガレオンの中で彼女は神格化している。イナンナ以外の女性に惹かれるのは彼女への裏切りだと感じているのだ。
でもセレヴィは別だ。思えば初めて会った時から、ガレオンはイナンナの影を重ねていた。
自分より他者を思いやれて、目標に向けてひたむきで一生懸命で、イナンナにそっくりだ。しかし昔の女に似ているから惹かれたなんて、それもセレヴィに失礼ではないか?
駄目だ、考えれば考える程迷宮にはまっていく。
「お前ならどう答えるのか、教えてもらいたいものだ。……いや、それも困るな」
イナンナとセレヴィが別の男になびく姿を思い浮かべて勝手に落ち込んでしまった。
それだけセレヴィの存在が、イナンナと同格になっている証拠でもあるのだが。
カレンダーを眺め、皇霊祭の日付を確認する。もうあまり時間は残っていない。
答えを出すならこの日しかない。それまでに、ガレオンは決断しなければならなかった。
……セレヴィもイナンナも納得のいく答えか。イナンナと話せれば、見えたかもしれないな。
◇◇◇
「そっすか、とうとう主様、話したっすか」
セレヴィもマステマとノアに朝の顛末を話していた。マステマは複雑そうな顔で腕を組み、唸りながら天井を仰いだ。
「しかし驚いたよ、お前がそんな大昔からガレオンと共に居たとはな」
「ま、あーしとルシファーは長命種族っすから。アバドンは長寿の体に改造してるんすよ。イナンナ様の事知ってる奴らはもうあーしら幹部、初期面子しか居ないっすからね。あの人の思い出を風化させるわけにゃいかねっすし、二人の夢が実現する光景を見るまでは死ねないっすよ」
いつもふざけているマステマだが、命の恩人であるイナンナに対しては真摯な態度を見せていた。
「あーしにとってもイナンナ様は大事な人っすよ。あの人が助けてくれなきゃとっくに死んでたっすからね、今あーしが居るのはイナンナ様のおかげつっても過言じゃねっす。主様を除いて、唯一尊敬できる人っす」
「あのマステマ様がそうまで仰る方ですか、一度でいいから会ってみたかったです」
「なんか含みがある言い方っすけどあえて流しておくっす。さて、あーたはどうするんすか?」
「どうって」
「主様が昔の女引き摺ってんのわーったっすよね。その上でまだ突き進むんすか? それとも諦めるんすか? あーしとしては前者をお勧めするっすよ」
「そうですよ! だってガレオン様の想い人はもう亡くなられてるんですよ、実質ライバル無しじゃないですか! 押しまくればチャンスはありますって!」
「ノアは黙ってろ。答える前に聞かせろ、ガレオンとイナンナの関係を尊重しているにも関わらず、なぜマステマ達は私の後押しをする。お前達だって、イナンナを神格化しているだろう。なのに反するような真似をするのか、理解できないんだが」
「無礼を承知で言うっすけど、死人じゃ生きてる奴を慰められねーんすよ」
マステマはセレヴィの肩を抱いた。
「イナンナ様が死んでから、主様はあの人との約束を糧に生きてきたっす。弱みも見せない鋼の精神、何でもできる万能の才能、莫大に膨れ上がった奴隷達をたった一人で守れる無頼の強さ。イナンナ様への思慕が主様を弱点の無い史上最強の魔王にさせたっす。けどね、引き換えに主様は誰も支えられない、独りぼっちの男になっちまったっす。あんだけ出来すぎた奴、重すぎて誰も近寄れねっすよ」
「そうだな、過度に完璧な分、親しみは持てないだろう。特に魔王と奴隷と言う主従関係が成り立っていては、それこそガレオンは神のような存在になっている。ガレオンに特別な感情を抱くきっかけすらないだろうな」
「今はいいかもしれねっすけど、遠い将来、心がぶっ潰れてもおかしくねっす。そん時に死んだ奴が生きてる奴慰められるわけがねーっすよ。そうなっちまえば、イナンナ様が最期に願った主様の幸せが叶わねーっす。主様に必要なのは、自分の弱い所晒せる奴っす。弱点は決して欠点じゃねっす、自分の心を守るための拠り所なんすよ」
「要するに、お前は私を、ガレオンを支えさせるために利用しようとしているわけか」
「そうっすよ。都合よく主様に惚れた女が出てきたんすから、使わない手はねーっすよ」
マステマは思惑を隠そうとせず、偽悪的な言い方をする。ある意味、信用できるな。
「ま、勿論あーしらで勝手に審査させてもらったっすけどね。主様の嫁にさせる以上、こっちも仕える奴を選ばせてもらうっす。結論言っちまうと合格っすけどねー、アバドンもルシファーもあーたに満点あげてるっすから」
「一応、評価を聞こうか」
「元貴族なだけあってマナーや品性、教養は完璧っす。見てくれもいい線行ってるし、性格も全然着飾らねーし、誰であろうと分け隔てなく接するし、思考も庶民的っす。何より、主様とイナンナ様の夢に共感して、率先して他人のために動ける。こいつが何よりもでかいっす。あーたならイナンナ様の夢と主様を託せるっすよ」
マステマはセレヴィの胸に指を押し付け、ぐりぐりと捻り込んでくる。まるで、「ガレオンを頼むぞ」と言わんばかりに。
「個人的な頼みっす、主様を幸せにしてやってくれっす。あーたなら絶対出来るっすよ。マブダチのあーしが保証してやるっす。万一玉砕しちまっても心配すんなっす、あーしが責任もってあーたを貰ってやるっすから♪」
「はは、まぁお前の嫁になら、なってもやぶさかじゃないな」
マステマの手を握り、セレヴィは頷いた。
「私、イナンナに挑んでみるよ。ガレオンを必ず振り向かせる。だって……私だってガレオンが大好きだからな」
勝負は皇霊祭。その日がセレヴィの決戦の日だ。
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