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12話 作戦の狙い

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 エスペランサは積極的に僕に付いてくるようになった。
 僕が危険な策を考案した時も、彼女は躊躇う事なく協力してくれて、いつしか彼女と異世界狩りをするのが当たり前となりつつある。

 一人を特別扱いすると、チームに亀裂が入りかねないから控えたいのだけど、エスペランサが頼りになるから、つい僕も彼女に無茶を頼んでしまう。幸いな事に、誰もが嫌がるような策も進んで参加してくれるから、不平不満は上がらなかった。

 と言うか、いつの間にか副リーダーのような扱いになっていて、ナンバー2の地位を確立していた。流石は魔王役、人心掌握はお手の物みたいだ。

「シズナも気が付いたら参謀役と言うか、ナンバー3的な感じになってるよね」
「特別な事はしていないんだけどな。ユウタの策に「大丈夫か?」って聞くくらいだぞ」
「でもその言葉が作戦の見直しにつながるから、僕としてはありがたいんだ。君に言われて欠陥に気付いた作戦も多いし、冷静に見てくれるシズナは頼もしいよ」
「そう言ってくれると嬉しいね。それじゃあそろそろ、冷静な目線の話をしようか。……ユウタの描くゴール地点はどこだ? 最終目標が皆の人権を神に認めさせるのは分かっている、けど実現するための青写真がいまいち見えてこないんだ」
「まず皆の地位を認めさせるには、神達のトップに直談判する必要がある。この活動を通してそいつを引きずり出して、会談の場を設けるのがゴールになるよ」
「神達のトップを……!」

 神の世界を統治しているのは、創造神って奴だ。異世界の仕組みを作ったのもそいつなんだよ。でも創造神は異世界システムを作った後、運営を他の神達に丸投げしたらしい。
 元々は、神達が「哀れな人間を救うためのシステムを作りたい」と言い出して、創造神も賛同して作り上げたそうだ。でも実は神々の嘘で、本当は「自分達が楽して稼ぐ仕組み」を作ろうとしていたんだよね。

 見事に騙された創造神はその経緯もあって、異世界の存在に疑問を持っているみたいなんだ。けど異世界をどうにかしようにも、あまりにもシステムが膨張しすぎた上に、一部の神は最初の理念にのっとった運営をしているから、手を出せない状況だそうだ。

「これだけ派手にやらかしても放置されている時点で、創造神がどっちの肩を持っているのか分かるでしょ。僕らの抗議の声は、確実に創造神に届いているんだよ」
「確かに、トップの動き方を見ればどっちの味方なのかは分かるな。それで、創造神を交渉の場に引きずり出す道筋はどうなってる」
「多分だけど、神達は今頃無意味な話し合いを続けていると思うんだよ。どうすれば異世界狩りをしている僕を排除できるのかって。でも自分達でやりゃいいのに、全部運営に押し付けているわけだからね、解決するどころか空中分解寸前の大喧嘩をしているはずだよ。リーダー格となってるアテナのせいでね」

 僕はわざとアテナの異世界を多く攻撃している。私怨も含まれているけれど、神側に動きを促すリーダーを作るためだ。
 自分が一番被害を受けているとなれば、アテナの性格上当然仲間を募って抗議団体を作るだろう。「最大の被害者の呼びかけ」ほど、影響力のあるものはない。同じ被害者達がアテナをトップに集まって、異世界狩りの対策に乗り出すはずだ。

「現に、アテナ達は何度も集まり会合を開いているな。しかし」
「何一ついい案が思い浮かばない。当たり前だよ、現場を全部奴隷に丸投げして、自分達は高みの見物をしているんだから。その現場が皆敵に回ってるとも知らずにね。そして楽して収入を得ようなんて怠け者達が集まったらどうなるか……想像しただけで笑っちゃうよ」
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