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6話 リーダーの資質

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 僕が異世界潰しを始めて一週間が経った。
 魔王達の力を借り、たった一週間で三十件もの被害を出している。神達はようやく重い腰を上げたのか、運営にクレームを入れに来た。

「ええい! あの仮面男は一体何者なんですかっ! いくら人間を送り込んでも次から次へと台無しにして……早く特定して摘まみだしなさい!」

 クレームを入れに来た神達の先頭には、アテナが立っていた。僕はシズナ、エスペランサの二人と一緒に、様子を伺った。
 と、神が職員の一人に暴力を振るった。危うく飛び出しかけたけど、二人に止められ事なきを得た。

「誰のおかげで生かされているのか、よく考える事ですねっ!」

 やれやれ、異世界の運営を丸投げしている癖に、随分な言い草だ。でもその怠慢のおかげで、僕達が潜み、行動する隙が出来ている。言われた通り、感謝しといてやるとしよう。

「大丈夫かい? 痛かっただろ」
「ええ、ですが問題ありません」
「そうそう! こっちにはリーダーが居るんだ、私達のために戦ってくれる、心強いリーダーが」

 皆から期待の眼差しを受け、僕は頷いた。
 革命の機運は皆を勇気づけ、神に歯向かう意思を育てている。その先頭に立つ以上、僕も頑張らないとな。

「ボチボチ、次のフェーズに行くべきだね。これまでは初心者の転生者、転移者を狙ってきたけど、次はそれなりの経験を積んだ中堅クラスを狙っていく必要がある」
「それは確かに思うが、大丈夫なのか? これまでと違ってチートスキルを使いこなしている連中ばかりだ、下手すれば返り討ちに遭うぞ?」
「言いたくないけど、神から与えられた力はとてつもないわ。私達が束になっても果たして勝てるかどうか」
「そこは大丈夫。考えてみてよ、僕達は異世界の運営を丸々抑え込んでるんだよ」
「転生者達がチート能力を使えないよう干渉するのか? だがそれは無理だ、異世界には干渉できないブラックボックスがある。異世界を成立させるためのゴールデンルールがな」
「転生者達には特に強力なプロテクトがかかっていて、力を封じれないのよ」
「違う違う。ここに居るでしょう? 異世界とはまるで関係ない人間がさ」

 僕が胸を叩くと、二人ははっとした。

「……理論上は可能だろうが、大丈夫か? 実用例のない試みだ、どんなリスクがあるか分からないぞ」
「リスクならとっくに負っているよ、今さら上乗せしたって関係ない。まぁ皆に背負わせるわけにはいかないから、この裏技は僕が全部試すよ」

 リーダーとして、僕は全責任を取らなければならない。異世界の裏側を利用して、調子に乗っている神達に更なる攻撃を加えてやるぞ。

「気を付けてねユウタ、貴方の身に何かがあったら、私は……」
「心配ないよ、エスペランサが待っていてくれるから」

 僕は不安げに見つめてくるエスペランサを励ました。彼女は潤んだ目で頷き、僕にもたれかかった。

「両腕があれば、貴方を抱きしめられるのに」
「ありがとう、君は優しいね。気持ちは凄く嬉しいよ」
「……ここまでされて気づかないか、罪な奴だ」

 シズナが何だか呆れたように言ったけど、どういう意味だろうか。
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