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2話 悪役たちの掃き溜め
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こうして僕は地の獄へ堕とされた。そこは野戦病院のような場所で、収容されているのは……神々が造った異世界でやられた悪役達だった。
「ぐああ……いてぇ、いてぇよぉ……!」
「あんな能力持ちに勝てるわけが……あぐぅぅ……」
「もう行きたくない……異世界に、行きたくないぃぃ……」
腕や足がもがれ、大けがをした悪役や魔王がベッドの上でのたうち回っている。僕は半年以上、不眠不休で彼らの看病をさせられていた。
神々は異世界を造った後、そこにボスキャラを配置し、連れて来たチート持ちの人間と戦わせているそうだ。でも彼らは所詮やられ役、チート能力で再起不能になるくらいぼこぼこにのされた後、この地獄に落とされ治療を受けるんだ。
そして治ったらまた、別の異世界へ派遣される。もしくは、神達の奴隷として身の回りの世話尾させられるそうで、彼らに安息の瞬間など訪れない。
「大丈夫? 気分は悪くない?」
「……最悪よ」
僕は寝たきりになった女魔王の食事介助をしていた。名前はエスペランサ、黒の長髪が目を引く美人だけど、両腕をもがれる大けがをしている。異世界に来た超スキル持ちに嬲り殺しにされたそうだ。
「あんたも災難ね、神に殺されただけでも酷いのに、こんな場所へ堕とされるなんて」
「あいつらって皆こうなの?」
「そうよ。私達の命なんて何とも思っていない、最低最悪のクソ野郎ども。それが神よ。勝手に人間を殺して、おだてて調子に乗らせて、「かわいそうだ」とか「お詫びに」なんて心無い言葉で能力を渡して……そのとばっちりを受けるのは誰だと思っているのよ」
エスペランサは悔しそうに吐き捨てた。
なんて悲しい場所なんだろう、人間達が呑気に異世界生活を謳歌している裏で、こんなにも沢山の者達が苦しむなんて。
「僕にできる事があったら、なんでも言ってよ」
「ありがとう、優しいのね、あんたは」
エスペランサはため息を吐くと、眠りについた。
もがれた腕は二週間で治るそうだけど、そしたらまた、次の異世界へ連れていかれてしまうそうだ。他の悪役たちにも安息の時間なんてない。
こんな、歪んだ世界があっていいのか。命を自分達の欲望のまま弄ぶ神達を許すわけにはいかない。
「新人、昼飯の時間だ」
僕の指導役である男エルフが肩を叩いた。彼はシズナ、中性的な面立ちの少年だ。
とある異世界で転生者の従者をしていたそうだけど、世界の仕組みに気付いた結果、口封じにこの地獄へ堕とされたんだ。
この場所で働いているのは、そうした歪みを知ってしまった者達ばかりだ。僕とシズナは黙々と味のないパンとスープを食べていたけど、
「ねぇシズナ、話が終わった異世界ってどうなるの?」
「廃棄される、それで新しい世界を作るんだ。転生や転移をさせられた人間も、最終的には消される末路なんだ」
「そこに居た人たちはどうなるの」
「主要な人物は残されて次の世界に回されるけど、他のモブ達は全員廃棄さ。名ありの人物はコストがかかるから使いまわしされるんだと」
「酷いな、神に心ってないのかな」
「あったらこんな事はしないだろ」
確かにその通りだ。あいつらには何の良心もない、そんな奴らに弄ばれたままで、いいわけがない。
……それにあの、アテナってクソ女神。あいつに一泡吹かせないと、腹の虫も収まりやしない。
やってやる、この掃き溜めのような場所から、神への反逆を。人間様の意地と根性なめんなよ。
「ぐああ……いてぇ、いてぇよぉ……!」
「あんな能力持ちに勝てるわけが……あぐぅぅ……」
「もう行きたくない……異世界に、行きたくないぃぃ……」
腕や足がもがれ、大けがをした悪役や魔王がベッドの上でのたうち回っている。僕は半年以上、不眠不休で彼らの看病をさせられていた。
神々は異世界を造った後、そこにボスキャラを配置し、連れて来たチート持ちの人間と戦わせているそうだ。でも彼らは所詮やられ役、チート能力で再起不能になるくらいぼこぼこにのされた後、この地獄に落とされ治療を受けるんだ。
そして治ったらまた、別の異世界へ派遣される。もしくは、神達の奴隷として身の回りの世話尾させられるそうで、彼らに安息の瞬間など訪れない。
「大丈夫? 気分は悪くない?」
「……最悪よ」
僕は寝たきりになった女魔王の食事介助をしていた。名前はエスペランサ、黒の長髪が目を引く美人だけど、両腕をもがれる大けがをしている。異世界に来た超スキル持ちに嬲り殺しにされたそうだ。
「あんたも災難ね、神に殺されただけでも酷いのに、こんな場所へ堕とされるなんて」
「あいつらって皆こうなの?」
「そうよ。私達の命なんて何とも思っていない、最低最悪のクソ野郎ども。それが神よ。勝手に人間を殺して、おだてて調子に乗らせて、「かわいそうだ」とか「お詫びに」なんて心無い言葉で能力を渡して……そのとばっちりを受けるのは誰だと思っているのよ」
エスペランサは悔しそうに吐き捨てた。
なんて悲しい場所なんだろう、人間達が呑気に異世界生活を謳歌している裏で、こんなにも沢山の者達が苦しむなんて。
「僕にできる事があったら、なんでも言ってよ」
「ありがとう、優しいのね、あんたは」
エスペランサはため息を吐くと、眠りについた。
もがれた腕は二週間で治るそうだけど、そしたらまた、次の異世界へ連れていかれてしまうそうだ。他の悪役たちにも安息の時間なんてない。
こんな、歪んだ世界があっていいのか。命を自分達の欲望のまま弄ぶ神達を許すわけにはいかない。
「新人、昼飯の時間だ」
僕の指導役である男エルフが肩を叩いた。彼はシズナ、中性的な面立ちの少年だ。
とある異世界で転生者の従者をしていたそうだけど、世界の仕組みに気付いた結果、口封じにこの地獄へ堕とされたんだ。
この場所で働いているのは、そうした歪みを知ってしまった者達ばかりだ。僕とシズナは黙々と味のないパンとスープを食べていたけど、
「ねぇシズナ、話が終わった異世界ってどうなるの?」
「廃棄される、それで新しい世界を作るんだ。転生や転移をさせられた人間も、最終的には消される末路なんだ」
「そこに居た人たちはどうなるの」
「主要な人物は残されて次の世界に回されるけど、他のモブ達は全員廃棄さ。名ありの人物はコストがかかるから使いまわしされるんだと」
「酷いな、神に心ってないのかな」
「あったらこんな事はしないだろ」
確かにその通りだ。あいつらには何の良心もない、そんな奴らに弄ばれたままで、いいわけがない。
……それにあの、アテナってクソ女神。あいつに一泡吹かせないと、腹の虫も収まりやしない。
やってやる、この掃き溜めのような場所から、神への反逆を。人間様の意地と根性なめんなよ。
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