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3部
178話 ニア・エンカウンター
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「んで、リナルドに剣を教える事になったと」
秋が終わる頃、シンギに向かう馬車の中で、ハローとエドウィンは話していた。
ハローは周囲を警戒しつつ、リナルドの姿を思い返して、目じりを下げた。
「アマトのために強くなりたいだなんて、いい子だよなぁ。あんな子が俺の息子だぞ? いやぁ、リナルドは俺の誇りだよ」
「子供自慢はいいっての。こちとら毎日赤ん坊の世話で忙しいから、子供の話はうんざりなんだ。今日はいい骨休めだよ、子供の世話から離れられるからな」
「の割に、貧乏ゆすりが激しい気がするけど?」
ハローはにやりとした。馬の歩調もいつもより早い。すぐにでも帰宅したい気持ちが如実に表れていた。
ハローは見ていたのだ、エドウィンが自分以上に子煩悩なのを。ミネバが嫉妬するくらい、息子二人に夢中になっているのを。彼の本音は、「とっとと帰って子供の傍に居たい」だ。
「兄がヴァン、弟がガイだっけ。二人とも可愛いもんな」
「うるせぇ、それ以上余計な事言ったら口縫い合わせるぞこら」
「おー恐い恐い、じゃあ黙ってますよ」
ハローはからかいつつ、銃を構えた。
間髪入れずに三つの銃声。三人の野盗の頭を打ち抜いた。
生き残った仲間達も、一人残らず撃ち殺す。ハローはため息をつき、弾倉を交換した。
「全く、なんで学習しないかな。人の物を盗ろうとしたらああなるって」
「馬鹿は死んでも治らないもんさ。そろそろ着くぞ、ちょっぱやで用事、済ませるからな」
シンギにて二人は、手早く用事を済ませた。独身時代の二人なら用事を済ませた後、ぐだぐだと市場を見て冷やかし回っていたが、今は奥さんに子供の面倒を任せている身だ。
早く帰って家族の顔が見たい。のと、遅くなって奥さんに怒られるのが嫌だから、早急に仕事を終わらせた。
昼頃には全部の用件が終わり、ラコ村に帰るかとなった時だった。
「ど、ドロボーっ!!」
女性の大声が聞こえるなり、二人の横を男が走り抜けた。
「ひったくりか、足速い奴だな」
「のんびり見てる場合じゃないって」
ハローはひったくりを追いかけ、首根っこを掴んだ。当然ひったくりから抵抗されるも、殴打一発で地面に叩きつけてやる。
「悪い事したら碌な目に遭わないぞ。おーい憲兵さーん!」
ひったくりを憲兵に預けたハローは、取り返した財布を女性に返した。
フードを目深に被った女性だった。傍らには同じく顔を隠した男性が寄り添っている。
「ありがとう! 助かったよぉー」
「災難だったね、怪我とかはない? あったらこのお医者さんが治してくれるよ」
「おいこら、何ただ働きさせようとしてんだ」
と言いつつ、女性が擦り傷を負っているのを見るなり治療するエドウィンだった。
「重ね重ね世話になるね、ありがとさん。これは何か礼をしないと」
「余計な事をするな」
男が女を制止したが、彼女は首を振った。
「借りは返すもんだろ。一杯奢るよ」
「いや、馬車で来たから。それに対した事してないし、いらないよ」
「んじゃあ串焼きでどうだい? 恩を受けっぱなしなのは性に合わないんだ」
「こりゃ引き下がりそうにないな。ま、小腹も減ったし、一本くらいなら付き合うか」
女性の好意に甘え、二人は屋台へ向かった。
秋が終わる頃、シンギに向かう馬車の中で、ハローとエドウィンは話していた。
ハローは周囲を警戒しつつ、リナルドの姿を思い返して、目じりを下げた。
「アマトのために強くなりたいだなんて、いい子だよなぁ。あんな子が俺の息子だぞ? いやぁ、リナルドは俺の誇りだよ」
「子供自慢はいいっての。こちとら毎日赤ん坊の世話で忙しいから、子供の話はうんざりなんだ。今日はいい骨休めだよ、子供の世話から離れられるからな」
「の割に、貧乏ゆすりが激しい気がするけど?」
ハローはにやりとした。馬の歩調もいつもより早い。すぐにでも帰宅したい気持ちが如実に表れていた。
ハローは見ていたのだ、エドウィンが自分以上に子煩悩なのを。ミネバが嫉妬するくらい、息子二人に夢中になっているのを。彼の本音は、「とっとと帰って子供の傍に居たい」だ。
「兄がヴァン、弟がガイだっけ。二人とも可愛いもんな」
「うるせぇ、それ以上余計な事言ったら口縫い合わせるぞこら」
「おー恐い恐い、じゃあ黙ってますよ」
ハローはからかいつつ、銃を構えた。
間髪入れずに三つの銃声。三人の野盗の頭を打ち抜いた。
生き残った仲間達も、一人残らず撃ち殺す。ハローはため息をつき、弾倉を交換した。
「全く、なんで学習しないかな。人の物を盗ろうとしたらああなるって」
「馬鹿は死んでも治らないもんさ。そろそろ着くぞ、ちょっぱやで用事、済ませるからな」
シンギにて二人は、手早く用事を済ませた。独身時代の二人なら用事を済ませた後、ぐだぐだと市場を見て冷やかし回っていたが、今は奥さんに子供の面倒を任せている身だ。
早く帰って家族の顔が見たい。のと、遅くなって奥さんに怒られるのが嫌だから、早急に仕事を終わらせた。
昼頃には全部の用件が終わり、ラコ村に帰るかとなった時だった。
「ど、ドロボーっ!!」
女性の大声が聞こえるなり、二人の横を男が走り抜けた。
「ひったくりか、足速い奴だな」
「のんびり見てる場合じゃないって」
ハローはひったくりを追いかけ、首根っこを掴んだ。当然ひったくりから抵抗されるも、殴打一発で地面に叩きつけてやる。
「悪い事したら碌な目に遭わないぞ。おーい憲兵さーん!」
ひったくりを憲兵に預けたハローは、取り返した財布を女性に返した。
フードを目深に被った女性だった。傍らには同じく顔を隠した男性が寄り添っている。
「ありがとう! 助かったよぉー」
「災難だったね、怪我とかはない? あったらこのお医者さんが治してくれるよ」
「おいこら、何ただ働きさせようとしてんだ」
と言いつつ、女性が擦り傷を負っているのを見るなり治療するエドウィンだった。
「重ね重ね世話になるね、ありがとさん。これは何か礼をしないと」
「余計な事をするな」
男が女を制止したが、彼女は首を振った。
「借りは返すもんだろ。一杯奢るよ」
「いや、馬車で来たから。それに対した事してないし、いらないよ」
「んじゃあ串焼きでどうだい? 恩を受けっぱなしなのは性に合わないんだ」
「こりゃ引き下がりそうにないな。ま、小腹も減ったし、一本くらいなら付き合うか」
女性の好意に甘え、二人は屋台へ向かった。
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