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3部
174話 勇者になった理由
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ハローとリナルドは馬から降り、山を登っていた。
さほど高くなく、リナルドでも問題なく登れる山だ。だけども川遊びで疲れたか、中腹でへばってしまう。
手を貸そうとしたら、リナルドは「いらない」と首を振る。
「お父さんみたいに、かっこよくなるんだっ、僕一人でっ、登るよっ」
「リナルド……! この上ないくらい嬉しい事言ってくれるじゃないか」
ならばリナルドの成長を見届けるまで。転んでもいいよう後ろを歩き、ハローはリナルドを見守った。
無事に山頂に到着し、ハローはリナルドを抱き上げた。
眼下には、広大な森が広がっている。ぽつんと小さいがラコ村が見えて、リナルドは息を呑んだ。
この場所はハローのお気に入りで、いつかリナルドに見せようと思っていた場所だ。
「どうだ、巨人になったみたいだろ」
「うん! あそこが僕達の村だよね」
「そうだぞ。ナルガとアマトは何してるかな」
「仲良くしてるよ、きっと」
景色を楽しみながら、ハローとリナルドは色んな事を話した。その中でリナルドは、ハローにこんな事を聞いた。
「お父さんはどうして勇者になったの?」
「……世界から理不尽を失くしたい、って思ったからだな。俺が親から売られたのは教えたろ?」
「うん、貴族のお屋敷に買われたんでしょ」
「そう。毎日暴力振るわれて、食事もろくにくれなくて、悔しい思いをしたもんさ。その貴族は俺が十の時に没落して、ある商人が火事場泥棒で財産掠め取ったどさくさに、俺を丁稚として拾ったんだ」
その商人こそ、エドウィンを買い取った商人である。そこでもハローは、エドウィンと一緒に奴隷としてこき使われた。
「俺のような境遇の人間は、この世にごまんと居る。そんな不条理をずっと変えたくて、俺やエドのような、悲しい思いをする人が居ない世界を作りたくて、俺は聖剣を受け入れた。勇者の地位があれば出来ると思ったからな。実際、俺について来てくれた人は多かった。エドに、マックとミレイユ。皆、俺に賛同して、同じ想いを抱いてくれた。けど……俺は守れなかった」
両手を見つめ、ハローはかぶりを振った。
どれだけ大きな力を得ても、所詮ハローは一人の人間でしかない。この世の全てを守れるほど、ハローの手は大きくなかったのだ。
「けど失って、分かった事もある。俺は俺の、手の届く範囲しか守れないのだと。エドにオクト、ミネバ、リナルド、アマト……何より、ナルガ。俺が背負える命は、ほんのわずかしか居ない。だから俺は、残された大切な人達を、俺の全てを賭けて守り抜く。今の俺は、そう誓っているんだ」
立ち上がったハローは、「うおー!」と大声を発した。そしたらリナルドも真似して、「うおー!」と可愛い雄たけびを上げる。リナルドの頭を撫でて、ハローは義息子を肩車した。
裕福でなくていい、地位も要らない。家族と安らかに過ごせる、小さくとも確かな幸せ。それがハローの守るべき宝物だ。
さほど高くなく、リナルドでも問題なく登れる山だ。だけども川遊びで疲れたか、中腹でへばってしまう。
手を貸そうとしたら、リナルドは「いらない」と首を振る。
「お父さんみたいに、かっこよくなるんだっ、僕一人でっ、登るよっ」
「リナルド……! この上ないくらい嬉しい事言ってくれるじゃないか」
ならばリナルドの成長を見届けるまで。転んでもいいよう後ろを歩き、ハローはリナルドを見守った。
無事に山頂に到着し、ハローはリナルドを抱き上げた。
眼下には、広大な森が広がっている。ぽつんと小さいがラコ村が見えて、リナルドは息を呑んだ。
この場所はハローのお気に入りで、いつかリナルドに見せようと思っていた場所だ。
「どうだ、巨人になったみたいだろ」
「うん! あそこが僕達の村だよね」
「そうだぞ。ナルガとアマトは何してるかな」
「仲良くしてるよ、きっと」
景色を楽しみながら、ハローとリナルドは色んな事を話した。その中でリナルドは、ハローにこんな事を聞いた。
「お父さんはどうして勇者になったの?」
「……世界から理不尽を失くしたい、って思ったからだな。俺が親から売られたのは教えたろ?」
「うん、貴族のお屋敷に買われたんでしょ」
「そう。毎日暴力振るわれて、食事もろくにくれなくて、悔しい思いをしたもんさ。その貴族は俺が十の時に没落して、ある商人が火事場泥棒で財産掠め取ったどさくさに、俺を丁稚として拾ったんだ」
その商人こそ、エドウィンを買い取った商人である。そこでもハローは、エドウィンと一緒に奴隷としてこき使われた。
「俺のような境遇の人間は、この世にごまんと居る。そんな不条理をずっと変えたくて、俺やエドのような、悲しい思いをする人が居ない世界を作りたくて、俺は聖剣を受け入れた。勇者の地位があれば出来ると思ったからな。実際、俺について来てくれた人は多かった。エドに、マックとミレイユ。皆、俺に賛同して、同じ想いを抱いてくれた。けど……俺は守れなかった」
両手を見つめ、ハローはかぶりを振った。
どれだけ大きな力を得ても、所詮ハローは一人の人間でしかない。この世の全てを守れるほど、ハローの手は大きくなかったのだ。
「けど失って、分かった事もある。俺は俺の、手の届く範囲しか守れないのだと。エドにオクト、ミネバ、リナルド、アマト……何より、ナルガ。俺が背負える命は、ほんのわずかしか居ない。だから俺は、残された大切な人達を、俺の全てを賭けて守り抜く。今の俺は、そう誓っているんだ」
立ち上がったハローは、「うおー!」と大声を発した。そしたらリナルドも真似して、「うおー!」と可愛い雄たけびを上げる。リナルドの頭を撫でて、ハローは義息子を肩車した。
裕福でなくていい、地位も要らない。家族と安らかに過ごせる、小さくとも確かな幸せ。それがハローの守るべき宝物だ。
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