上 下
165 / 207
3部

166話 アマト

しおりを挟む
 エドウィンの適切な処置もあり、母子ともに予後は順調だった。
 翌朝。エドウィンの健康診断を終えた赤子は、ナルガの腕ですやすやと眠っている。ハローはリナルドを抱え、ふやけた顔で家族を眺めていた。

「子供を抱いた女性って、なんで綺麗なんだろな。それがナルガともなると……女神が顕現したみたいだ」
「気色悪いから口閉じろアンポンタン。にしても中々がっちりした赤ん坊だ、体にも特段問題ないし、健康優良児だよ」
「なによりな知らせだ。重ね重ね、世話になるな」
「いえいえ、今後も何かありましたら、お気軽にお問い合わせください」
「なんでミネバが答えるんだよ」

 エドウィンは口を尖らせた。そしたら、赤子がぐずり始める。

「腹空かせたのかもな。ミネバ任せた、おら出てくぞアホ亭主」
「え、なんで?」
「授乳の時間だぞ、空気読め。いくら夫の前でも、真昼間から目の前で胸さらけ出すのは控えたいだろが」
「そっか、そうだよね。席外すよ」
「そうしてもらうと助かる」

 ナルガはちょっと恥ずかしそうだ。ハローは時折デリカシーが無い。
 外に待機している間、ハローはリナルドを背負ってくるくる歩き回った。リナルドはきゃっきゃと楽しんでいたが、思い出したようにハローの頭を叩いた。

「お父さん、赤ちゃんの名前どうするの?」
「忘れてた! どうしよ、何も思い浮かばないよ。……エド」
「僕に縋りつくんじゃないよノータリン。子供の名前くらい自分で考えろ、親が与える最初の誕生日プレゼントだぞ、そんな大事な物を他人任せにすんな」
「プレゼント……そうだよね、ちゃんと俺が決めないと」

 ハローはリナルドを下ろし、目を閉じて考えた。
 女の子らしくて、かつ誇らしく思える名前。なけなしの知識を総動員して、ある名前がひらめいた。

「これだ! 早速ナルガに」
「まだ授乳中だろが」

 エドウィンに首根っこを掴まれ、ハローは盛大に転んだ。前よりエドウィンの腕力が強くなってる。

「筋肉ついたね」
「ずっと鍛えてるからな、お前に比べれば物凄く非力だけどよ」
「こりゃ、頼もしいお父さんになれそうだ」
「なんなきゃダメなんだよ。さて、ミネバ! 終わったか?」
「ええ、丁度今。入っても大丈夫ですよ」

 ハローはすぐに駆け込んだ。ナルガは赤子に指を握らせ、鼻歌を歌っていた。
 見惚れつつも、ハローはナルガに「名前が決まった」と伝えた。

「アマト、それがこの子の名前だよ」
「良い名だ、意味を教えてくれるか?」
「光の神様の名前だよ。この子は俺達の光だからね、ぴったりな名前だと思うんだけど」
「ふふ、大きな名だな。だが悪くない」

 ナルガも気に入ってくれたようで、ハローは満足だ。
 アマト・マンチェスター。二人は赤子の名を呼び、未来に思いを馳せた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界八険伝

AW
ファンタジー
これは単なる異世界転移小説ではない!感涙を求める人へ贈るファンタジーだ! 突然、異世界召喚された僕は、12歳銀髪碧眼の美少女勇者に。13歳のお姫様、14歳の美少女メイド、11歳のエルフっ娘……可愛い仲間たち【挿絵あり】と一緒に世界を救う旅に出る!笑いあり、感動ありの王道冒険物語をどうぞお楽しみあれ!

慟哭の時

レクフル
ファンタジー
物心ついた時から、母と二人で旅をしていた。 各地を周り、何処に行くでもなく旅をする。 気づいたらそうだったし、何の疑問も持たなくて、ただ私は母と旅を続けていた。 しかし、母には旅をする理由があった。 そんな日々が続いたある日、母がいなくなった。 私は一人になったのだ。 誰にも触れられず、人と関わる事を避けて生きていた私が急に一人になって、どう生きていけばいいのか…… それから母を探す旅を始める。 誰にも求められず、触れられず、忘れ去られていき、それでも生きていく理由等あるのだろうか……? 私にあるのは異常な力だけ。 普通でいられるのなら、こんな力等無くていいのだ。 だから旅をする。 私を必要としてくれる存在であった母を探すために。 私を愛してくれる人を探すために……

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

弟子に”賢者の石”発明の手柄を奪われ追放された錬金術師、田舎で工房を開きスローライフする~今更石の使い方が分からないと言われても知らない~

今川幸乃
ファンタジー
オルメイア魔法王国の宮廷錬金術師アルスは国内への魔物の侵入を阻む”賢者の石”という世紀の発明を完成させるが、弟子のクルトにその手柄を奪われてしまう。 さらにクルトは第一王女のエレナと結託し、アルスに濡れ衣を着せて国外へ追放する。 アルスは田舎の山中で工房を開きひっそりとスローライフを始めようとするが、攻めてきた魔物の軍勢を撃退したことで彼の噂を聞きつけた第三王女や魔王の娘などが次々とやってくるのだった。 一方、クルトは”賢者の石”を奪ったものの正しく扱うことが出来ず次第に石は暴走し、王国には次々と異変が起こる。エレナやクルトはアルスを追放したことを後悔するが、その時にはすでに事態は取り返しのつかないことになりつつあった。 ※他サイト転載

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

処理中です...