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159話 感謝の気持ち

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 ラコ村に戻ると、ナルガ達が駆け寄り、子供達を抱きしめた。彼女も銃声を聞き、リナルドの身を案じていたのだ。

「無事だったか、心配をかけるな」
「ごめんなさい……お医者さんに、迷惑かけちゃった……」
「エド兄ごめん……」
「あー、気にするな。あれは事故だ、お前らが悪いわけじゃない。ああいう時にお前達を助けるのが僕の役目だ、謝る必要なんかないよ」

 噛まれた痕を隠し、エドウィンはそう言った。

「……お医者さん、怒らないの? お父さんも、お母さんも?」
「エドが言ったように、リナルドが悪戯をしたわけじゃない。だから怒る理由がないさ」

 そう言うハローに、エドウィンが耳打ちした。

「父親からは一言あってもいいんじゃないのか?」
「リナルドはずっと昔に、一生分怒られたんだ。だから、出来れば𠮟りたくないんだよ」
「甘々だねぇ……おいリナルド、渡さなくていいのか。ミネバ、あれは無事か?」
「はいどうぞ、エドさんのおかげで、形を崩さずに済みましたよ」
「だからおだてるなよ。ほら、とっとと出してやれ」

 照れるエドウィンに促され、リナルドはおずおずと、ハローとナルガにブーケを渡した。
 二人は驚くと、リナルドに礼を言い、抱きしめてくれた。お礼を言わないといけないのはリナルドなのに、上手く言葉が出てこない。

「お前らに感謝を伝えたかったんだとさ。ぶきっちょなりに、頑張ってブーケを作ってたよ」

 そしたらエドウィンが助け舟を出してくれた。彼を見上げると、「ふん」と鼻を鳴らして顔を背けた。

「本当にありがとなリナルド。こんなに気持ちのこもったプレゼントは初めてだ」
「お前のような息子を持って、母として誇らしいぞ」
「へへへ……」

 二人から褒められ、リナルドは頬を染めた。ワーウルフが出て来た時は恐かったけど、エドウィンが助けてくれたから、心強かった。

「お医者さん、ありがと」
「だから礼なんかいらないっての。そんなもん腹の足しにならないからな」
「もう、素直じゃないんですから」

 ミネバは苦笑し、エドウィンを小突いた。

「そうだ! 皆さん揃っていますし、報告させていただいてもよろしいですか?」
「おいおい、今やるのかよ」
「だって、早く伝えたいんですもの」

 ミネバは腹を摩ると、ピースサインを出した。

「私も身ごもりました。二ヶ月です」
「へぇ! おめでとエド! お前も親父になるんだな」
「どうりで、普段見せない意地を張ったわけだ」
「茶化すな、こうなるから伝えるの嫌だったんだよ」

 エドウィンは唇を尖らせた。

「収穫祭を前に祝い事が続くな。縁起が良くていいものだ」
「だね。これは気持ちよく冬を迎えられそうだ、リナルドが来てからいい事尽くしだよ」

 ハローはリナルドを肩車した。
 かつての母に言われた、「お前のせいで皆が不幸になる」の言葉。今ははっきりと否定できる。
 だって、ここに居る人達は皆不幸になっていない。元母の言葉が嘘だと、胸を張って言い返せる。
 僕はここに居ていいのだと、胸を張って言えた。
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