上 下
151 / 207
3部

151話 甘えていたいリナルド

しおりを挟む
 リナルドにとって、日曜日は楽しみな日だ。
 ハローに連れ添われ、リナルド達は教会へ向かっている。週に一度の日曜学校の日だ。

「遅いよリナルド、早く早く!」
「う、うん!」

 ミコに手を引かれ、リナルドはよろけながら駆け出した。
 日曜学校は大好きだ。勉強は楽しいし、分からない所はシスターが優しく教えてくれるから、安心して取り組める。知識が増える喜びと充足感は得も言えない感覚だ。

「慌てるなよー、教会は逃げたりしないからさ」
「慌ててないよ、ミコの方がリナルドよりお姉さんだからリードしてるの!」
「すっかりリナルドの姉貴分だな。将来有望だよ」
「そう! ミコは将来有望なの!」

 えっへんとミコは胸を張った。リナルドも真似してみたら、ハローは笑って頭を撫でてくれた。
 ハローに撫でられるのも大好きだ。父の大きな手に触れると、ほっとする。

「勿論リナルドも将来有望さ、きっと俺より大物になれるよ」
「でもお父さんは、勇者だったんでしょ? 僕、なれるかな」
「たまたまなっただけさ、俺はまともに教育を受けられなくて、エドに教わるまで自分の名前すら書けなかったんだ。五歳で読み書きができるリナルドの方がずっと凄いよ」

 ハローはリナルドを肩車した。ハローの目線で見る世界はとても高くて、リナルドはわくわくした。

「僕もお父さんくらい、大きくなれる?」
「好き嫌いせず、ちゃんと食べてればな」
「ねぇねぇハロー兄、ミコも!」

 ハローがミコも抱え上げると、子供達が我も彼もと抱っこを要求してくる。ハローは片っ端から子供達を持ち上げたが、きりがない。

「よし! 教会まで追いかけっこだ! 俺を捕まえたら抱っこしてあげるよ!」

 ハローを追いかけ、リナルド達は走り出した。
 教会に着く頃には疲れてしまい、皆くったりしてしまった。
 ハローはシスターから「子供達がへとへとじゃないですか」と怒られていた。リナルドはミコと一緒に叱られる父を見つつ、

「ハロー兄がお父さんでよかったね」
「うん、大好きなお父さんだよ」

 時々格好悪いけど、リナルドにとって自慢の父親だ。
 シスターから解放されたハローはリナルドの頭を撫で、

「じゃあ一旦村に戻るよ。帰りの時間に迎えに来るから、しっかりな」
「うん」

 帰っていく父に手を振り、リナルドはミコに手を引かれて教会へ向かった。

「でもリナルドはもうすぐお兄ちゃんになるんだよね。そうなったらお父さんに甘えてばっかじゃだめだよ」
「そうなの?」
「お兄ちゃんお姉ちゃんは、ミコみたいにお手本にならないといけないの。だから、お父さんとお母さんのお手伝いとかしっかりやって、下の子を守ってあげないとダメなんだよ」

 姉のシェリーも、横暴な元母からリナルドを守り続けてくれた。赤ちゃんが産まれたら、リナルドも同じように弟妹を助けないといけない。
 ……でも、僕だってお父さんとお母さんに抱きしめてもらいたいな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

人間だった竜人の番は、生まれ変わってエルフになったので、大好きなお父さんと暮らします

吉野屋
ファンタジー
 竜人国の皇太子の番として預言者に予言され妃になるため城に入った人間のシロアナだが、皇太子は人間の番と言う事実が受け入れられず、超塩対応だった。シロアナはそれならば人間の国へ帰りたいと思っていたが、イラつく皇太子の不手際のせいであっさり死んでしまった(人は竜人に比べてとても脆い存在)。  魂に傷を負った娘は、エルフの娘に生まれ変わる。  次の身体の父親はエルフの最高位の大魔術師を退き、妻が命と引き換えに生んだ娘と森で暮らす事を選んだ男だった。 【完結したお話を現在改稿中です。改稿しだい順次お話しをUPして行きます】  

異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」

マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。 目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。 近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。 さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。 新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。 ※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。 ※R15の章には☆マークを入れてます。

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

処理中です...