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141話 過去・未来・現在

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 これまでリナルドは、満月の日に恐怖しながら過ごしていた。いつ殺されるか分からない毎日に心をすり減らし、独りぼっちで当てもなく彷徨い続けた。
 でも、今は違う。満月まで、とても幸せな日々を過ごしていた。

 ハローとナルガは、リナルドを息子にしてから、より一層優しくしてくれた。ミコを始め、村の子供達とも仲良くなって、教会の日曜学校も楽しくて。前の親と居た頃より、リナルドは幸せだった。
 そしたら不思議な事に、アルターへの恐怖が次第に薄れていた。
 ハローと過ごす内に、「彼なら守ってくれる」と信じられるようになった。満月の日が近づいても、体が震えなくなったのだ。

 大丈夫、ハローは絶対、僕を助けてくれる。満月当日にリナルドは、そんな確信を抱いていた。

「お待たせしました先代」

 夕方ごろにオクトも駆け付けてくれた。ハロー達は平原へ向かい、アルターの出現を待った。
 周囲が薄暗くなる頃、ずっとリナルドを苛ませてきた怪物が、姿を現した。

『オオオオオオオオオオっ!』

 腹の底まで響くような咆哮を上げ、アルターがハローと対峙する。ハローは落ち着いて魔剣を抜き、アルターも素顔を晒した。

「よう、俺。元気してたか?」
『もうよんどめだ、おまえとかわすことばなどもはやそんざいしない』
「ああ、まどろっこしいのは無しだ。お互い、今日でケリをつけるとしよう」

 ハローは魔剣を上段に構えた。アルターと対話するには、まず奴を落ち着かせなければならない。
 逃げ場のない平原とあって、アルターは真正面からぶつかってくる。ハローは真っ向からアルターを受け止め、力づくでアルターを押し返した。

 アルターは驚きの表情を見せた。ハローは魔剣でアルターを殴りつけ、更に蹴りを加えてアルターを追撃する。
 アルターの反撃を全部押し返し、一方的に攻勢でまくしたてる。これまで圧倒されていたアルターを、ハローはまるで寄せ付けない。

 リナルドは息を呑んだ。アルターは決して弱くなっていないし、手を抜いていない。ハローも強くなったわけではない。なのになぜ、こうまでアルターと渡り合えるのだ。

「俺は、負けないよ。いいや、負けてはいけないんだ。俺には生きなきゃいけない理由がある、自分の命と、俺と一緒に居る人達の想いを、台無しにしてはいけない。俺は、死んではいけないんだ」
『ばかが、おれのいのちにかちなどないだろう!』

「あるんだよ。もう俺は俺自身を否定しない、過去も現在も、未来も含めて、俺の全てを受け入れなければならないんだ! さぁ来いアルター! 俺の命がどれほど重いか! 俺の命にどれだけの価値があるのか! 俺の全身全霊を賭けて教えてやる!」

 ハローは果敢に、アルターへ挑んだ。
 リナルドは両手を握り、固唾をのんで祈りを捧げ……

「負けないで……お父さん……!」
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