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104話 バチバチにやり合う女二人

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 翌日以降も、オクトは積極的にハローへ攻勢を仕掛けた。
 だけどオクトの狙いに気付いたナルガが常にハローの傍に居て、思うように動けない。ハローに気付かれないよう、水面下で女の戦いが繰り広げられた。
 でもやはり、常にハローと一緒に居るナルガ相手では不利だ。しかもナルガがずっと傍に居てくれるからか、ハローは彼女にデレデレしっぱなしで、全くオクトを見ようとしない。

 手を変え品を変え、ハローへのアプローチを試みるオクト。全ては、ハローの心を得ようとするために。しかし結果は全戦全敗。ナルガに一矢報いる事すら出来ない。
 屈辱である。かつて圧倒的優勢だったナルガとの戦いで、ボロボロにやられてしまうなんて。
 どうすれば、ハローを自分へ振り向かせられるんだ。答えが出ぬまま、滞在期間の最終日が来てしまった。

「なんか悪いね、お金出してもらうなんて」
「いえ、このくらい大した額ではないですから」

 最終日の朝、オクトはハローらを連れ立って、風呂屋へ向かっていた。オクトが全額負担で、ラコ村の人々を招待したのだ。
 普段は月に一回だけしか入れないから、皆喜んでいた。ハローへの点数稼ぎならば、この程度の出費なんて安い物だ。

 ……田舎にしては珍しい、男女別の浴場なのが不満だが。ハローの裸体、一度でいいから拝みたいものだ。

 風呂は少し温いが、暖かい初夏には丁度良い。心地よさにため息を吐くと、ナルガが入ってきた。

「隣を貰うぞ、いいな」
「構いませんよ」
「随分な大盤振る舞いだが、この程度ではハローはなびかんぞ」
「何のことでしょう」
「戯言を抜かすな、貴様の思惑などとうに見抜いている」

 ナルガはぎろりとオクトを睨んだ。隠し事は出来ないと判断したか、オクトは肩を竦めた。

「とんだ女狐だが、どうも恋愛がらみではからっきしのようだな。そもそもハローと同じ屋根の下に居られないような生娘が、略奪などと片腹痛い」
「ふん……なぜ、先代はそんなにも貴女を愛しているんですか? 私が先に好きになったのに、どれだけ想いを伝えても届きやしない。なのに、何もしていない貴女に対して、あれほど熱烈に入れ込んでいる。それが納得いかないのです」
「私も知らん。顔を合わす度に殺し合ってきた女を好きになる奴など、理解できないさ」
「ならばなぜ、貴女は先代を受け入れたのですか」
「さぁ……なぜだろうな」

 ナルガはあえて、オクトには教えなかった。ハローと自分だけの秘密だから。
 悔しがるオクトを見て、ナルガの溜飲が下がる。斬られた左足の借りは、これくらいで勘弁してやるか。

「ハローはお前には渡さんよ、奴は既に私だけの男だ、貴様に譲るわけにはいかんな」
「その言葉、そっくりそのまま返します」

 バチバチに火花を散らす現勇者と元四天王。その一方、元勇者のハローは。

「なんか、空気が重いような……?」

 違和感に首をかしげていた。
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