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89話 ラコ村の儀式

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 ハロー達木こりの引率で、森に子供達が集まっている。今日はラコ村にとって、大切な儀式の日だ。ナルガら農婦達も、子供達を見守っていた。
 子供達の手には苗木が抱えられている。今日のために、子供達が育て続けた苗木だ。

「よし、到着だ」

 ハローが連れて来たのは、地拵えをした区画だ。これからここに、子供達で苗木を植えてもらう、植林活動を行うのである。

「順番に道具を渡すから、苗木を植えていってくれ。優しく、丁寧に植えるんだよ」

 子供達は両親と一緒に苗木を植え始める。全員に行き届いたのを確認してから、ハローもナルガと共に苗木を植えていった。

「この森は、昔のラコ村の人達が木を植え続けて出来た物なんだ。自分達の子孫が生活に困りませんようにって、次の世代へ繋げるために、大事に育て続けてきたんだよ」
「樹木が木材として伐採できるようになるまで、数十年かかるからな。自分達の代ではなく、子や孫の代で換金できるようにするためか」
「うん。だから植林は、ラコ村にとってとても大事な行為なんだ」
「んでもって、子供が居ない夫婦にとっても大事な儀式でもあるのさ」

 エドウィンがミネバを連れ添いやってきた。ミネバは会釈し、苗木を植え始めた。

「私達の、これから生まれる子供のためにも、苗木を繋がなければなりません。まだ見ぬ家族のために、財産を残す儀式なのです」
「まっ、貴族様と違って田舎者どもは貧乏だからな。残せる物なんて木材くらいしかないんだよ」

「酷い言いようだな。今に始まった事ではないが」
「昔からエドは口が悪いからね」
「そいつが僕の個性なのさ。ほれ、無駄口叩いてないで、とっとと植えるぞ」
「わかったよ」

 エドウィンとミネバが苗木を植える姿を、ハローは目を細めて眺めた。

「なんだよ? 気色悪い目でこっち見んな」
「ごめんごめん。ミネバ、今日はエドと、うちで食べてくるんだろ」
「はい、外出許可は貰っています」
「こっちは客なんだからもてなせよ」
「隣人付き合いにもてなすもないだろう、手伝いはしてもらうぞ」
「んだとぉ? 招いた側が言うセリフじゃないだろ」
「はいはい怒らない。皆でやれば早く済むからな」

 エドウィンもナルガと気安い仲になったものである。ハローは微笑み、子供達の植林を手伝いに向かった。
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