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1部
68話 翻弄される
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最近のハローの様子には、エドウィンも頭を抱えていた。
余計な事を言っちまった、失言だ。「お前が狙いだ」と言ってしまえば、ハローがああなるのは目に見えていただろうに。
かといって、黙っていてもハローは自分で気づくだろう。あいつはそこまで、馬鹿じゃない。
「……援護、求めてみるか?」
オクトの顔を思い浮かべたが、今彼女は遠征中で、国外に出てしまっている。それ以前に、勇者は国内最大の戦力で、動くには国王からの下知が必要だ。
たかが辺境の村のために、国王が頷くわけがない。彼女は当てにできないだろう。
「エドウィン様、失礼します」
「ミネバ、またジジイからの使いか?」
「ええ……実は教会周辺にまた、野盗が出てきていて」
「ちっ、ラコ村だけじゃなくて周辺の村落にも襲ってくるのが厄介だ。あいつが休まる暇がない。……そいつはナルガに任せるぞ」
「分かりました、後ほど、伝えに行きます。……一体、誰なのでしょうか。ここまで大規模な行動がとれる人なんて」
「僕が知りたいくらいだ。ハローは幾人もの賊を潰してきたから、恨みを買うのは分かる。でもな、これまでの奴らを振り返っても、高度な作戦が立てられるような頭を持つ奴が思い当たらないんだよ」
ただ、高度と言っても粗が目立つ作戦だ。何しろ相手は突撃するばかりで、自ら戦力を減らしていく一方なのだ。
普通ならば撤退を織り交ぜる等、戦力を温存しながら立ち回る。にも拘らず頭から特攻するのみの戦法を繰り返すなんて、賢い策とは言い難かった。
「あいつらの最終的な目標は、ハローの殺害だ。でも今のままだと、ハローを殺す前に自分達の戦力が底を尽く。作戦が稚拙でちぐはぐなんだ。そいつが余計に犯人像を曇らせちまうんだよ」
エドウィンはガリガリと頭を掻いた。
……これもウルチの策である。ハローと同様に、ウルチはエドウィンにも警戒を怠らなかった。
確かにウルチならば、配下を撤退させるなど、被害を最小限に抑える策を立てる。しかしあまりに整いすぎた作戦は、エドウィンに犯人を特定させるヒントを与えかねない。
だから、あえて粗さを交えている。「ウルチ・マサガネが使わない手」をあえて取る事で、自身の生存を匂わせないようにしていた。
「ハローを少しでも休ませてやらないと、じゃないとあいつ自身が潰れちまう」
「ですが、出来るでしょうか。ナルガ様がお傍に居るのにあの状態では」
「そこなんだよ、ナルガの声すら届かないくらい焦ってやがるんだ。キグナス島の時みたいにな」
エドウィンの脳裏に、過去の地獄が蘇る。今のハローは、キグナス島で戦っていた時と瓜二つだ。俺がやらねばと、一人で全部を背負い込んで、自分で自分を追い詰めて……そんなハローをエドウィンは、ただ見ているしか出来なかった。
「……あの時と同じで、いいわけねぇだろが」
「エドウィン様、どちらへ?」
「ハローの所だよ。周辺の護衛くらい、一日だけナルガに全部任せちまえ。ふんじばってでもあいつをベッドに寝かせてやる、嫌がったらぶん殴って、首根っこ掴んで引き摺ってやる! 普段人に頼ってるくせに、変な所で意地張るんじゃないよあの馬鹿野郎」
「お友達思いですね」
「ちがわい、全部あの馬鹿が悪いんだ」
ハローはお前が守ると決めただろうが、エドウィン・ワイズナー。もう二度とあいつを見殺しになんかするものか。
あいつは絶対、僕が助けてやるんだよ。
余計な事を言っちまった、失言だ。「お前が狙いだ」と言ってしまえば、ハローがああなるのは目に見えていただろうに。
かといって、黙っていてもハローは自分で気づくだろう。あいつはそこまで、馬鹿じゃない。
「……援護、求めてみるか?」
オクトの顔を思い浮かべたが、今彼女は遠征中で、国外に出てしまっている。それ以前に、勇者は国内最大の戦力で、動くには国王からの下知が必要だ。
たかが辺境の村のために、国王が頷くわけがない。彼女は当てにできないだろう。
「エドウィン様、失礼します」
「ミネバ、またジジイからの使いか?」
「ええ……実は教会周辺にまた、野盗が出てきていて」
「ちっ、ラコ村だけじゃなくて周辺の村落にも襲ってくるのが厄介だ。あいつが休まる暇がない。……そいつはナルガに任せるぞ」
「分かりました、後ほど、伝えに行きます。……一体、誰なのでしょうか。ここまで大規模な行動がとれる人なんて」
「僕が知りたいくらいだ。ハローは幾人もの賊を潰してきたから、恨みを買うのは分かる。でもな、これまでの奴らを振り返っても、高度な作戦が立てられるような頭を持つ奴が思い当たらないんだよ」
ただ、高度と言っても粗が目立つ作戦だ。何しろ相手は突撃するばかりで、自ら戦力を減らしていく一方なのだ。
普通ならば撤退を織り交ぜる等、戦力を温存しながら立ち回る。にも拘らず頭から特攻するのみの戦法を繰り返すなんて、賢い策とは言い難かった。
「あいつらの最終的な目標は、ハローの殺害だ。でも今のままだと、ハローを殺す前に自分達の戦力が底を尽く。作戦が稚拙でちぐはぐなんだ。そいつが余計に犯人像を曇らせちまうんだよ」
エドウィンはガリガリと頭を掻いた。
……これもウルチの策である。ハローと同様に、ウルチはエドウィンにも警戒を怠らなかった。
確かにウルチならば、配下を撤退させるなど、被害を最小限に抑える策を立てる。しかしあまりに整いすぎた作戦は、エドウィンに犯人を特定させるヒントを与えかねない。
だから、あえて粗さを交えている。「ウルチ・マサガネが使わない手」をあえて取る事で、自身の生存を匂わせないようにしていた。
「ハローを少しでも休ませてやらないと、じゃないとあいつ自身が潰れちまう」
「ですが、出来るでしょうか。ナルガ様がお傍に居るのにあの状態では」
「そこなんだよ、ナルガの声すら届かないくらい焦ってやがるんだ。キグナス島の時みたいにな」
エドウィンの脳裏に、過去の地獄が蘇る。今のハローは、キグナス島で戦っていた時と瓜二つだ。俺がやらねばと、一人で全部を背負い込んで、自分で自分を追い詰めて……そんなハローをエドウィンは、ただ見ているしか出来なかった。
「……あの時と同じで、いいわけねぇだろが」
「エドウィン様、どちらへ?」
「ハローの所だよ。周辺の護衛くらい、一日だけナルガに全部任せちまえ。ふんじばってでもあいつをベッドに寝かせてやる、嫌がったらぶん殴って、首根っこ掴んで引き摺ってやる! 普段人に頼ってるくせに、変な所で意地張るんじゃないよあの馬鹿野郎」
「お友達思いですね」
「ちがわい、全部あの馬鹿が悪いんだ」
ハローはお前が守ると決めただろうが、エドウィン・ワイズナー。もう二度とあいつを見殺しになんかするものか。
あいつは絶対、僕が助けてやるんだよ。
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