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33話 四天王の弱味

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 森の開けた場所にベリーの群生地がある。ナルガの見守りの下、ミコ達はベリーを摘んでいた。

 周囲には敵の気配はなく、静かな物だ。剣の柄に手を掛けつつ、ナルガはベリーを齧ってみた。



「む、酸っぱい。これはいいジャムになるな」

「そうだろう。酸っぱい奴ほど美味しくなるからね」



 ベリーのジャムがあれば、パンケーキが作れる。あっつあつのパンケーキに掛けたら美味しいだろう。

 早くミコ達に作ってやりたいものだ。ナルガは顔を上げ、辺りを見渡した。

 ……今一瞬、視線を感じた。獣じゃない、人の視線だ。



「収穫を止め、子供を連れて逃げろ」

「えっ?」



 母親達が子供を抱え、青ざめた。

 ナルガが剣を抜くなり、大型犬が五頭も襲ってきた。囲ってくる犬を迎え撃ち、ナルガは一瞬で切り伏せた。

 流麗な剣術である。ミコ達が思わず見とれるような体捌きで犬を討ち取り、ナルガは吠えた。



「そこに隠れている者ども! 出てくるがいい!」



 この犬は猟犬だ、効率よく人間を襲う訓練を受けている。すぐ傍で、操っている奴が居る。

 木々に隠れていた男達がナルガ達を取り囲む。こいつら、ハローが探していた人売り達か。



「腕の立つ女が居るな、隻脚の割にやるじゃないか」

「貴様らと交わす口はない。……私が注意を引く、村へ戻りハローを呼べ」



 母親達に囁き、ナルガは男達を数えた。

 全部で七人。多勢なれど、一人当たりの練度は低い。ハローに比べれば大した事はない。



「かかれ! ガキは捕らえろ、親はぶっ殺せ!」

「させると思うなクズどもめ!」



 ナルガは剣を下段から振り上げ、早速一人を殴り倒した。しかるべき剣を持っていれば、男は真っ二つになっていただろう。

 腕は鈍っているが、元魔王四天王の実力は伊達ではない。義足を用いた変則的な剣術により男達をなぎ倒し、一切寄せ付けない。



 よし、ミコ達は無事逃げおおせたな。



「なんだこいつ、ばか強えぇ!?」

「お前達が弱すぎるだけだ」



 倒れた敵を踏みつけ、ナルガは男達を睨んだ。

 残るは三人のはずだが、一人居ない。



「きゃあっ! アリスー!」

「ミコ!?」



 ミコの悲鳴に振り向くと、男がミコを抱え、剣を突き付けていた。



「動くんじゃねぇ! そしたらこのガキを殺すぜ」

「なぜ戻ってきた!」

「お、お手伝いしようと思って……」



 人質を取られ、ナルガは身動きが取れなくなる。男が剣を捨てるようジェスチャーし、やむなく指示に従った。

 直後に頭を殴られた。倒れたナルガを踏み躙り、リーダー格が唾を吐いた。



「クソ女が、好き勝手やってくれたな」

「殺すか?」

「いいや、連れて帰るぞ。どこぞの馬鹿のせいで商品がぜんっぜん入荷できてないんだ、年増でも顔立ちは中々、買い手は付くだろう」

「まぁ見てくれはいい女なのは確かだしな、悪くはねぇか」



 ミコともども拘束され、ナルガは誘拐されてしまった。

 怯えるミコに寄り添い、ナルガは気づかれないよう掌に傷を付け、血を垂らした。

 頼む、気づいてくれハロー……。
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