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15話 世界はハローを裏切るばかり
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その後、キグナス島の地獄は、早々に終わりを告げた。
本土からの援軍が総攻撃を仕掛けたのだ。ハローによってアトラス軍は瓦解しており、反撃を押し返す力は失われていた。
王国軍が大将ウルチを捕縛した事でアトラス軍は撤退。キグナス島も奪還し、キグナス島事変は終わりを迎えた。
しかし、帰還したハローを待っていたのは、国からの平手打ちだった。
毒ガスを始めとした非道の数々を咎められ、キグナス島事変最大の功労者でありながら、罪人として裁判にかけられたのだ。
勇者は国の象徴であり、国の信頼に関わる大事な役職だ。民に恐怖を与えるような、卑劣な手を使う殺人鬼を立てては、諸外国にも示しがつかない。
それまでの功績から命だけは救われたが、ハローは勇者の地位をはく奪され、聖剣を取り上げられた。勇者が卑劣な手段を使ったと知られないために、ハローは記録上戦死として扱われ、歴史の闇に葬られた。
地獄を乗り越えたハローが得たのは、顔に刻まれた咎人の烙印と、粉々に壊れた心だけ。
全てが終わった後のハローは廃人となり、立つことすらできなくなっていた。エドウィンは彼を故郷であるラコ村に連れて行き、懸命に介護した。
五年の療養を経てようやく社会生活を送れるようになったものの、ハローの壊れた心は未だ、治っていない。
「体はいくらでも治せるが、一度壊れた心は、僕でも治せないんだよ」
ふと、折れた剣が視界に入った。使い物にならないから、ハローが捨てた武器だ。
ハローの心を見ているようで、腹が立った。この剣みたいに、ハローは自分の心を、簡単に捨ててしまう。
「壊れた心なんていらないってか? ふざけんなこの野郎……それは、お前の大事な物だろ」
剣を蹴っ飛ばして、エドウィンは帰路についた。
一方のウルチは二年後の裁判にて死刑宣告を受けたが、未だ執行はされておらず、監獄に幽閉されたまま。アトラス国との摩擦を憂いているのか、国はウルチを持て余していた。
ハローを断罪するよりも、ウルチを断罪するのが先だろう。やり場のない怒りをぶつけるように、エドウィンは木を殴った。
ハローは一生分苦しんだのに、まだ地獄を彷徨えと言うのか。神様は残酷だ。
「まぁいいよ、どこまでも付き合うさ。ハローが幸せになるまでは、僕も幸せになるわけにはいかない。あいつの心が地獄から抜け出すまで、僕も一緒に、足掻いてやるさ」
本土からの援軍が総攻撃を仕掛けたのだ。ハローによってアトラス軍は瓦解しており、反撃を押し返す力は失われていた。
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しかし、帰還したハローを待っていたのは、国からの平手打ちだった。
毒ガスを始めとした非道の数々を咎められ、キグナス島事変最大の功労者でありながら、罪人として裁判にかけられたのだ。
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全てが終わった後のハローは廃人となり、立つことすらできなくなっていた。エドウィンは彼を故郷であるラコ村に連れて行き、懸命に介護した。
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「体はいくらでも治せるが、一度壊れた心は、僕でも治せないんだよ」
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ハローの心を見ているようで、腹が立った。この剣みたいに、ハローは自分の心を、簡単に捨ててしまう。
「壊れた心なんていらないってか? ふざけんなこの野郎……それは、お前の大事な物だろ」
剣を蹴っ飛ばして、エドウィンは帰路についた。
一方のウルチは二年後の裁判にて死刑宣告を受けたが、未だ執行はされておらず、監獄に幽閉されたまま。アトラス国との摩擦を憂いているのか、国はウルチを持て余していた。
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ハローは一生分苦しんだのに、まだ地獄を彷徨えと言うのか。神様は残酷だ。
「まぁいいよ、どこまでも付き合うさ。ハローが幸せになるまでは、僕も幸せになるわけにはいかない。あいつの心が地獄から抜け出すまで、僕も一緒に、足掻いてやるさ」
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