7 / 207
1部
7話 さまよえる魂
しおりを挟む
応接間にて、ハローとエドウィンは司祭から依頼内容を聞いていた。
「ここ暫く、教会に野盗の姿が見られるようになったのだ。木陰にひそんだり、周辺の土地を探ったりと、怪しい行動をしていてな」
「どう見ても偵察だな、ここを襲撃する気満々ってところか」
「左様。今日は新月、夜襲にはもってこいの日だ。そこでハローに頼みたいのだが」
「お任せください、野盗達は一人残らず始末しますので。偵察が去った方角は分かりますか」
ハローは必要な情報を集め、野盗の行動ルートを予想した。
偵察を寄越すなら、襲撃は十人以上のグループを組んでくるはず。問題ない、その程度ならば。
「司祭さんさぁ、早めに新しい冒険者を雇ってくれないかな。こいつのマネジメントする僕の身にもなってくれよ」
「ギルドには手配してあるが、中々回してこなくてな。来ても箸にも棒にも掛からぬクズばかりだ」
「冒険者も質が落ちたもんだ。ほら行くぞハロー」
「腕を引っ張るなよ、では司祭様、失礼します」
教会を後にし、ハローは伸びをした。エドウィンはハローの肩を叩き、
「無理はするなよ」
「してないさ。ナルガには少し、寂しい思いをさせてしまうな。でもやらないと、ナルガが奪われるもんな。だったら、殺さないと。全員、一人残らず、ころ、ろ……う、ぷっ……!」
ハローは膝を突き、嘔吐した。エドウィンは背中をさすり、落ち着かせた。
「薬出しとくぞ」
「いや、平気さ、平気だ。俺がやらなきゃ、殺さなきゃ、沢山の人が犠牲になるから」
ハローは笑顔でそう答えた。そこへ、バケットを持ってミネバが追いかけてくる。
「あ、あの、お二人とも」
「ん、ミネバ。どうしたんだい?」
「いえ、せっかく来ていただいたので、お土産をと思いまして……ご気分がすぐれないのですか」
「気分は最高さ! 中身は何?」
「クッキーです。村の子供達にも食べさせてあげてください」
「嬉しいね、きっと皆喜ぶよ」
ハローはバケットを取ろうとして、手を伸ばした。
瞬間、景色が暗くなる。自分の手にべっとりと血が滴り、ハローは手を下げた。
「偽善の施しありがとさん。この程度でハローへの貸しは返せないよ」
「エド、言い方」
「いいんです、私達は、ハローさんに頼りきりですから」
エドウィンが代わりにバケットを受け取り、ハローは仕事へ戻っていく。ふらつく彼の背を見て、エドウィンは口をつぐんだ。
「ハロー様は、まだ……」
「ああ、心はずっと十年前の地獄を彷徨ったままだ。……安心しろよ、僕も同行する。あいつ一人が血を被る必要はない」
「ハロー様は、抜け出せるのでしょうか」
「さぁてね。そんなの僕が聞きたいくらいさ」
あいつの背負った地獄、僕が代わりに引き受けられればいいんだがな。
「ここ暫く、教会に野盗の姿が見られるようになったのだ。木陰にひそんだり、周辺の土地を探ったりと、怪しい行動をしていてな」
「どう見ても偵察だな、ここを襲撃する気満々ってところか」
「左様。今日は新月、夜襲にはもってこいの日だ。そこでハローに頼みたいのだが」
「お任せください、野盗達は一人残らず始末しますので。偵察が去った方角は分かりますか」
ハローは必要な情報を集め、野盗の行動ルートを予想した。
偵察を寄越すなら、襲撃は十人以上のグループを組んでくるはず。問題ない、その程度ならば。
「司祭さんさぁ、早めに新しい冒険者を雇ってくれないかな。こいつのマネジメントする僕の身にもなってくれよ」
「ギルドには手配してあるが、中々回してこなくてな。来ても箸にも棒にも掛からぬクズばかりだ」
「冒険者も質が落ちたもんだ。ほら行くぞハロー」
「腕を引っ張るなよ、では司祭様、失礼します」
教会を後にし、ハローは伸びをした。エドウィンはハローの肩を叩き、
「無理はするなよ」
「してないさ。ナルガには少し、寂しい思いをさせてしまうな。でもやらないと、ナルガが奪われるもんな。だったら、殺さないと。全員、一人残らず、ころ、ろ……う、ぷっ……!」
ハローは膝を突き、嘔吐した。エドウィンは背中をさすり、落ち着かせた。
「薬出しとくぞ」
「いや、平気さ、平気だ。俺がやらなきゃ、殺さなきゃ、沢山の人が犠牲になるから」
ハローは笑顔でそう答えた。そこへ、バケットを持ってミネバが追いかけてくる。
「あ、あの、お二人とも」
「ん、ミネバ。どうしたんだい?」
「いえ、せっかく来ていただいたので、お土産をと思いまして……ご気分がすぐれないのですか」
「気分は最高さ! 中身は何?」
「クッキーです。村の子供達にも食べさせてあげてください」
「嬉しいね、きっと皆喜ぶよ」
ハローはバケットを取ろうとして、手を伸ばした。
瞬間、景色が暗くなる。自分の手にべっとりと血が滴り、ハローは手を下げた。
「偽善の施しありがとさん。この程度でハローへの貸しは返せないよ」
「エド、言い方」
「いいんです、私達は、ハローさんに頼りきりですから」
エドウィンが代わりにバケットを受け取り、ハローは仕事へ戻っていく。ふらつく彼の背を見て、エドウィンは口をつぐんだ。
「ハロー様は、まだ……」
「ああ、心はずっと十年前の地獄を彷徨ったままだ。……安心しろよ、僕も同行する。あいつ一人が血を被る必要はない」
「ハロー様は、抜け出せるのでしょうか」
「さぁてね。そんなの僕が聞きたいくらいさ」
あいつの背負った地獄、僕が代わりに引き受けられればいいんだがな。
0
お気に入りに追加
132
あなたにおすすめの小説
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!
ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。
ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。
そしていつも去り際に一言。
「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」
ティアナは思う。
別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか…
そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。
【R18】しごでき部長とわんこ部下の内緒事 。
枯枝るぅ
BL
めちゃくちゃ仕事出来るけどめちゃくちゃ厳しくて、部下達から綺麗な顔して言葉がキツいと恐れられている鬼部長、市橋 彩人(いちはし あやと)には秘密がある。
仕事が出来ないわけではないけど物凄く出来るわけでもない、至って普通な、だけど神経がやたらと図太くいつもヘラヘラしている部下、神崎 柊真(かんざき とうま)にも秘密がある。
秘密がある2人の秘密の関係のお話。
年下ワンコ(実はドS)×年上俺様(実はドM)のコミカルなエロです。
でもちょっと属性弱いかもしれない…
R18には※印つけます。
西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~
雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。
元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。
※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。
転生したらBLゲームの攻略キャラになってたんですけど! R-18短編集
朝比奈歩
BL
君は最推し!シリーズ(転生したらBLゲームの攻略キャラになってたんですけど!)のR-18短編集です。
ifシリーズは「もしもこのキャラと凛が付き合っていたら」と言う事になっております。
本編とはリンクしていない場合がありますので、ご注意ください。
※この物語はフィクションです。
騎士見習いの年下男子が私の嘘に協力してくれるんですけど
荒瀬ヤヒロ
恋愛
男性が女性に愛を告げる花祭りが近づき、浮き足立った女の子達は恋の話題で持ちきり。
好きな人もいないことをからかわれたモニカはつい「恋人ぐらいいるわよ」と言ってしまい……
「じゃあ、恋人のふりしてあげますよ」
「へ?」
何故か初対面の男の子がその嘘に付き合ってくれると言い出して?
【R18】両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が性魔法の自習をする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
「両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が初めてのエッチをする話」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/575414884/episode/3378453
の続きです。
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる