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6話 その笑みはひび割れて
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ラコ村に移住してから、ハローは木こりとして働いている。
今日の仕事は下刈だ。土壌の状態を観察しつつ、苗木に充分な日光が当たるよう雑草を払う作業である。
「今日は随分機嫌がいいなハロー」
「まぁ、ちょっといい事があったもので」
同僚に肩を叩かれ、ハローは照れ笑いを浮かべた。
ナルガが来てくれたのが嬉しくて、いつもよりハローは張り切っていた。
勇者でなくなってから彼女と接点が無くなり、一昨日には魔王軍が敗北したと聞いて、ナルガとの再会を絶望視していただけに、ハローにとっては望外の褒美である。
早く村人に彼女を紹介したいな、早く兵士達が居なくなればいいのに。
「そうだ、あいつら殺せばナルガも、安心できるよな」
ハローは虚ろに笑い、鉈を握りしめた。
「おーい、ハローの馬鹿は居るかー?」
「エド、どうしたんだ」
作業中、エドウィンがやってきた。彼は肩を竦めると、
「副業の依頼だ。親方には話を付けてあるから、教会に行くぞ」
「分かった、すぐに行くよ」
つと、ハローの目から光が消えた。
自分の助けを求めている人が居るなら、行かなければ。
ラコ村の東にはマクミード教会がある。子供達に日曜学校を開いたり、村同士の情報交換の場になったりと、この近辺の村々を繋ぐ役割を担っているのだ。
「ハロー様、エドウィン様、ご足労ありがとうございます」
教会に着くなり、栗毛のシスターが出迎えてくれた。
名はミネバ・リオンディーズ、齢二十一歳。彼女は深々と頭を下げると、二人を奥へ通した。
「司祭様がお待ちです、こちらへ」
「わざわざハローを引っ張り出して、冒険者じゃ手に負えない案件なのか?」
「実は、最近雇った冒険者が突然辞めてしまいまして……暫くはまた、ハロー様のお手を借りる事になるかと……」
「またかよ。冒険者の質も落ちたもんだな」
魔王軍との戦いが終わった直後で、国内の治安は安定しておらず、各地で集落が野盗や魔物に襲われる事件が多発している。王国軍の兵士も戦後処理に奔走しており、末端まで手が及んでいない有様だ。
マクミード教会も自衛のため冒険者を雇っているのだが、冒険者達はより多くの収入と名声を求め、事件の規模や収入の大きい都心部へと流れてしまう。今回の様に、突然契約をキャンセルしてしまうのも珍しくない。
そのため、ラコ村周辺の治安維持は元勇者のハローが一手に担っているのである。
「本当に、申し訳ありません……できればハロー様に負担をかけたくはないのですが」
「気にしないでいいよ、俺の力が必要ならいつでも声をかけてくれ。そんな難しい事じゃないさ、君達を脅かす奴らを、一人残らず皆殺しにすればいいだけだから」
ハローは優しく、しかし壊れた笑みを浮かべた。
冷たい声にミネバは青ざめ、エドウィンも顔をしかめる。その二人をよそに、ハローは笑い続けた。
狂ったように、目を細め、口元に手を当てて、嗤い続けていた。
今日の仕事は下刈だ。土壌の状態を観察しつつ、苗木に充分な日光が当たるよう雑草を払う作業である。
「今日は随分機嫌がいいなハロー」
「まぁ、ちょっといい事があったもので」
同僚に肩を叩かれ、ハローは照れ笑いを浮かべた。
ナルガが来てくれたのが嬉しくて、いつもよりハローは張り切っていた。
勇者でなくなってから彼女と接点が無くなり、一昨日には魔王軍が敗北したと聞いて、ナルガとの再会を絶望視していただけに、ハローにとっては望外の褒美である。
早く村人に彼女を紹介したいな、早く兵士達が居なくなればいいのに。
「そうだ、あいつら殺せばナルガも、安心できるよな」
ハローは虚ろに笑い、鉈を握りしめた。
「おーい、ハローの馬鹿は居るかー?」
「エド、どうしたんだ」
作業中、エドウィンがやってきた。彼は肩を竦めると、
「副業の依頼だ。親方には話を付けてあるから、教会に行くぞ」
「分かった、すぐに行くよ」
つと、ハローの目から光が消えた。
自分の助けを求めている人が居るなら、行かなければ。
ラコ村の東にはマクミード教会がある。子供達に日曜学校を開いたり、村同士の情報交換の場になったりと、この近辺の村々を繋ぐ役割を担っているのだ。
「ハロー様、エドウィン様、ご足労ありがとうございます」
教会に着くなり、栗毛のシスターが出迎えてくれた。
名はミネバ・リオンディーズ、齢二十一歳。彼女は深々と頭を下げると、二人を奥へ通した。
「司祭様がお待ちです、こちらへ」
「わざわざハローを引っ張り出して、冒険者じゃ手に負えない案件なのか?」
「実は、最近雇った冒険者が突然辞めてしまいまして……暫くはまた、ハロー様のお手を借りる事になるかと……」
「またかよ。冒険者の質も落ちたもんだな」
魔王軍との戦いが終わった直後で、国内の治安は安定しておらず、各地で集落が野盗や魔物に襲われる事件が多発している。王国軍の兵士も戦後処理に奔走しており、末端まで手が及んでいない有様だ。
マクミード教会も自衛のため冒険者を雇っているのだが、冒険者達はより多くの収入と名声を求め、事件の規模や収入の大きい都心部へと流れてしまう。今回の様に、突然契約をキャンセルしてしまうのも珍しくない。
そのため、ラコ村周辺の治安維持は元勇者のハローが一手に担っているのである。
「本当に、申し訳ありません……できればハロー様に負担をかけたくはないのですが」
「気にしないでいいよ、俺の力が必要ならいつでも声をかけてくれ。そんな難しい事じゃないさ、君達を脅かす奴らを、一人残らず皆殺しにすればいいだけだから」
ハローは優しく、しかし壊れた笑みを浮かべた。
冷たい声にミネバは青ざめ、エドウィンも顔をしかめる。その二人をよそに、ハローは笑い続けた。
狂ったように、目を細め、口元に手を当てて、嗤い続けていた。
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