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3話 雨の中の来訪客
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ハローの住むラコ村は、農業と林業で生計を立てて暮らす集落だ。
村の傍には風車が並び、小麦畑が広がっている。他にも乳牛を飼育し、数種の野菜を栽培しているようだ。
雨のため誰も外に出ておらず、ナルガは見つからずハローの家に到着した。
今になって気づいたが、敵の領地に入っていたなんて。ハローが見つけてくれなければ、本当に命がなかったかもしれない。
「体を拭いて待っててくれ、エドを呼んでくるから」
「あいつもこの村に居るのか……」
程なくして、ハローは白衣の男を連れて来た。
眼鏡をかけた理知的な青年だ。名はエドウィン・ワイズナー、十年前に勇者パーティのヒーラーだった男である。
先代勇者パーティの二人が、こんな辺境に居るとはな。
「いきなり僕を引っ張り出したと思ったら、とんでもない客を招いたようじゃないかハロー? お前、自分が何をしたか分かってるのか」
「困ってる人を助けた」
「魔王四天王のナルガを連れ込んだんだぞ。敵の幹部を匿って、国にばれたら村民もろとも粛清だ。事の重大さが分かってるのか?」
「先の事はその時考えるさ。それよりナルガを診てくれ、凄く弱ってるんだ。お前医者だろ」
勇者パーティのヒーラーだったエドウィンは、その技能を活かしてラコ村の常駐医をしている。近隣の村からも診療を請け負っており、周囲からの信頼も厚い男だ。
「んで、僕を共犯にしてナルガを守ろうってか。医者の僕なら周りを言いくるめられるもんな、よくそんな狡い事を考えつくもんだよ、お断りだ。面倒ごとは嫌いなんだ」
「頼むよ、エド」
ハローに頭を下げられ、エドウィンは大きなため息を吐いた。
ナルガを診察した彼は、こめかみに指を当てた。
「過労だな、魔王城から不眠不休で逃げ続けたんだろ。栄養ある物食って寝てればその内治る」
「ありがとう、エド!」
「貸しだからな」
エドウィンはガリガリ髪を掻き、ハローの腕を引っ張った。
「少し話すぞ、来い」
村の傍には風車が並び、小麦畑が広がっている。他にも乳牛を飼育し、数種の野菜を栽培しているようだ。
雨のため誰も外に出ておらず、ナルガは見つからずハローの家に到着した。
今になって気づいたが、敵の領地に入っていたなんて。ハローが見つけてくれなければ、本当に命がなかったかもしれない。
「体を拭いて待っててくれ、エドを呼んでくるから」
「あいつもこの村に居るのか……」
程なくして、ハローは白衣の男を連れて来た。
眼鏡をかけた理知的な青年だ。名はエドウィン・ワイズナー、十年前に勇者パーティのヒーラーだった男である。
先代勇者パーティの二人が、こんな辺境に居るとはな。
「いきなり僕を引っ張り出したと思ったら、とんでもない客を招いたようじゃないかハロー? お前、自分が何をしたか分かってるのか」
「困ってる人を助けた」
「魔王四天王のナルガを連れ込んだんだぞ。敵の幹部を匿って、国にばれたら村民もろとも粛清だ。事の重大さが分かってるのか?」
「先の事はその時考えるさ。それよりナルガを診てくれ、凄く弱ってるんだ。お前医者だろ」
勇者パーティのヒーラーだったエドウィンは、その技能を活かしてラコ村の常駐医をしている。近隣の村からも診療を請け負っており、周囲からの信頼も厚い男だ。
「んで、僕を共犯にしてナルガを守ろうってか。医者の僕なら周りを言いくるめられるもんな、よくそんな狡い事を考えつくもんだよ、お断りだ。面倒ごとは嫌いなんだ」
「頼むよ、エド」
ハローに頭を下げられ、エドウィンは大きなため息を吐いた。
ナルガを診察した彼は、こめかみに指を当てた。
「過労だな、魔王城から不眠不休で逃げ続けたんだろ。栄養ある物食って寝てればその内治る」
「ありがとう、エド!」
「貸しだからな」
エドウィンはガリガリ髪を掻き、ハローの腕を引っ張った。
「少し話すぞ、来い」
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