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28話 次なる刺客
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「ありがとーハワードちゃーん☆ これ約束のギャラよぉ、それと今日はあたしのお店に泊ってちょーだいっ! 高たんぱく低カロリーのヘルシー料理で労ってあげるわぁ☆」
店長から十万ゴールドと宿を提供され、当面の問題は解決だ。
いやぁ、渡りに船だったぜ。麗しいオネェ様が声をかけてくれたおかげで助かったよ。
「ねぇ……なんであんな裸芸披露する羽目になったの……あんた手品出来るじゃんか……」
「おいおいリサちゃん、この宿の名前見てなかったのか?」
「筋肉が躍動する宿酒場、「バルク」よぉ。あたしのお店はね、筋骨隆々のイケメンが肉体美を披露するショーが売りなのよ。手品なんかじゃお客様が満足しないじゃなぁい」
「なんちゅう宿があんのよ……というより野郎の依頼は受けない主義じゃないの? オネェだって男じゃない!」
「体はな、だが心は女だ、泣かせられねぇ。俺様へのお触りはNGだが、依頼くらいは聞いてやるさぁ」
「結果としてお金と宿を確保できたからいいではありませんか。私もハワードの肉体美を堪能できてホクホクです」
「ほんと、いい体してるわよねぇハワードちゃんってばぁ♪ それにあの勇者パーティの賢者様と同じ名前なんて、なんだか運命を感じちゃうわぁ☆」
「いや、何度も言ってるけど、俺様張本人なんだが」
「まっさかぁ! 伝説の賢者様がこんな場末の宿酒場で意気揚々と裸芸を披露するなんてとんちきな話があるわけないじゃなぁい☆」
ごもっとも。字面にするとパワーワードのオンパレードだぜ、ホーリーシットだ。
ちぇ、やっぱ普段の態度のせいで誰も俺様を英雄ハワード・ロックだと信じてくれねぇや。
「俺様もっと目立ちたいんだけどなぁ、なんでこう上手く行かないんだか」
「これも神を冒涜した報いです」
「俺様と同行している時点で神に後ろ足で砂を掛けているようなもんだと思うがね」
「むー……」
「なんにせよ、すっごく助かっちゃったわ☆ はいこれお部屋の鍵、どうぞ三人で楽しんでね♪ がるるちゃんは裏の厩舎が空いているから、自由に使って頂戴♪」
「ありがとうございます。あら?」
「どしたの?」
「いえ、鍵が一つしかありませんが」
「うふん♪ 私からのサービスよん、ハワードちゃんとたっぷり楽しんで頂戴☆ だって貴方達、ハワードちゃんの恋人なんでしょお?」
「んな!? って事は、まさか……」
「……ハワードと同室、ですか?」
Oh! こいつはまた……やっぱりトラブル最高! リサちゃんのお陰で大得だぜ!
「ありがとう、麗しいオネェ様。また何か困った事があったらいつでも俺様を頼ってください、この御恩は必ず返します」
「あんらぁ♪ やっぱりハワードちゃんてば、太っ腹ぁ☆」
「ちょちょちょちょっと待って!? このスケベ大魔王と同室とか、ライオンの檻に羊を放り込むがごとき暴挙なんですけど!? 他に部屋ないの!?」
「ごめんなさぁい、今日お宿が満室で、工面できたのそこしかないのよぉ」
「そ、そんな……」
「どうしましょう、心の準備が出来ていないのですが」
「あんたはなんでまんざらでもない顔してんだぁ!」
―ふぁぁぁ……
大騒ぎする俺達の横じゃあ、「どうでもいいや」と言わんばかりにがるるが欠伸をこいていた。
◇◇◇
オネェ様の最高に美味い鶏料理を頂いた後、用意された部屋へ。
すげぇな、場末の宿酒場に似合わない、豪華なクィーンベッドだ。意外と繁盛してんのかもしれねぇなぁこの宿。
「あうぅ……どうしよう、私今夜、食べられちゃうの……?」
「おお神よ……どうか私に、祝福を」
がっくりしているリサちゃんに、なんか期待しているアマンダたんが対照的だぜ。俺がそんな狼に見えるかよ。
「うぅ、でもこの事態招いたの私だしなぁ……」
「あのねぇ、いくら俺様でも人の弱みに付け込むような真似はしないっての」
リサちゃんの頭をぽんと撫で、ソファーに寝転ぶ。今日はここが俺の特等席だな。
「君が全額失った責任を感じているのはよく分かっている、そいつを余計にほじくるような悪辣な真似なんかするわきゃないだろう?」
「……ハワード?」
「今日はこいつをベッドにするさ、二人はそっちのでかいのを使ってくれ。今日は襲ったりしないから、安心してくれよ」
意外なセリフに呆気にとられ、二人がきょとんとしている。俺様も一応、分別くらいはあるのさ。
「ふふ、警戒した私達が愚かでしたね。ハワードは意外と思慮深い事を忘れていました」
「あんた思いっきり期待してたよね。でも……ごめん、ハワード」
「何度も謝るなって。今日ばかりは女好きのハワード返上だぜ」
こんな俺でも大人しい日があってもいい、そう、「今日」くらいはな。ふふふ……。
◇◇◇
「なぁんて信用した私が馬鹿でした!」
「妙だと思っていましたよ、やけに「今日」を強調していましたからね」
深夜0時過ぎ、つまりは翌日。二人が眠っているベッドに侵入しましたら、斧とハンマーで思いっきり殴られちゃいました☆
「別に嘘は言ってないだろうが、今日の所は大人しいハワード・ロックでいるって事は、次の日になったら元のハワード・ロックに戻っていいって事だろう? なら夜這いを仕掛けてもなんら問題ないじゃねぇか!」
「どこをどう解釈したらその結論に行きつくんだこのすっとこどっこい!」
「流石の私も裏切られては容赦できません、なので天誅!」
「ちょっとタンマ! 流石に深夜にそんな物を構えちゃ近所迷惑……ふぎゃああああっ!」
―ふわぁぁぁぁぁ……
俺様がボコられている裏では、がるるが悠々とあくびをして眠っていましたとさ。
◇◇◇
ハワードがボコボコに伸されている姿を、眺めている女が居た。
月明かりに映る女の肌は、幾つもの皮膚を継ぎ接ぎにした奇怪な物だ。手足の長さも不揃いで、胸も左右で膨らみが違う。目元も瞳は当然、瞼の形すら歪だった。
「勇者パーティの賢者、ハワード・ロック。ううん、いいわぁいいわぁ、その右腕良いわぁ。お揃いのパッチワーク、素敵だわぁ」
ざんばらにカットされた髪をかき上げ、女は歪んだ笑みを浮かべる。女の髪は黒に金、銀や赤等、様々な色や質感の毛が斑になっている。まるで、他人から奪った髪を植え付けたかのように。
同時に声まで不可思議だ。老若男女の声が混じっていて、エコーがかかっている。
「パッチワーク仲間として仲良くしましょうよぉ、きっと相性いいはずよ。賢者様の手足をもぎもぎして、是非ともこの美しい体の一部にしてあげたいわぁ」
発言の内容も、継ぎ接ぎしたように脈絡が無い。多くの意志が交じり合ったようで、発言した者の姿が浮かばなかった。
女は軽く跳躍すると、背中から蝙蝠と烏の翼を出した。サブレナを滑空し、人の気配がない夜を堪能する。
継ぎ接ぎのない美しい街だ。だからこそ、荒らしてやりたくなる。綺麗な物を見ると自分のように継ぎ接ぎしてあげたくなって、仕方ない。
「なんでも欠点がないと美しくないわよねぇ。その点この体は欠点だらけ、継ぎ接ぎしすぎてそこがまた、美しいの」
だって、自分より美しく格好いい人達からちょっとだけ体を貰って付けてきたから。
自分より美しい人を見るとその体が欲しくなる。格好いい人が居たらその人が欲しくなる。だからはさみでちょこっと切り取って、体に継ぎ接いできた。
骨も皮膚も血肉すら、美しい者は全部自分の物だ。
「折角ジャックの体も継ぎ接ぎしようと思ったのに、爆発しちゃうんだもの。でもいいわ、ハワード・ロックの体を継ぎ接ぎ出来ればいいもの。レベル999の賢者でも、ジャックが残してくれた薬があればなんとかなる。でしょう?」
二股の舌で錠剤を挟み、女は飲み下した。途端、体の奥底から力が湧いてくる。女のレベルが急上昇し、賢者に遜色ないほどへ強化された。
「ザナドゥに喧嘩を売ったのだから、勿論覚悟はできているのでしょう。ジャックに続いて今度はクィーン、ザナドゥ幹部のクィーンがお相手してあげる」
クィーンと名乗った女はクラフ座の屋根に着地すると、喉をさすった。
ついさっき、たまたま見つけた声だ。とてもいい継ぎ接ぎが出来た。この声は大事にしないと。同時に、賢者を釣る格好のエサでもある。女好きの彼ならば、彼女を決して放っておかないはずだ。
「さぁ、女を敵にしてどう戦うのかしら。ドスケベ賢者様」
店長から十万ゴールドと宿を提供され、当面の問題は解決だ。
いやぁ、渡りに船だったぜ。麗しいオネェ様が声をかけてくれたおかげで助かったよ。
「ねぇ……なんであんな裸芸披露する羽目になったの……あんた手品出来るじゃんか……」
「おいおいリサちゃん、この宿の名前見てなかったのか?」
「筋肉が躍動する宿酒場、「バルク」よぉ。あたしのお店はね、筋骨隆々のイケメンが肉体美を披露するショーが売りなのよ。手品なんかじゃお客様が満足しないじゃなぁい」
「なんちゅう宿があんのよ……というより野郎の依頼は受けない主義じゃないの? オネェだって男じゃない!」
「体はな、だが心は女だ、泣かせられねぇ。俺様へのお触りはNGだが、依頼くらいは聞いてやるさぁ」
「結果としてお金と宿を確保できたからいいではありませんか。私もハワードの肉体美を堪能できてホクホクです」
「ほんと、いい体してるわよねぇハワードちゃんってばぁ♪ それにあの勇者パーティの賢者様と同じ名前なんて、なんだか運命を感じちゃうわぁ☆」
「いや、何度も言ってるけど、俺様張本人なんだが」
「まっさかぁ! 伝説の賢者様がこんな場末の宿酒場で意気揚々と裸芸を披露するなんてとんちきな話があるわけないじゃなぁい☆」
ごもっとも。字面にするとパワーワードのオンパレードだぜ、ホーリーシットだ。
ちぇ、やっぱ普段の態度のせいで誰も俺様を英雄ハワード・ロックだと信じてくれねぇや。
「俺様もっと目立ちたいんだけどなぁ、なんでこう上手く行かないんだか」
「これも神を冒涜した報いです」
「俺様と同行している時点で神に後ろ足で砂を掛けているようなもんだと思うがね」
「むー……」
「なんにせよ、すっごく助かっちゃったわ☆ はいこれお部屋の鍵、どうぞ三人で楽しんでね♪ がるるちゃんは裏の厩舎が空いているから、自由に使って頂戴♪」
「ありがとうございます。あら?」
「どしたの?」
「いえ、鍵が一つしかありませんが」
「うふん♪ 私からのサービスよん、ハワードちゃんとたっぷり楽しんで頂戴☆ だって貴方達、ハワードちゃんの恋人なんでしょお?」
「んな!? って事は、まさか……」
「……ハワードと同室、ですか?」
Oh! こいつはまた……やっぱりトラブル最高! リサちゃんのお陰で大得だぜ!
「ありがとう、麗しいオネェ様。また何か困った事があったらいつでも俺様を頼ってください、この御恩は必ず返します」
「あんらぁ♪ やっぱりハワードちゃんてば、太っ腹ぁ☆」
「ちょちょちょちょっと待って!? このスケベ大魔王と同室とか、ライオンの檻に羊を放り込むがごとき暴挙なんですけど!? 他に部屋ないの!?」
「ごめんなさぁい、今日お宿が満室で、工面できたのそこしかないのよぉ」
「そ、そんな……」
「どうしましょう、心の準備が出来ていないのですが」
「あんたはなんでまんざらでもない顔してんだぁ!」
―ふぁぁぁ……
大騒ぎする俺達の横じゃあ、「どうでもいいや」と言わんばかりにがるるが欠伸をこいていた。
◇◇◇
オネェ様の最高に美味い鶏料理を頂いた後、用意された部屋へ。
すげぇな、場末の宿酒場に似合わない、豪華なクィーンベッドだ。意外と繁盛してんのかもしれねぇなぁこの宿。
「あうぅ……どうしよう、私今夜、食べられちゃうの……?」
「おお神よ……どうか私に、祝福を」
がっくりしているリサちゃんに、なんか期待しているアマンダたんが対照的だぜ。俺がそんな狼に見えるかよ。
「うぅ、でもこの事態招いたの私だしなぁ……」
「あのねぇ、いくら俺様でも人の弱みに付け込むような真似はしないっての」
リサちゃんの頭をぽんと撫で、ソファーに寝転ぶ。今日はここが俺の特等席だな。
「君が全額失った責任を感じているのはよく分かっている、そいつを余計にほじくるような悪辣な真似なんかするわきゃないだろう?」
「……ハワード?」
「今日はこいつをベッドにするさ、二人はそっちのでかいのを使ってくれ。今日は襲ったりしないから、安心してくれよ」
意外なセリフに呆気にとられ、二人がきょとんとしている。俺様も一応、分別くらいはあるのさ。
「ふふ、警戒した私達が愚かでしたね。ハワードは意外と思慮深い事を忘れていました」
「あんた思いっきり期待してたよね。でも……ごめん、ハワード」
「何度も謝るなって。今日ばかりは女好きのハワード返上だぜ」
こんな俺でも大人しい日があってもいい、そう、「今日」くらいはな。ふふふ……。
◇◇◇
「なぁんて信用した私が馬鹿でした!」
「妙だと思っていましたよ、やけに「今日」を強調していましたからね」
深夜0時過ぎ、つまりは翌日。二人が眠っているベッドに侵入しましたら、斧とハンマーで思いっきり殴られちゃいました☆
「別に嘘は言ってないだろうが、今日の所は大人しいハワード・ロックでいるって事は、次の日になったら元のハワード・ロックに戻っていいって事だろう? なら夜這いを仕掛けてもなんら問題ないじゃねぇか!」
「どこをどう解釈したらその結論に行きつくんだこのすっとこどっこい!」
「流石の私も裏切られては容赦できません、なので天誅!」
「ちょっとタンマ! 流石に深夜にそんな物を構えちゃ近所迷惑……ふぎゃああああっ!」
―ふわぁぁぁぁぁ……
俺様がボコられている裏では、がるるが悠々とあくびをして眠っていましたとさ。
◇◇◇
ハワードがボコボコに伸されている姿を、眺めている女が居た。
月明かりに映る女の肌は、幾つもの皮膚を継ぎ接ぎにした奇怪な物だ。手足の長さも不揃いで、胸も左右で膨らみが違う。目元も瞳は当然、瞼の形すら歪だった。
「勇者パーティの賢者、ハワード・ロック。ううん、いいわぁいいわぁ、その右腕良いわぁ。お揃いのパッチワーク、素敵だわぁ」
ざんばらにカットされた髪をかき上げ、女は歪んだ笑みを浮かべる。女の髪は黒に金、銀や赤等、様々な色や質感の毛が斑になっている。まるで、他人から奪った髪を植え付けたかのように。
同時に声まで不可思議だ。老若男女の声が混じっていて、エコーがかかっている。
「パッチワーク仲間として仲良くしましょうよぉ、きっと相性いいはずよ。賢者様の手足をもぎもぎして、是非ともこの美しい体の一部にしてあげたいわぁ」
発言の内容も、継ぎ接ぎしたように脈絡が無い。多くの意志が交じり合ったようで、発言した者の姿が浮かばなかった。
女は軽く跳躍すると、背中から蝙蝠と烏の翼を出した。サブレナを滑空し、人の気配がない夜を堪能する。
継ぎ接ぎのない美しい街だ。だからこそ、荒らしてやりたくなる。綺麗な物を見ると自分のように継ぎ接ぎしてあげたくなって、仕方ない。
「なんでも欠点がないと美しくないわよねぇ。その点この体は欠点だらけ、継ぎ接ぎしすぎてそこがまた、美しいの」
だって、自分より美しく格好いい人達からちょっとだけ体を貰って付けてきたから。
自分より美しい人を見るとその体が欲しくなる。格好いい人が居たらその人が欲しくなる。だからはさみでちょこっと切り取って、体に継ぎ接いできた。
骨も皮膚も血肉すら、美しい者は全部自分の物だ。
「折角ジャックの体も継ぎ接ぎしようと思ったのに、爆発しちゃうんだもの。でもいいわ、ハワード・ロックの体を継ぎ接ぎ出来ればいいもの。レベル999の賢者でも、ジャックが残してくれた薬があればなんとかなる。でしょう?」
二股の舌で錠剤を挟み、女は飲み下した。途端、体の奥底から力が湧いてくる。女のレベルが急上昇し、賢者に遜色ないほどへ強化された。
「ザナドゥに喧嘩を売ったのだから、勿論覚悟はできているのでしょう。ジャックに続いて今度はクィーン、ザナドゥ幹部のクィーンがお相手してあげる」
クィーンと名乗った女はクラフ座の屋根に着地すると、喉をさすった。
ついさっき、たまたま見つけた声だ。とてもいい継ぎ接ぎが出来た。この声は大事にしないと。同時に、賢者を釣る格好のエサでもある。女好きの彼ならば、彼女を決して放っておかないはずだ。
「さぁ、女を敵にしてどう戦うのかしら。ドスケベ賢者様」
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