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39話 徹頭徹尾ギャグパート

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「おかえりなさい二人ともぉ!」
「……ディック、どうだ? 治ったのか?」

 僕らが魔王城に戻るなり、四天王三人が出迎えてくれた。
 皆の前で刀を掲げると、ぱっと顔が明るくなる。三人に知らせるのは、これだけじゃない。

「ディック、俺にも見せてくれ。魔導具ハヌマーンとやらをな」
「わかった」

 リージョンにせかされ、僕はハヌマーンを身に着けた。
 ハヌマーンは魔力を込めると小さい光の球になる。持ち運びが便利だから、普段はベルトのバックルにつけているんだ。

「こいつがアンチ魔導具の力を持つ武具か。これがあればフェイスと戦えるんだな?」
「ああ。それに母さんがいる、刀に力を与えてくれたんだ」
「……ドレカー先輩だな」
「うん、母さんを呼んでくれて、他にも手をまわしてくれたんだよ」
「ハヌマーンだけじゃないのよ、私達が手に入れた魔導具は」

 シラヌイは得意げに、ドレカーから渡された杖を出した。
 ダイダラボッチの核になっていた魔導具だ。と言っても魔導具としての機能は取り除かれていて、シラヌイ用の純粋な武器に改造されている。

「魔力消費を抑えながら、威力を上げる杖にしてくれたのよ。魔導具の能力は無くなった分、適合してなくても使えるようになっててね、対フェイスの大きな力になってくれるはずよ」
「なるほどな。ドレカー先輩のお陰でパワーアップしてきたか、心強いぞ二人とも」

 リージョンは自分の事のように喜んでくれている。なんだかんだ、上司として器の大きい男だよな。

「うふふっ。それだけじゃないでしょお? ふ・た・り・と・も♡」

 メイライトがいたずらっぽく笑いながら、僕達にすり寄ってきた。

「ディックちゃんとヤッたでしょ、シラヌイちゃーん♡」
「ばっ!? まさかドレカー先輩ばらしたの!?」
「まぁ図星! どおりで急にパワーアップしたわけねぇ、私にはわかるのよぉ♪ サキュバスの魔力が上がるって事はぁ、精吸したって事でしょお♡」
「カマかけてんじゃないわよ馬鹿ァァァっ!!!」

 完全に自爆したんだけどね君。というより僕まで巻き込まないでくれ……。

「お前、とうとうシラヌイのガードをこじ開けたのか! これは快挙だぞ、あのシラヌイを開脚させるなんて百年で初めて」
「ナチュラルにセクハラすんなぁぁぁっ!!!」

 顔面にファイアボールがヒット! リージョンが撃沈した。自業自得だ阿呆……。

「中途採用なのに大胆ねぇディックちゃーん。ねぇシラヌイちゃん、どうだった? 彼って上手だったぁ?」
「何聞いてんのよあんたぁっ!? 優しすぎてこっちは頭が吹っ飛ばされたってのにぃ!」
「あらまた誤爆♡」
「にゃああああああん!?!?!?」

 シラヌイがまた爆発した。僕も僕で巻き添え食らって恥ずか死んでしまいそうだ……。

「頼む、もう黙っていてくれシラヌイ……僕まで飛び火が来ているから……」
「お前、結構手馴れていたみたいだな。セッがはっ!?」

 またナチュラルにセクハラしやがって、アッパーで黙らせてやる。それにメイライトも帰って早々セクハラ酷いぞ。

「うーん、こんなに仲良くなっちゃって、私嬉しいわぁ。それじゃあお姉さんからちょーっと忠告しちゃおうかしらぁ」
「忠告?」
「いい? シラヌイちゃんくらいで初体験のサキュバスはきちんとしないと……一発よ♡」

 瞬間、僕とシラヌイは凍り付いた。

「いや、それは……もががっ」
「(黙ってソユーズ)私の旦那四人から聞いたものぉ、間違いない情報よぉ」
『……一発?』
「そ、一発♡」
『……一発……!?』

 冷や汗が止まらなくなってくる。サキュバスってそんな種族だったのか?

「……知ってた?」
「……初耳」
「……大変だ……大変だ!」

 僕とシラヌイは一直線に魔王の所へ走った。色々確認しておかなければならない事が山ほどある!

「あらあらまぁまぁ。あの慌てようじゃ、初夜の様子がよく分かるわぁ。うふ♡」
「……お前、性格悪いな……」

 後ろでメイライトとソユーズが何か言っていたけど、聞き取れなかった。
 という事で魔王の執務室へ突撃。流石の魔王も驚いたのか、びっくりして椅子から飛びあがった。

『どったの二人とも? 出張帰りの報告にしては急ぎすぎじゃない? ドレカー君から連絡は受けていたけど』
「それどころじゃないんだ、教えて欲しい事がある!」
「魔王様! 魔王軍の育児制度について詳しく教えてください!」
『へ?』

 魔王はきょとんとした。

  ◇◇◇
<シラヌイ視点>

 私はディックと一緒に魔王様から渡された書類に目を通していた。
 付きあった直後でアレとか冗談じゃないけど、過ぎた事はもう仕方がない。来るべき未来に向けて知識を蓄えなくちゃ。

「育休は最大一年まで取れて、その間の給料は四割引きになるのか……四天王が抜けるわけにはいかないから、僕がとるべきかな」
「あんただけに全部負担させるわきゃないでしょうが。半年ずつ時期をずらして取れるみたいだし、互いに時期を見て取ったほうが負担がばらけていいでしょうに」
「わかった。ん? 託児所もあるのか」
「いつ頃から利用できるのか調べとかないと。あっ、祝い金もちゃんと出るのねぇ……」

 随分と育児制度が整ってるのね。社内結婚も多いみたいだし、社員が辞めないようきっちりしてるんだ。
 ディックはディックでいつのまにか赤ちゃん雑誌調達してるし。なんか他の兵士から借りてきたとか。事情は上手く伏せたらしいけど、行動で大分バレバレな気がするわね。
 ……にしても、迂闊だったわ。異種族だから大丈夫と思ったんだけど、サキュバスってあんな体質だったなんて……。

「シラヌイ、先に言っておく。僕は必ず責任を取る。フェイスも僕一人でどうにかするから、君は当面後ろに居てくれ」
「何言ってんの。なんでも一人で抱え込んじゃだめだって」
「もう君だけの体じゃないだろう」

 ディックにしては珍しく、強い口調だった。
 私の肩を掴んで、恐い顔でにらんでくる。いつものディックと違うから、ちょっと怖い。

「いいかい、君にはもう新しい命が宿っているんだ。それをもっと自覚してくれ。僕には命を賭してでも守らなくてはならない人が一人増えた、だから君は下手な無茶は絶対しちゃいけない」
「……それでも、守られてばかりは性に合わないのよ」

 ディックの手を握り返して、私は言ってやった。

「あんたがそう言うなら、あんただって自分を大事にしなさいよ。命なんか賭けんな、残された人の辛さは、あんたが一番分かってんじゃないの?」

 ディックの言葉が詰まった。母親を失ったあんたに、分からないなんて言わせないんだから。

「ちゃんと二人で面倒見るの。あんたが居なくなるなんて、考えたくもない。第一、こういうのは一緒に考えるのが楽しいんじゃないのよ」
「……そうだね。ごめん、ちょっと独りよがりだった」
「お互い落ち着きましょう。多分嬉しすぎてはしゃいでるだけだと思うし……」
「うん、そうだね……」

 気恥ずかしさで目を合わせられない。どうしよ、なんかいいムードなんだけど……。

「……失礼するぞ」

 こんな時にソユーズが入ってきちゃった。何なのよもう、空気読みなさいよ。

「……二人とも、メイライトの言葉、本気で信じているのか?」
『え?』
「何もしなければ、人間と淫魔の間に子供はできないぞ。作りたくば着床薬を飲んだうえで致さねばならぬ……シラヌイがその……想像しているような事はまずありえないのだが……」
『はい?』

 どゆこと、それ?

「ようはお前ら……メイライトにからかわれただけだぞ? そう言いに来ただけなのだが……」
『…………』

 自分達の行動を振り返り、私達は爆発した。
 そんでもって、互いに武器を持つ。狙うはメイライトよ。
 メイライトのオフィスに突撃するけど、もぬけの殻だ。って事でリージョンの所に行くとしましょうか!

「え、なんだお前ら!? なんでフル武装で来てんだ!?」
「メイライトのバカはどこだぁ!」
「あの堕天使の首を寄越せぇ!」
「メイライトならもうとっくに定時で帰ったぞ?」
『こんちくしょうがぁ!』

 次出勤してきたとき覚えていなさいメイライトぉ!
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