9 / 133
9 マッチョさん、依頼をこなす
しおりを挟む
魔物退治に必要なものを改めて街で揃えた。
包帯、ナイフ、水、ひも、鎮痛剤。棒は止めておいた。日があるうちに戦って、日が暮れる前に戻ろう。
食堂で肉や豆類を食べて、物足りなければゆで卵で補給した。糖質はできるだけ果実で。サプリメントが使えない世界では、ビタミン不足が気になる。
そういえば、魔物は畑や果実を荒らしはするが、穀物や果物を食べないのだそうだ。肉だけで栄養補給をしているというのは、なんだか不思議な気もする。肉食動物などは自分でビタミンを生成できたような気がする。そういうものなのだと思うしかない。
そしてついに私の装備ができた。
皮の鎧、皮の兜、革靴、そして例の大斧と専用のサヤだ。タベルナ村でもらった毛皮のマントも羽織ってみる。うん、なかなかいいんじゃないのか。戦う男の恰好だ。
大斧のサヤというよりも、これは革製のバックパックのように見える。肩に斜め掛けをすると大斧の重さでズレるため、完全に背負う形にしたそうだ。
実際に背負ってみる。子どもか軽めの女性を一人背負っている感覚だ。
「いやいやいや、いい勉強になりましたよ。こういうサヤじゃなければ持ち運べませんもんね。」
そもそもこういうものは三日で作れるものなのか?親方も丁稚さんもずいぶんとくたびれ果ててる。
「親方ぁ、やっぱり三日じゃムリって言えば良かったじゃないですかぁ・・・」
「バカヤロー。間に合ったじゃねぇか!」
「さっきまで仕上げしてたじゃないですかぁ・・・」
「ああいうのは最終調整って言うんだよ。オメーも一人前の鍛冶屋になりたかったら憶えとけ。」
「ふぇーい・・・」
「なんだかムリさせたみたいで。」
「いえいえ、こちらが切った期限なので。」
正直なところ助かる。早く魔物退治をしないと、タンパク質の補給が追い付かない。
「で、こちらが普段着です。旦那が着ていたような服に合わせました。」
タンクトップに短パン。街に入る前に怪しまれて止められたやつ。
「なんでも宗教的な服だそうなので、形だけでも整えました。色は似たようなもので仕立て上げましたが、なにかマズいところがありますかね?この色を使っちゃいけないとか。」
完全に好意だ。表情に出してはいけない。
「珍しい形だったはずなのに、ありがとうございます。最高です!」
「そうですか。いやー、良かったなぁ。仕立て屋にもムリさせてしまったんですよ。」
こうして私は、なぜか二着目のトレーニングウエアのセットを手に入れた。
宿に戻って装備を確認する。ギルドへ行って依頼を見つける。
近郊で見つかったオークを退治してほしいという依頼を受けることにした。
「マッチョさん、頑張ってくださいね。」
「では初依頼、行ってきます。」
緊張している。私はこれから命のやり取りをしに行くのだ。
城門を出て街から移動し、かなり経った。
地図を確認する。
太陽の方向と街の位置からすると、たしかにこの辺だが。
「ふぅー・・・」
一息吐いて、大斧を取り出す。
覚悟は決まった。
いた。オークだ。
「うおおおおおお!」
声を出しながら近づいてくる私を見て、オークは一目散に逃げていった。
これで依頼完了か。
ぜんぜん働いた気がしない。
包帯、ナイフ、水、ひも、鎮痛剤。棒は止めておいた。日があるうちに戦って、日が暮れる前に戻ろう。
食堂で肉や豆類を食べて、物足りなければゆで卵で補給した。糖質はできるだけ果実で。サプリメントが使えない世界では、ビタミン不足が気になる。
そういえば、魔物は畑や果実を荒らしはするが、穀物や果物を食べないのだそうだ。肉だけで栄養補給をしているというのは、なんだか不思議な気もする。肉食動物などは自分でビタミンを生成できたような気がする。そういうものなのだと思うしかない。
そしてついに私の装備ができた。
皮の鎧、皮の兜、革靴、そして例の大斧と専用のサヤだ。タベルナ村でもらった毛皮のマントも羽織ってみる。うん、なかなかいいんじゃないのか。戦う男の恰好だ。
大斧のサヤというよりも、これは革製のバックパックのように見える。肩に斜め掛けをすると大斧の重さでズレるため、完全に背負う形にしたそうだ。
実際に背負ってみる。子どもか軽めの女性を一人背負っている感覚だ。
「いやいやいや、いい勉強になりましたよ。こういうサヤじゃなければ持ち運べませんもんね。」
そもそもこういうものは三日で作れるものなのか?親方も丁稚さんもずいぶんとくたびれ果ててる。
「親方ぁ、やっぱり三日じゃムリって言えば良かったじゃないですかぁ・・・」
「バカヤロー。間に合ったじゃねぇか!」
「さっきまで仕上げしてたじゃないですかぁ・・・」
「ああいうのは最終調整って言うんだよ。オメーも一人前の鍛冶屋になりたかったら憶えとけ。」
「ふぇーい・・・」
「なんだかムリさせたみたいで。」
「いえいえ、こちらが切った期限なので。」
正直なところ助かる。早く魔物退治をしないと、タンパク質の補給が追い付かない。
「で、こちらが普段着です。旦那が着ていたような服に合わせました。」
タンクトップに短パン。街に入る前に怪しまれて止められたやつ。
「なんでも宗教的な服だそうなので、形だけでも整えました。色は似たようなもので仕立て上げましたが、なにかマズいところがありますかね?この色を使っちゃいけないとか。」
完全に好意だ。表情に出してはいけない。
「珍しい形だったはずなのに、ありがとうございます。最高です!」
「そうですか。いやー、良かったなぁ。仕立て屋にもムリさせてしまったんですよ。」
こうして私は、なぜか二着目のトレーニングウエアのセットを手に入れた。
宿に戻って装備を確認する。ギルドへ行って依頼を見つける。
近郊で見つかったオークを退治してほしいという依頼を受けることにした。
「マッチョさん、頑張ってくださいね。」
「では初依頼、行ってきます。」
緊張している。私はこれから命のやり取りをしに行くのだ。
城門を出て街から移動し、かなり経った。
地図を確認する。
太陽の方向と街の位置からすると、たしかにこの辺だが。
「ふぅー・・・」
一息吐いて、大斧を取り出す。
覚悟は決まった。
いた。オークだ。
「うおおおおおお!」
声を出しながら近づいてくる私を見て、オークは一目散に逃げていった。
これで依頼完了か。
ぜんぜん働いた気がしない。
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
すべてを奪われた少女は隣国にて返り咲く
狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
サーラには秘密がある。
絶対に口にはできない秘密と、過去が。
ある日、サーラの住む町でちょっとした事件が起こる。
両親が営むパン屋の看板娘として店に立っていたサーラの元にやってきた男、ウォレスはその事件について調べているようだった。
事件を通して知り合いになったウォレスは、その後も頻繁にパン屋を訪れるようになり、サーラの秘密があることに気づいて暴こうとしてきてーー
これは、つらい過去を持った少女が、一人の男性と出会い、過去と、本来得るはずだった立場を取り戻して幸せをつかむまでのお話です。
おっす、わしロマ爺。ぴっちぴちの新米教皇~もう辞めさせとくれっ!?~
月白ヤトヒコ
ファンタジー
教皇ロマンシス。歴代教皇の中でも八十九歳という最高齢で就任。
前任の教皇が急逝後、教皇選定の儀にて有力候補二名が不慮の死を遂げ、混乱に陥った教会で年功序列の精神に従い、選出された教皇。
元からの候補ではなく、支持者もおらず、穏健派であることと健康であることから選ばれた。故に、就任直後はぽっと出教皇や漁夫の利教皇と揶揄されることもあった。
しかし、教皇就任後に教会内でも声を上げることなく、密やかにその資格を有していた聖者や聖女を見抜き、要職へと抜擢。
教皇ロマンシスの時代は歴代の教皇のどの時代よりも数多くの聖者、聖女の聖人が在籍し、世の安寧に尽力したと言われ、豊作の時代とされている。
また、教皇ロマンシスの口癖は「わしよりも教皇の座に相応しいものがおる」と、非常に謙虚な人柄であった。口の悪い子供に「徘徊老人」などと言われても、「よいよい、元気な子じゃのぅ」と笑って済ませるなど、穏やかな好々爺であったとも言われている。
その実態は……「わしゃ、さっさと隠居して子供達と戯れたいんじゃ~っ!?」という、ロマ爺の日常。
短編『わし、八十九歳。ぴっちぴちの新米教皇。もう辞めたい……』を連載してみました。不定期更新。
みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜
ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。
年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。
そんな彼女の癒しは3匹のペット達。
シベリアンハスキーのコロ。
カナリアのカナ。
キバラガメのキィ。
犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。
ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。
挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。
アイラもペット達も焼け死んでしまう。
それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。
何故かペット達がチートな力を持って…。
アイラは只の幼女になって…。
そんな彼女達のほのぼの異世界生活。
テイマー物 第3弾。
カクヨムでも公開中。
スキルを極めろ!
アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作
何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める!
神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。
不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。
異世界でジンとして生きていく。
追放された宮廷錬金術師、彼女が抜けた穴は誰にも埋められない~今更戻ってくれと言われても、隣国の王子様と婚約決まってたのでもう遅い~
まいめろ
ファンタジー
錬金術師のウィンリー・トレートは宮廷錬金術師として仕えていたが、王子の婚約者が錬金術師として大成したので、必要ないとして解雇されてしまった。孤児出身であるウィンリーとしては悲しい結末である。
しかし、隣国の王太子殿下によりウィンリーは救済されることになる。以前からウィンリーの実力を知っていた
王太子殿下の計らいで隣国へと招かれ、彼女はその能力を存分に振るうのだった。
そして、その成果はやがて王太子殿下との婚約話にまで発展することに。
さて、ウィンリーを解雇した王国はどうなったかというと……彼女の抜けた穴はとても補填出来ていなかった。
だからといって、戻って来てくれと言われてももう遅い……覆水盆にかえらず。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
異世界でスローライフを満喫する為に
美鈴
ファンタジー
ホットランキング一位本当にありがとうございます!
【※毎日18時更新中】
タイトル通り異世界に行った主人公が異世界でスローライフを満喫…。出来たらいいなというお話です!
※カクヨム様にも投稿しております
※イラストはAIアートイラストを使用
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる